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天才王女は復活します

 ……結局私は、次の日から仕事に復帰した。


 リダやミリダにはすごく心配されたし、アンネも私が倒れたと聞いて王宮へ駆けつけてくれた。彼女、私の顔を見るなり泣き出してしまって、釣られて私も泣いてしまったのは秘密。

 アルカルトや王宮勤めの侍女たち、そして商会の面々までもが私のことを心配して気遣ってくれた。ケーネの事と、私が倒れたことから察してくれたらしい。


 そんな優しいみんなのためにも、私がへたるわけにはいかないのです。今もお母様が率いる王国軍は、遠く離れた地で戦ってくれていますし。

 戦時による決算の修正や兵站、物資の購入代金の捻出も、私の大切なお仕事。なるべく税は増やさない方法で、必要な資金を調えていく。


 本当は、ケーネのことをずっと考えていたい。仕事をすれば否応なしに、彼の姿を探してしまうから。

 それだけ私の生活は彼に支えられていたのだと実感し、どうしようもなく愛おしさがこみあげてくるから。


 そんな風に仕事をこなして数日、今回の事態の説明をするため、帝国からとある人物がやってきた。


 その名はスニリア。表向きは帝国で外交官をやっている、若い女性でした。



「初めまして、エレナ王女殿下。お会いできて光栄ですわ」


「こちらこそ、わざわざ足を運んでいただいた礼をしなくてはいけません。ようこそ、ナンコーク王国へ」


 柔和な笑みを浮かべながら入ってきた女性を、私も笑みを浮かべながら迎えます。

 

 一見すれば人のよさそうな笑みですが、その瞳は冷たくこちらを見据えていました。


(私が言うのも変な話だけど、可愛げのない女ね)



 お互いに仮面じみた笑みを張りつけながら席に着いたところで、向こうが口を開きました。



「今回私がここへ参ったのは、事態の説明をさせていただくためですわ。———失礼ながら、王女殿下はどれほどご存じで?」


「それはそれは、ご足労様です。ですが……全て、存じ上げておりますよ」


「さすがは賢君と名高い王女殿下ですわ。お話が早くて助かります」



 何を白々しいことを。私に隙があれば、都合の悪い事実を伏せて誘導するつもりだったくせに。向こうも私がスティアー領で何が起こったのかを調べているのを知っていたから、こうもすんなり諦めたのでしょう。



「まず第一に、帝国としては貴国に対して敵対する意思はございません。これからも友好関係を続けていければ、と思っておりますから。

 次に、『我々の不幸なすれ違い』によって生じた戦闘。これに関してもすでに調印が済んでおります。書類は、こちらに」



 彼女の後ろに立つ随員が、私に書類を差し出します。そこには確かに、お母様の名前で調印書にサインがされていました。


 つまり向こうの本音は、これ以上邪魔だてをしてくれるなというところでしょう。ミリダの調べによれば、既に領館にはお母様が率いる王国軍が駐留していて警備をしているそうです。容易に手出しができないから、王国軍を下がらせろ———それが、この外交官の言い分でした。


 ですが———



「不幸なすれ違い、ですか。おかしな言い回しをなさいますね?」


「……ほう? と言いますと?」



 私の言葉にスニリア外交官の目がすっと細まり、尋常ではないプレッシャーが私に覆いかぶさります。


 でも、退くわけにはいかないのです。ケーネが、王国の兵が命を賭して作ってくれたこの会談で私がしくじることは許されません。何より、私が私を許さない。



「スニリア殿は何か、勘違いをなさっているのでは? こちらはただ、自国民の救出に向かっただけですよ?」


 さあ、ここからが本番です。

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