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天才王女は感動の再会をします

「エレナちゃん! よく来たわね!」


 アリナさんがドアを開けると同時に飛び出してくる人影が。ミリダが動くよりも速く、しかし優しく私に抱きついたその影はお母様でした。


 王宮ではよくある光景なので、ミリダも咳ばらいをして一歩下がります。しかし———


「お、お母様、スティアー卿とアリナさんが驚いておられます。ここは王宮ではないのですから、もう少し節度を……」


「あら、感動の再会を邪魔するほど卿は無粋な御方ではないわ。ですわよね、スティアー卿?」



 お母様がニッコリと微笑みながら卿の方を向くと、苦笑しながら口を開きます。



「そうですね、美しい母娘の再会を邪魔だてするようなことはありませんよ。むしろ、エレナ殿下とレーナ様の普段のお姿を見ることが出来て貴重なぐらいです。そうなのでしょう、ドラン将軍?」


「ええ、まあ……お二人は私の見る限り、とても仲のいい親子ですので……」



 卿に話を振られたドラン将軍が、とても話しにくそうにそう答えています。まあ、自分が抜けだした帝国の重鎮に話しかけられてはそうなりますわね。卿は多分気にしていないと思いますけど。


 いつまでもこうしているわけにはいきませんので、お母様を連れて卿の前に着席。アリナさんが飲み物を持ってきてくれたタイミングで、卿が口を開きました。



「まずは今回の一件、感謝と謝罪をさせていただきたい。王女殿下のおかげで我が領地は救われ、今では民も平穏な生活を送ることが出来ている。

 だがそのせいで、ケーネ殿という大事な人物を……本当に、謝罪のしようがない」


「……頭をお上げになって、スティアー卿。彼が命を落としたのは、卿の責任ではないでしょう?

 彼の遺体は、いずこに……?」


「この領館で一番景色のいい、最上階に。後でお会いになりますか?」


「ええ、もちろん。ご高配、感謝いたします……!」



 このご時世、敵地で命を落とせば遺体が戻ってくることは稀なものです。身に付けていた物を持ち帰ることが出来れば御の字で、ほとんどが弔われることなく燃やされるのです。


 でも、卿はきちんと彼を遇してくれた。そのことに、私はこらえていた涙が出てしまいそうになります。



「謝罪と言っては身も蓋もありませんが、我が領地からは以前ご提案頂いていた人的資源の共有をお受けいたします。今後とも、王国とは長くお付き合いと考えておりますので」


「……あんな条件、未だに覚えてくださっていたのですか? こちらが言うのも変な話ですが、あれはほとんど王国に利益のある条件ばかりで……」



 卿の言っている『人的資源の共有』とは、有体に言えば『技術と情報を王国へ頂戴』ということなのです。突っぱねられることを前提に組み上げた提案だったので、まさか受け入れられるとは……


 驚く私に、卿は柔らかな笑みを浮かべながら答えます。



「私は倒れたことで、人の温かみを学んだのです。自分が本当に困ったときに、手を差し伸べてくれる誰かがいる幸せを……

 だからこそ、王女殿下とは末永く友好関係を築いていきたいのです。私の窮地に兵を送ってくださった、そんな御方と」



 アリナさんの言った通り、本当に卿は変わられたのですね。もちろん、いい方向に。


 今の卿を、彼なら何て評するでしょうね。『甘くなった』とでも、苦い表情で言ってくれるでしょうか。



「卿がそうおっしゃるのなら、こちらにも異存はございません。

 今後ともよろしくお願いいたします」


「ええ、こちらこそ」



 こうして和やかな雰囲気のまま、会談は終わったのでした。




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