天才王女は戦の準備をします
「まーたエレナちゃんは無茶をしようとしているのね? でも、ケーネのためなら仕方ないか」
アルカルトたちとの話を一度抜けて、私はアンネのところへ来ていました。来る途中に王宮で調べ物をしていたスミスさんも連れてきています。
多忙な二人がこのタイミングで捕まったのは奇跡としか言いようがありません。彼女たちの時間を無駄にしないよう、私は手短に要件へと話を進めます。
「確実に欲しいのは万単位の兵へと補給するための兵站と、武器と弾薬の補充。そして医薬品もたんまり欲しいわ。用意できるかしら?」
「ウチだけじゃ時間が欲しいわね。シャルロット商会の力を借りられるって言うなら話は別だけど?」
そう言いながら私の方へと流し目を送るアンネ。肩をすくめてスミスさんの方を見ると、彼は苦笑しながら手元の書類に目を落としました。
「王女殿下の指定した半分なら、こちらですぐに用意できますよ。王都の店に備蓄がありますので、総動員すれば何とかなるでしょう」
「半分、ね。もう少しどうにかならない?」
「アンネさん、ご冗談を。これ以上は店の経営に差支えが出てしまいます。それは良くご存知のことと思いますが……」
「アンネ、私からもお願いするわ。貴女の力が必要なの!」
私とスミスさんの言葉に押されて、うっと言葉に詰まるアンネ。しばし見つめあった後、彼女はバツが悪そうに頭を掻きながら口を開きました。
「もう、冗談じゃないわ。どんな時も自社の利益を追求するのが商人なのよ?」
「アンネ……」
「そんな捨てられた子犬みたいな表情をしないでよ。私が悪者みたいじゃない。
私は商人だけど、同時にエレナちゃんの友達よ? 友達のお願いを聞くぐらい、やぶさかじゃないわ」
「ありがとう! アンネのそういうところ大好きよ!」
彼女は素直じゃありませんが、何だかんだ言いながらも私に力を貸してくれるのです。アンネとケーネ、ミリダに支えられたからこそ、今の私があるのですから。
「シャルル商会としても、エレナちゃんに貸しを作るのは長期的に見れば利益になるからね。緊急を要するのだから、値段は覚悟しておいてよ?」
「構わないわ。それでケーネとリリンフェルトが救えるなら」
「……まあ、カッコいいエレナやんが見られたから良しとしますか……
一日だけ頂戴。明日の夕刻までには必要なものを揃えてみせるわ」
「スミスさん、ウチもそれでお願いできる?」
「任せてください。社員一同、頑張らせていただきます」
毎度、アンネとスミスさんの手際の良さには驚かされてしまいます。ですが、これだけ早く準備が整うならこちらもうかうかしていられませんね。
私は再度二人に礼を言うと、足早に王宮へと引き返します。二人の頑張りを無駄にしないよう、私も頑張らなくてはなりません。




