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天才王女は、秘書の悪だくみに興奮します

「———これで全部かしらね。思ったよりも少なくて助かったわ」



 積みあがっていた書類の底、一番下に置かれていた指令書にサインを書き入れると、私は大きく伸びをしながら書類を『確認済み』の箱へ入れました。


 一週間弱も政務から離れていたので、久しぶりの事務仕事に肩と腰が微かな痛みを帯びていますが気にしません。今は慣れ親しんだこの痛みが懐かしく思えるのです。


 まあ、慣れって怖いという良い事例のような気もしますけれど。



「お疲れ様です。おかわりの紅茶をどうぞ」


「お疲れさん。終わったばかりで申し訳ないんだが、これにちょっと目を通してくれるか?」



 一仕事終えた私に、ミリダからは紅茶が、ケーネからは書類が差し出されます。まず紅茶を一口含んで息を吐いた後、ケーネの差し出した書類に目を通します。


 これは———



「ロレンス王国の王位継承権第二位の少女? ということはあの王子の妹に当たるのかしら?」


「そそ。血のつながった妹のようだ。しかもあのイケメン、その妹を溺愛していると来た」


「それで王子が予想よりも素直に帰ってくれたのね……幼き時から学問に優れ、容姿も整った白皙の少女……彼女がどうかしたの?」



 私が帰ってきた時に言っていた『面白いこと』に、この少女が関係するから私にこれを読ませたのでしょう。ですがその真意が分かりません。


 首をかしげながら問うと、ケーネは新たに別の書類を差し出しながら答えてくれました。



「そこに書いてある通り、現在王女は反乱軍に幽閉されているらしい。まあ反乱軍の思惑としては、帰還した王子に対する交渉材料とするつもりなんだろうな。何せ、王子が本気になって反乱軍を鎮圧しにかかれば三日と持たずに瓦解するような烏合の衆だ。保険は持っておきたいと言うのが本音なんだろう」


「そこまでは分かるわ。あの書記官と王子とではそもそも器が違うものね。それで続きは?」


「単刀直入に言うとだな、この王女をロレンス王国の次期女王に据えるってのをウチがやる、ってのはどうだろうってことなんだ」


「そんな⁉ あ、でもそれも……」



 驚きを口にしながら、しかしその案に明確な反論が出来ないことに気付いて驚愕します。


 そもそもあの王子が再び王宮を奪還すれば、間違いなく私が書記官を焚きつけたことが明るみに出るでしょう。それは何としても避けたいところです。

 当初の予定では反乱軍が王子に勝ってくれるはずだったのですが、今の硬直した状況ではそれも厳しいと言わざるを得ません。


 そして何より、ここでウチがロレンス王国の平定に力を貸したとなれば、これからの交渉を優位に進められるのです。かの国から輸出される物品はどれも貴重なものであり、それをウチへ優先的に卸してもらえるとなれば、その恩恵は言わずもがなでしょう。



「……具体的な案は? 当たり前だけど、兵たちが大勢傷つくようなことは認可できないわよ」


「そこもちゃんと考えてあるさ。さっき諜報部から入った情報だが、王都のほぼ半分を正規軍が奪還したらしい。多分一両日中に決着がつくだろう。

 だからウチから派遣する軍の本隊は兵站、物資の輸送などの後方支援に当たらせて、隠密部隊が王女を王宮から連れ出せばいいってことだ。これなら被害はほとんど出ないだろうし、何より恩も売れる」


「聞け聞くほど、『面白いこと』に思えてくるから不思議だわ……」



 ぽつりと漏らしたつぶやきに、ケーネが二ッと笑いながら三つ目の書類を私に差し出します。そこには今回の作戦が実行された時にかかる費用から反乱軍の配置まで、作戦案の詳細が記されていました。


 ———ここまできっちり細部を詰めて交渉をしてくるなんて、どこの誰に似たのでしょうね。これは私の方も、少し気を引き締めなければいけないようです。



「いいわ、ちゃんと考えてみることにしましょう」

昨日、サーモンさんから感想を頂きました。Thank you for impression!


前話は『天才王女』の連載を始めてから最も難産なお話だったので、それに感想を頂けたということで喜びもひとしおでした。ありがとうございます!


実は学生の私、昨日でやっと長かった一学期も終わって今日から夏休みなのです。ですがスケジューラーが真っ黒なぐらい予定がびっしり入っていて、暗澹たる気持ちに支配されております……主人公のエレナはもしかしたらポンコツ筆者の前世か来世なのかもしれませんね……



以上、感謝と近況でした。これからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いいたします!

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