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第四十五話 最後の魔侯

 

 迎賓館に帰ったエリィは護衛と部下と友達からお小言を頂いた。


「いくら呼び出したのが四大魔侯といえど、うちは護衛。除け者はなし」

「我が主様の啖呵、最高でした!」

「べ、別に心配で見に行ったんじゃないからね!」


 天上都市であんなことがあったばかりなのだ。

 もっと自分の身を案じろと言われてエリィは反省しつつ、


「うふふ。皆さんなら陰ながら見守ってくれると信じておりましたので」

(こっそりと後をついて来てたのバレバレだよ!)


 そんなことを思うエリィであった。

 何はともあれ、マザーから合格は頂いたので、夜を過ごしてから出発の段となる。見送りにはテレジアやその夫、赤子のアマル、マザーなど、大勢のラミアたちが集まってくれた。最初はエリィに厳しい視線を送っていたラミアたちも、今は幾分か和らいでいてるように見える。


「坊や、しっかり食事をとるのよ」

「あぁ」

「肉ばかり食べないように。野菜も食べなさい」

「あぁ」

「妻を娶った以上、女遊びはダメよ。弱いもの虐めもダメ。ちゃんと人族の時間感覚を身につけること。人族の寿命なんて瞬きほどなんだから。それからーー」

「マザー。もういい」


 げんなりとしたリグネである。

 母親に気にされる息子の顔を見せるリグネは新鮮だった。

 マザーは仕方なさそうに息をつき、エリィとリグネ二人を見て言った。


「結婚式には呼びなさいね。絶対に行くから」

「あぁ」

エリィ(・・・)。あなたも、何かあったら相談なさい。私はもうあなたの義母(はは)でもあるのですから」

「……はい!」


 名残惜しそうなラミアたちに別れを告げ、エリィたちは揺籃の都を出発する。

 次なる目的地は魔族領域の東端に位置する、魔の大森林だ。


「はぁ〜〜〜色々あったけど、無事に終わってよかった……」

「今回は自業自得では」

「それは言っちゃいけませんわ……」


 主だった面子が集まった竜車の中でエリィは苦笑する。

 さすがに今回は自覚があったので言い訳ができない状況だ。

 これ以上突っ込まれる前に話を変えようとエリィは口を開いた。


「それで、次は森人族の都でしたっけ?」

「あぁ。そうだ」


 森人族。

 人族に魔術を伝えたと言われる原初の精霊の末裔だ。

 魔力に秀でているものの、かの種族は争いを好まず、かつては人族と魔族のどちらにも属さずに中立の立場をとっていたと聞く。魔族に属したのはリグネが戴冠してからのことだとか。


「森人族は穏やかな種族なんですよね。今回こそ平和に終わりそうですわ」

「穏やか……」


 ロクサーナとセナが微妙な顔で顔を見合わせた。


「まぁ、穏やかとも言えるわね」

「穏やかじゃないとも言えます、我が主様(マスター)

「いやどっち?」

「行けば分かる」


 神妙な顔で頷くリグネ。

 エリィはララと顔を見合わせた。


「つまり、どゆこと?」

「怠惰妖精だから怠惰なのでは」

「そういうこと?」

「ん。間違いない」


 いよいよ最後の一人となる『怠惰妖精』の情報はほとんどない。

 人魔大戦時においてもかの魔侯はほとんど参戦しなかったという。

 わかっているのは種族が森人族であること、魔術に秀でていることくらいだ。


「ねぇ、ロクサーナ。怠惰妖精はどんな方ですの?」

「私、あいつ、嫌い」


 心の底から嫌そうに顔を歪めたロクサーナだった。

 同じ四大魔侯である彼女をして、怠惰妖精は嫌だという。

 そういえば前にも同じやり取りをしてたな、とエリィは思い出す。


「リグネ様」

「どんな奴かは行けば分かるが……そうだな」


 リグネは思わしげに顎に手を当てた。


「奴は……怠惰妖精は、我の許嫁だった者だ」

「………はい?」


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