お母様は帰還します
「お母様……! お帰りなさい……!」
「ん、ただいまエレナちゃん。お父様も、今戻りました」
村の入り口が騒がしくなったので来てみると、お母様と青年団の方々が帰ってきていました。お母様は馬に乗りながら涼しい顔で、青年団の方々は疲れ切った表情で走りながらの帰還です。
「おかえり。ところでレーナよ、私の記憶では青年団の方々も馬に乗っていたと思うのだが……」
「そうなのですけど、銃声に怯えて馬が散り散りに逃げてしまいまして。この子だけが私の言うことを聞いてくれたので乗ってきたのですよ。
よしよし、いい子ですね~」
そう言いながら馬の首を撫でるお母様。すると驚いたことに、馬が頭を垂れながら跪いています。
……お母様、そのお馬さんは銃声よりもお母様に怯えているのでは……?
お父様もその事実に気付いたのか、苦笑しながらお母様と馬を眺めておられます。
「ま、まあみんなが無事で何よりだ。レーナも青年団の方々も、聞きたいことはあるがまずはゆっくり休んでくれ。
メッセ君といったかな、家を貸してもらうことになるだろうが許してくれるか?」
「もちろん、ご自由に使ってください! お風呂も使っていただいて結構ですので!」
お父様の仰る通り、みんなが無事で何よりです。
あとは、事後処理だけですね。
「それで、襲撃者の身元は分からなかったと?」
「ええ。恐らくザルバ大臣の私兵及び、帝国兵の合同部隊だと感じましたが確証はありませんわ。何か証拠となりそうなものを持ち帰れたらよかったのですけど、縛っておいた兵だけではなく殺した兵まで自爆して四散しておりましたの」
「証拠は残さんか……レーナたちがあれほど頑張ってくれたのだから、何とかその分ぐらいは利を取りたかったが、それでは難しそうだな……すまない」
日が明けてから王宮へ戻り、一日が経ちました。調印式には両国の代理が出席するという異様な状況でしたが、何とか無事に終わって今は襲撃者の身元を探りつつ帝国へ圧力をかけている最中です。
しかし、それも上手くいっていないのが現状です。
「とりあえず大臣は帝国法で裁かれることが決定したが、身の危険を感じてか逃亡したらしい。共和国か小国連合か、また面倒なところに逃げ込まれていないとよいが……エレナのところでも情報は入っていないか?」
「いえ、私の方にも情報は……ですが、共和国や小国連合ならじきに分かると思います。
私のシャルロット商会やアンネのシャルル商会はかの国にも支店を置いており、国内の物品や金銭の動きに目を光らせております。人物の動向は隠せても、モノの動きまでは隠せませんので」
それに、利害関係でなら他の商会も動いてくれるはずです。今の彼らに、シャルル商会とシャルロット商会を敵に回すような真似はしないでしょう。
せっかく、お父様がここまで手を回してお母様が追い詰めたのです。私も全力を尽くして追い込まなければなりません。
「そうか、それは心強いな。何かわかったらすぐに知らせてくれるか?」
「ええ、すぐに」




