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第0.5話「始まりの日、終わりの日:後半」

明けましておめでとうございます。

|ω・`)ノ ヤァ

連続投稿2日目で失敗!!

喉が痛い。体の節々が痛い。頭が痛い。

という状態で書かれた0話後半です!

誤字チェックは明日やります。もう寝たい……。

「……お聞きになりまして?」

「ええ、何故両陛下は殺処分になさらないのでしょうか……、お国の先行きが不安で仕方ありませんわ」

 王宮内で蔵書されていた魔法の本を持ち出し、浮かれていたイエフに冷や水をかぶせる言葉が通路を曲がった直後に聞こえてくる。

 先程笑顔で会釈をした侍女たちがこれ見よがしに話しているのだ。イエフに聞こえるように。


「……」

 ギュッと唇をかみしめるイエフ。

 慣れたことだ。慣れている。

 彼は黒目黒髪という特殊な色をもって生まれている。

 この国アーテルランドでは生まれる子供は生まれ持った特性の色をもって生まれる。

 先天性魔法回路と呼ばれるそれは、赤子が生まれながらにして持つ魔法の事を指す。故に、色が全て入り混じった黒と無色の白は縁起が悪いと言われ。白は無能者と蔑まれ、黒は史上例を観なかった為、災厄の象徴とされた。


【災厄の王子】

 イエフの別名である。神殿で生まれたイエフを見た神官長が、ついぞこぼした『まるで災いの様だ……』という言葉が独り歩きして、今や国内で知らぬ者はいない程に有名になった名前である。

 イエフは生まれて5つになるまで己が大天使の転生体であることを知らなかった。大天使故にすべての力に通じた色に生れたのだが、それを理解するまで彼は耐えねばならなかった。

 幸いなことにイエフの家族はそのような偏見を持たない人たちであった。

 父王は『他人と違うという事は、違う可能性があるという事。精進するのだ』と言って慰めるようにイエフの頭をなでる。通常時は威厳のある王なのだが、裏の顔はイエフが可愛くて仕方ないらしく、たまに2人になる様に画策し、この様に表情が崩れてしまっている。残念なお父さんである。


『立て! イエフよ。この程度で諦めてしまうようでは王族とは言えぬぞ……』

 威風堂々。王者の貫禄を備えた長男はイエフに剣術を教えている。そして毎度『可愛がりすぎた……』と罪悪感を表情に浮かべながらもイエフに王族として家族としての誇りを植え付けようとしていた。イエフにとってカッコいい兄であるが、成長するに従い『やりすぎちゃったかな……』と目が泳いでいるのが見わかるようになり、イエフは『一兄。ポーカーフェースを覚えてください』と思うのだった。


『馬鹿者! 脳で120%理解し、無意識で実行する! それが魔法だ。弟よ。お前は理解が足りん! 来週までに、このリストにある本を熟読するのだ!! それまで魔法は禁ずる!! 未熟者め!』

 次男は魔法を極めんとする賢者である。

 まぁ『リスト』と言っている時点で甘々であり、本を借り、翌朝イエフが起きると机の上には必ず『放浪賢者が授ける、ここを理解できれば丸わかり♪ 攻略ガイドブック』なる冊子が置かれている。この奇麗で神経質な文字は次男の文字である。


『『兄さま~』』

 弟妹達は兄や両親と違い純粋に慕ってくれる。従者が侮ろうが両親や兄たちがイエフを大事にしているのを子供だからこそ感じていた。


『王族たるもの甘えは許されません。貴方は何者であろうと我が国の王族なのですから……』

 切れ長の目を持つ傾国の美女。王妃にして外交官である母親は時間ができるとマナー講習でイエフに鞭を打つ。そしてその晩必ず添い寝に来る。『いいこでちゅねー』。何故か赤ちゃん言葉である。弟妹達の妊娠時は頬を撫でるだけにとどまったが、それ以外の期間はイエフが11になるまで1週の中で3日も来ていた。王家のみが知る秘密の通路を使って。


『すみません。今年からは1人で寝れます』

 イエフ11歳の時にそう告げると母は心底残寝そうな表情で『残念ね……皆これぐらいの歳で母親から自立してしまうのね……』と呟く。それが自分だけ特別ではないことを知り安心とがっかりした感情を覚える。


 周りの愛情はかけらも受けられなかったイエフだが、それを補っても余りあるほどの家族の愛情を得て、ぐれることもなく順調に成長し、そして10歳の時、自分がハーフ天使であることを知った。

 この世界で10歳になると【巡りの儀】という儀式を受け能力と、モンスターに対抗するための【レベル】を神より賜る。イエフを担当したのはイエフを人間に転生させた気候をつかさどる神である。


『やぁ、お久しぶり。人間生活は楽しいかい?』

『この目と髪のせいで家族以外からは差別されております』

 神を一目見た時からイエフの精神体は大天使であった頃の記憶を取り戻す。それは徐々に、未熟な体にゆっくりと染み込むように。


『おやおや。それは残念だね』

『もしかしてわざとですか?』

 イエフの言葉に気候の神は目を丸くし、そして数秒が微笑む。


『そんなことないよ。それは追々君も思い出すはずだ……。それより良い家族に恵まれたようだね』

『今生における自慢です』

『うんうん。では君は家族を大事にするといい。その地方は生きるには厳しい地方の様だしね』

 気候の神は口パクだけで『大天使といえどね』と続ける。イエフはその言葉を読み取り怪訝そうに気候の神を見る。


『さて、本来なら私と巡り合った子供達には力を与えるのが通例なのだが……君に与えると器が堪えられなさそうだね……。どうする?何か要望はあるかい?相談で一つ与えよう』

『…………では』

 イエフは十分に考えて回答する。


『ほう。君は中々に図太いね……。うん。無理ではない。ではその力を授けよう。でも力を下ろすのは12歳になった時になる。楽しみに待つといいよ。……うん。私も君の行動が楽しみになってきた』

『……っく』

『右手の甲に私の使徒である証を刻んだ。有用に使うといい。……そして存分に楽しませてくれたへ』

 右手が熱く痛い。巡りの儀の儀式上の中でもだえながらもイエフは気候の神の表情を仰ぎ、そして背筋を硬直させた。


 神の残酷な笑み。


 能天気に力を得た! などではないことを強制的に理解させる。そんな表情だった。


『し、使徒様だ!』

『馬鹿な! 【災厄の王子】が使徒様だと!』

『事実だ……。受け入れがたい事実だがな……』

 その夜、大々的に家族から祝われた。照れるイエフに堂々と可愛がる口実を得た家族たちは人目もはばからず、愛しい家族が栄誉を得たことを喜んだ。

 ……。

 その2年後。

 イエフ12歳の時、王都北部に存在するフィールド型ダンジョンの攻略へ本格的に着手した。

 未だ【災厄の王子】と信じ、イエフを迫害する者たちが多い中、イエフは【空白の部隊】と呼ばれる白髪の【能無し】と呼ばれる者たちの部隊を率い数々の奇跡を興していく。

 英雄イエフが一歩目を刻むのだった。


「豊穣の女神よ。私は貴方を必ず見つける……。そして、必ず……殺して差し上げます……」

 イエフは必ず早朝祈りをささげる。

 それが仕えるべく気候の神ではなく、豊穣の女神であることに残念ながら人間達では理解できなかった。

 ……それから更に4年が経過し、物語は進み始める。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次からアユムとアームさんの物語に戻ります。

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現在、こちらを更新中! 書籍1・2巻発売中。
アームさん
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