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天才王女は静かに怒ります

前話の誤字報告なんですけど、人名に対してなさった方がいらっしゃるのですが何か意図があっての事なのですかね…?


『ポーラ』と『ポール』にさしたる差はないように感じますが、何かあるのでしたらご一報願います! というかお助け下さい!

調べはしたんですがよく分からなかったので…

「あら、『黒犬』とは誰のことでしょう? よもや、私の秘書をそのように例えたわけではありませんよね?」


 

 先ほどまでの笑みを『陽だまり』に例えるなら、今の彼女の笑みは『氷柱』でしょう。笑みは全く変わっていないのに、纏う雰囲気一つでそこまで与える印象を変えてくるエレナに周りが固まります。

 

 しかし、ザルバ大臣は全く気にした様子もなく言葉を続けます。



「いえ、紛れもなくそこの秘書を指して言ったのです。いや、『秘書』とは人間に対する形容。そのような表現は誤りでしたな」



 いくらなんでも、王女殿下に対してそれは無礼に当たるでしょう。言わんとすることはわかりますが、それを公の場で、しかもそのようにはっきりと言い切るのはあまりに失礼すぎるというものです。


 そんな皆の心配をよそに、ザルバ大臣は大げさな身振りを交えながら話し続けます。



「メタナリアの犬など、良くて愛玩動物が関の山でしょう。それを人間扱いするばかりか、こうして要人の集まる場に連れてくるなど正気を疑いますな。皆様、そうは思われませぬか?」



 ザルバ大臣が辺りを見回しながら叫ぶと、広間にいた何人かは鷹揚に頷きました。その顔ぶれは過激なメタナリア人排斥論者たちばかりで、表立ってメタナリア人への迫害を行っていない者や穏健派の人間は顔をしかめていますが。

 件の帝国紳士を始めとする擁護派はザルバから視線をそっとはずし、手にしていたグラスにそっと口をつけてお茶を濁します。ここで大臣に睨まれれば、彼らの領地内でメタナリア人たちを密かに匿っていることや、メタナリア人を国外へと逃がしていることが嗅ぎ付けられるからでしょう。心情的には王女殿下に味方したいところですが

、あの ザルバ大臣(ブタ) の嗅覚を警戒したといったところでしょうか。


 

「犬、ですか……そんなことを言っていては、あと50年もしないうちに帝国は滅びるでしょうね」



 エレナの言葉に、大広間にいた全ての人が凍りつきます。あれほど饒舌に騒いでいたザルバ大臣でさえ、口を閉ざして王女殿下を睨みつけます。


 会場中の視線が王女殿下に集まる中、彼女はまったく気負う様子もなく口を開きました。



「特定の民族や人種に対して過度な弾圧を行うことによって、国内の安定を図る。なるほど、確かに一時は効果があるでしょう。

 ですが、そんな政策や思想が長続きした例はありません」


「何を世迷言を。この帝国が、あと50年で滅ぶわけがないでしょう。むしろ王女殿下の王国の方が———」


「あら、フィッツ帝国議長殿。私の王国が、どうしたのです?」



 顔を赤くしながら割り込んだフィッツ帝国議長に、エレナはにこやかな微笑みを向けます。


 しかし、その目は全く笑っていません。むしろ絶対零度の瞳で射竦められた議長は真っ青になりながら黙り込んでしまいます。



「失業率や出生率、経済成長率においても王国は帝国よりも良い数字を叩き出していますが? 一体、どのような指標で『王国の方が』などとおっしゃったのですか?」


「い、いや……すまない、忘れてほしい」



 すごすごと引き下がる議長からさっと視線を外し、エレナは再びザルバ大臣の方を向きます。


 これだけの耳目を集めながらまったく気後れせず、むしろ淡々と言葉を紡ぐエレナに会場が呑まれていきます。たった17歳の少女の、その小さな身から放たれるえも言われぬ威圧感に近くに立っていた大の男までもが気圧されている状況は、まさに『異様』と表現する他ありません。



「年齢や人種、国籍に何の価値がありましょう。そんなものはただの飾りでしかなく、その人物を評価する際には不要なものです。

 私は、メタナリア人だからといって蔑むことはいたしません。真に蔑まれるべきは、地位や血統に胡座をかいて慢心し、身の程をわきまえず、無知で何の役にも立たぬまま日々を漫然と過ごしている者でしょう」


「———ザルバ大臣、先の言葉は訂正なさるべきではないでしょうか?」



 エレナの言葉を引き継ぐように、会場の隅から声が上がりました。普段ならザルバ大臣は怒り狂いながら声の主を探すでしょうが、今の彼は脂汗をかきながらうつむくだけです。原因は会場に響いた抑揚の深いバリトン———帝国で数少ない『貴族』のスティアー卿の発言だったからです。


 帝国の中では皇子たち以外に領地を持つのは彼だけであり、代々の王や重職に就く者たちでさえ蔑ろにはできない存在、それがスティアー卿なのです。


 この場において最も発言力が強いと目される人物が、王国の王女を支持したのです。場の空気は一気にエレナに傾き、拍手でもって彼女の言葉に賛同の意を示す者まで現れ始めました。



「エレナ王女殿下、先ほどのお言葉は私も領地を持つ身として感銘を受けました。機会がございましたら、ぜひともお話ししたいですね。あ、無論そこの彼ともお話ししたいですが」


「若輩の私にそのようなお言葉、ありがとうございます。スティアー卿とのお話、私も楽しみにしておりますわ」



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