お嬢様はバカンスを楽しみます(ガールズトーク編)
魚料理を堪能した私たちは、膨れたお腹を抱えながら露天風呂に入りました。お風呂はさすがに一つしかなかったので、私たち女性陣が先に入った形ですね。
後にケーネも控えているのでさっさと上がって部屋に戻り、三人部屋のベッドに髪を乾かして倒れこみます。
「ふあぁ……」
お腹も満たされ、お風呂にも入ったことで自然と瞼が重くなります。隣で髪を乾かしているミリダも、どこかうつらうつらしているように見えますし。
しばし頭を揺らしながら目を閉じていると、隣でごそごそと動く気配が。気配の主に目を向けると、アンネがカバンから手帳を取り出して何やら書き込んでいました。
「ん~、アンネ、何を書いてるの?」
「今日のお料理とお店の様子を、絵に起こしておこうと思って。東洋の雰囲気をモチーフにした商売は、多分王都でも成功しそうだなって」
手帳を覗き込むと、確かにお造りや塩焼き、掛け軸なんかの絵が繊細に描かれています。昔からそうだったのですが、アンネって割と絵が上手なんですよね。
「やっぱり商会の会頭としては、今日の経験を活かしたいところ?」
「それもあるけど、純粋に同じ商人として危機感を覚えるところね。これは私の勘だけど、あのお店が立地と宣伝に力を入れ始めたら相当大きな飲食店になると思うもの。あれだけ丁寧なサービスに、出てくるお料理は味もよくて目でも楽しめる。ウチの商会は飲食には手を出していないけれど、もし事業を広げるならノウハウを買い取りたいところね」
そこまでアンネが言うのなら、間違いなくあのお店は商売として成功するのでしょうね。彼女の商売に対する嗅覚は、そこらの商人が束になっても敵わないぐらいのものですから。
しかし、アンネの真価はそこではないのです。こうやって遊びに来ているときでさえ商会のことを考えるひたむきさが、今のアンネを形作っているのです。
「でも、さすがはアンネよね。いついかなる時にもそうやって何かから吸収しようとする姿勢は、ちょっと尊敬するわ。ねえ、ミリダ?」
「はい、私も、アンネのそういうところが凄いと思います。私にはそこまで、頭が回りませんから」
「そんな高尚なものじゃないよ? 私は単に、自分の興味が湧いたものを形にして売り出してるだけ。それで言うならエレナちゃんだって、常に頭のどこかで国政のことを考えてるでしょ?」
「うーん、どうだろう……まあ、言われて見れば確かにそうかも……」
「若くして成功しようと思ったら、それぐらいしないといけないんじゃないかな? いや、それが無意識レベルで出来る人が、若くして成功できるのかな?」
確かにアンネの言うとおりね……若くして成功する秘訣、ですか。
「この話、王都にある学校の卒業式で話すのはどう? 私が言ってもアレだけど、エレナちゃんが言うとすごく説得力に満ちた言葉になると思うんだけど」
「ああ、そういえばそんな時期ね……じゃあ、私と一緒にこの話をしましょうか。ミリダ、こんな感じで草案を作ってくれない?」
「了解いたしました。それにしてもアンネにお嬢様、ガールズトークと言うにはいささか堅い内容ですね」
ミリダの言う通りだわ、と私もアンネも苦笑します。
こうして一日目の夜が更けていくのでした。
昨日、よもぎ団子さんから感想を頂きました。Thank you for impression!
割と久しぶりに感想を頂いたので、心拍数が平時より10%は上がりました(当社比)
バカンス編に突入したことで、今まで登場機会の少なかったアンネに日が当たるようになり始めました。ぜひお楽しみください!
お盆も過ぎ、大学生以外の学生さんは夏休みも半分を切りましたがいかがお過ごしですか? ポンコツ筆者は来週の修羅場を潜り抜ければ何とか平穏の日々を迎えられそうです。
多忙の間でも更新は続けていくつもりですが、何かの拍子に止まってしまうかもしれません。その時には寛容な心で許してくださると幸いです……!
それでは皆様、これからもよろしくお願いいたします!




