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99.5「魚ボッチの戦争・後編2」

こんばんは!

「37階層に居るっぽいね……あ、反応が消えた。スリープモードを使ってるね……」

 人形王が階段を眺めるメイちゃんの横に立ち、楽し気に呟く。


『……一先ず無事という事か……』

「ああ、でも早く迎えに行った方がいいかもね……あっちもあっちで限界っぽいしね……」

 人形王の言う【()()()】が何を指すのか凡その予測が立ったメイちゃん。


『はぁ( ´Д`)=3』

「ぷくくく、()は敵なんだよね……彼らもね……それでも君は行くのだろ?」

『高度情報社会になった俺達の世界では近年尚更に、仁義を通さない奴は……信用を、職を失うんだよ……。友達は助ける……それだけのことだ』

「さて、行きますか……」

 人形王とメイちゃんはゆっくり振り返る。その視線先には浮遊物体で酒だるを運ぶ黒子の2名と、冒険支度を済ませ人数分のリュックをアームさんに乗せて少々不満顔のアユムが神剣形態のイックンを片手に立っていた。

 対抗手段を見つけ、犯行作戦に打って出た中層のモンスター達はそれまで巻き込むことはできないとしてかたくなに拒否していた人間達の支援を受け、35階層を反抗の最前基地とし始めていた。

 人間を巻き込まなかったのはダンジョンモンスター達の意地である。

 同時に終わりの見えない戦いに人間を巻き込んでは有利にも不利にも働くと考えたのだ。

 何故ならば人間は10日以上連続して戦闘などできないからだ。

 だが、終わりが見えた。

 戦闘も長期化するような展望ではない。

 ここだ。と判断したのは暗黒竜先輩である。

 それに答えたのはケルベロスから得た情報より特殊部隊を編成し10階層で待機していた冒険者組合だ。

 この死の神が仕組んだ騒動は収束に向かっていた。

 あとはニャンダーの救出と裏切者の処分だけである。


『マジカルクロー!』

 ホワイトボードを掲げて七色のツメで36階層から37階層に繋がる階段前を占拠していたダークドルフィンを切り裂くメイちゃん。

 空間を泳ぐダークドルフィンはまさに短距離だが空間ジャンプ可能な非常に厄介なモンスターだ。

 だが、メイちゃんのツメはその空間毎切り裂いた。

 これにほぼ生身で勝利した悟は化物である……。


『クリア! 次の階層へ進むぞ!』

 罠の確認をしてメイちゃんが進む。


「いやはや、愛の力だね~」

「師匠は愛されてますね~」

「いや、こっちみんなし……」

 人形王と黒子の美女2名である。


「うーん。太志さんやる気に満ち溢れてますね……」

「あかん! このままやと何もしないでおわってまうで! アユム!!」

「がう(ニャンダーと合流したらお昼~♪ 師匠のお弁当楽しみ~)」

 アユム、イックンはメイちゃんの気迫に圧倒されていた。

 アームさんはピクニック気分である。

 アームさんは15階層の階層主なので本来はもっと……。


「がう(え、リッカ食べていいの?本当にいいの?)」

 ……。

 こうして彼らニャンダー救出部隊は順調に先へ進む。

 やがて38階層でグラトニースライムに苦戦するニャンダーを発見する。


「がう!(動く羊羹ゲットだぞ!)」

『翔子!!』

 目にも止まらぬスピードで動く食欲の権化はあっという間にグラトニースライムを切り刻む。

 ニャンダーは好機とみてメイちゃんに飛び込んでくる。

 そうメイちゃんの口内に。

 もちろん中の人と抱擁が目的だが、周囲的には台無し感が堪えなかった。


「がう(うめーーーーー!)」

 グラトニースライムを堪能するアームさんは太志と翔子が再会を終えるその時、最後のひとかけらを前に『がう(がんばれ! 増殖するのだ! お前は美味しい子! やればできる子!)』などと残念な姿らさらしていた。



ここまでお読みいただきありがとうございました。

本日夜間に99.6「魚ボッチの戦争・後編3」をお送りいたします。

次の話で100話「3章エピローグ」に入れるはずです。

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アームさん
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