幕間:天才王女は取り乱します。
「あ、アンネが婚約⁉ 誰となの⁉」
仕事を終え、ケーネとフェリナ、そしてマリルと家族水入らずの時間を楽しんでいた私に、ミリダから衝撃の事実が告げられました。
思わず張った声にマリルがぐずりだし、ケーネが慌てて抱きかかえてあやし始めます。
「まったく、気持ちは分かるが寝てるマリルの隣で大声はマズかったな。ほーら、よしよし……」
「ご、ごめんなさい……それでミリダ、アンネが婚約って本当なの?」
「ええ、事実のようです。先ほどやってきたアンネ自身が、私に『婚約の報告をしに来た』と」
「彼女が王宮に来ているのね? すぐに支度をするわ!」
言われてみればまだ昼下がり。仕事の合間を縫ってアンネがここへ来ていたとて不思議な時間ではありません。
急いでクローゼットに駆け寄る私を、ミリダがやんわりと引き戻しました。
「お嬢様、そのお召し物でも問題ないと思いますよ。落ち着いてください」
「そ、そうかしら? そうよね、ちょっと気が動転してしまって……」
ミリダの言うとおり、この姿で先ほどまで政務をしていたのです。友人を迎えるのにふさわしくないということはないでしょう。
髪を手櫛で梳きながら深呼吸する私の後ろで、フェリナが不思議そうにケーネへ問いかけます。
「ねえパパ、なんでママはびっくりしてるの?」
「んー、一言で説明するのは難しいな……フェリナはアンネって知ってるか?」
「うん! ママとパパのお友達だよね! 前いっしょに遊んでもらったもん。可愛いお姉さんだったよ?」
「はは、可愛いか。まあそれはいいとして、フェリナの言う通り彼女はパパたちの大事な友達なんだ。友達が何も言わずに結婚するってなったら、フェリナはどう思う?」
「おどろく! そういうことなのね!」
フェリナとケーネの微笑ましいやり取りを見ているうちに、浮き立っていた心がすっと落ち着いてきます。
そう、アンネが結婚……めでたいことではありませんか。祝福されるべきことです。
「だから相手がどんな男とか気にしちゃだめなのよ私……! 相手がどんな奴でも、アンネが選んだ男なんだから……!」
「パパ、ママはなんで怒ってるの?」
「うーん、俺にもよく分からん。強いて言うなら『親心』みたいなところなのか……?」
「さあ行くわよケーネ! フェリナとマリルはお留守番しててね。ミリダ、アンネは応接室にいるのよね?」
私の問いにミリダが頷くのを見届け、私は部屋を飛び出します。
さあ、アンネの婚約者とご対面です!




