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その頃、帝国では

昨日、シュレディンガーの猫さんからまた感想を頂きました! Thank you for impression!


そこで言われて初めて気付いたのですが、『天才王女』がジャンル別四半期ランキング一位になっていたようです。おめでたいことですね!

皆さんの応援により、エレナたちの物語がこのような評価を頂いたことは筆者として本当に嬉しい限りです。ありがとうございます!


ではでは、これからもよろしくお願いします!

「———こんなバカなことがあっていいのか!」



 屋敷の中に、ザルバ大臣の怒号が響きます。


 甲高い声で響く耳障りな癇癪に、顔をうつむかせたままドラン———帝国軍の少将は鍛え抜かれた体躯を精一杯縮こませて矛先から逃れようとします。



「あれだけ後押ししてやったというのに、なぜ小国連合は裏切ったのだ! しかも逃げ出した小娘一人捕まえられず、王国へ帰すとは……貴様ら帝国軍はどこまで無能なのだ! ええ⁉」



 完璧に敷かれた布陣でした。小国連合には最新鋭の装備や優秀な人員を提供し、大臣自身も少なくない資金を提供しています。エレナが逃げ出した時のために、軍を街中に配置して網も張っていました。


 しかし当初の目的である小国連合の王国侵攻は頓挫し、王国と今は協定の締結に動いているという情報も入っています。もともと危ない橋を渡るような計画だったため、王国からはもちろん、帝国の中からも大臣に対して説明を求める抗議文が山のように届いているのです。



「劣等人種を要職に置くような小娘の分際で、儂の計画を台無しにしおって……!」



 ザルバ大臣の怒りは冷めません。格下と侮っていた少女に手玉に取られ、逆に追い詰められているのですから。こうして周りに当たり散らしてごまかしていますが、内心では自身の進退について冷や汗を流しているのです。


 そんな時、部屋に大臣の秘書が飛び込んできました。


「失礼いたします! 大臣に急ぎお伝えしたいことが!」


「何事だ! 儂は今忙しいのだ!」


 

 苛立ちを込めて秘書を睨みつけますが、身体を震わせながらも必死に書類を抱える姿を見てやっと怒りを納めます。



「で、何なのだ。よもや下らんことではないだろうな?」


「実は……エレナ王女が国境近くで療養しているとの情報がありまして。近々、帝国側の温泉街へお忍びで療養するとの連絡も」


「なんだと! それは本当か! おいドラン、地図を持ってこい!」



 慌ただしくテーブルの上に地図が広げられます。


 秘書が地図に印をつけていき、大臣とドランが覗き込んだところで秘書が説明します。



「王女が療養しているのは、ここの王家の別荘の二階だそうです。ここからこの街道を通って帝国に来訪し、温泉街に立ち寄ると諜報部がつかみました」


「護衛の人数は?」


「屋敷には侍女が二十人ほど、親衛隊が十五人ほど確認されています。そのうちの半数ほどが王女について回る人員かと」


「相手の武装は確認できたか?」


「はい、屋敷に潜入した密偵からはほとんど武装の類は確認できなかったとのことです」


「つまり、一個小隊もあれば簡単に拉致できる、ということか……共和国との密約の件、今からでも進められるか?」


「ええ、抜かりなく。向こうは王女の身柄とウチの新兵器の情報で、大臣を役職付きで迎えると言っております」



 逆境の中で降ってわいた、大臣が助かりうる道。このままでは王女監禁の罪で処刑か、よくて無期懲役でしょう。ここでの判断が、彼の人生を左右するといっても過言ではありません。



「———よし、ここの街道に網を張りつつ、残りの人員で屋敷を出た王女を襲撃する。ドラン、今度こそしくじるなよ? 次にお前が失敗すれば、儂はなんとしてでもお前の娘と妻を殺してやる」


「約束が……! いえ、了解いたしました。万事うまくいくように取り計らっておきます」



 声を荒げようとするドランを、大臣が冷ややかに睨みつけます。今もドランの妻と娘は幽閉され、大臣の命令一つでどんな目に合うか分かったものではありません。



(エレナ王女殿下……貴女に恨みはないが、どうか私の家族を守るため犠牲になってくれ……!)



 それぞれが別々の思惑で動く中、こうして大臣の反撃が始まろうとしていました。




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