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帝国紳士の思惑

道後温泉より更新です!


広いお風呂っていいですなあ……

「……ふむ、大体こんなところか」



 私はスティアー。帝国でたった一人の貴族であり、帝国内に領地を持つ地主である。


 長かった夜会もやっと終わり、今は迎賓館の近くの屋敷でくつろいでいるところだ。目の前では側付きのアリナが紅茶をそっと置き、私の対面に座った。


 おお、今日は王国産の紅茶ではないか。私が疲れていることをめざとく感じ取り、香りと風味に長けた紅茶を淹れるとはさすがだな。


「全く、どいつもこいつもメタナリア人を憎みおって。そんなに憎みたいのなら、自身の無知や怠慢を憎めば良いものを」


「そう思える人間ならば、最初から誰かを憎んだりしないのでは? あ、私も頂きますね」



 私が卓上のクッキーに手を伸ばすと同時に、アリナもさっと手を伸ばす。彼女が選ぶのは苺を練り込んだクッキー。彼女の甘い物好きは昔から知っていたが、最近本当に遠慮がなくなっていないか?


 だが、ここは寛大な心で許そう。断じて、彼女が甘いものを食べている時の微笑みを見たいからではない。



「それで、よろしかったのですか? あの場において王女殿下を支持するということが、どれほど危険なことか判らないスティアー様ではないでしょう?」



 アリナの言葉に、私は目を閉じて考える。確かにあの場で彼女を支持するということは、裏を返せば王国と心中するということだからだ。

 しかも私の場合、領地は帝国の中にあり領民を預かるのだから、何かあれば真っ先に狙われる恐れがある。


 だが———



「危険、か。だがな、私はリターンの方が大きいと思うぞ?」


「その心は? あ、もう一つ頂きますね」


「……まあいい。あのな、私はかの王女を間近で見て、またその言葉を聞いて確信したのだ。エレナ王女はいずれ、大陸中に名を馳せるような為政者になると。

 彼女の政策は基本的に民のためを思って行われるものがほとんどだ。学校の設立、街道の整備、戦後処理など、見事としか言いようがない。特に学校の設立、これに関しては為政者にはデメリットしかないのだ」


「民が賢くなれば、王は損をすると……?」


「ああ。民が無知であればどのような政治をしても、言葉巧みに騙せるというものだ。だが民が考える頭と知識を持てば、生半可な政治をすれば不満がすぐに出てくる。特に血統に頼った王政においては、王家の存亡すら危うくする可能性すらある。

 だが、彼女は身銭を切ってまで学校を設立しようとしている。おそらく国庫にはほとんど金など残っていないのだろう。商会まで始めて運用資金を稼ぐとは尊敬しかないな」



 まあ、その商会すらも成功させるのだからかの王女の才覚は恐ろしいものがあるが。


 特にあのサプリメントとやら、あんなものを17歳の少女が考え出したなど誰が信じられるだろう。これまで多くの研究者が壊血病の原因を生涯をかけて見つけられなかったにも関わらず、専門家でもない少女が見つけるとは世界は広いということか。



「本当に、エレナ王女とは話してみたいものだ。きっと有意義な時間になるに違いない」


「つまり、スティアー様は美人王女に一目惚れをなさったということですね。一人の女として、少し妬けてしまいます」


「……今の話のどこをどう聞き間違えればその理解が出てくるんだ? アリナ、キミは私の部下の中でも特に聡明な女性だと認識しているのだが……」


「そんなこともわからないから、未だに独身なんです。あ、私は所用がありますのでこれで」



 

 その晩、屋敷の一室に『余計なお世話だ!』というスティアー卿の声が響いたと使用人たちの間で話題になったとか……




 







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