結/竜神様と一緒
R15、注意。
【一】
見送るが、顔は見ない。
「放課後も、きちんと部活動に参加するのじゃぞ」
「部活は……学業じゃないぞ」
顔を見ずとも判る不服そうな声に、案の定、意思が揺れる。学校が終わればすぐにも顔を見せてくれるというのは、嬉しいのだ。自分とて異議がないどころか渇いてやまない。
しかし、それでも今は。
「友達は、大事にしてほしいぞ」
義父母や、橘川直という友人を得て、伴侶以外の人間関係というものも大事なことは理解できたつもりだ。だからなおのこと、琢磨にも孤立はしてほしくない。
長い沈黙が玄関に落ちる。
朝の練習に間に合わなくなるのではないか、と心配になってきた頃、ようやく声がした。
「姉さんがそこまで言うなら。ただし」
「ただし?」
顔を見返しそうになり、あわててそっぽを向き直す。ただでさえ引き留めそうになるのをこらえているというのに、目を合わせるべきではない。
「オレへの電話とかメールとか禁止ね。もらうたび、学校抜け出したくなるの我慢してるんだからな」
「わ……わかった。わしも……我慢するぞ」
そのような切り返しがあるとは思わなかった。手持ち無沙汰になりやすいこちらの方が荷が重くなりそうだが、仕方ない。ここは年長者が手本を示すべきであろう。
「じゃ、行ってきます」
横目を向けた、視界の隅で後ろ姿が動く。
「あ――」
戸の向こうへ隠れようとする後ろ姿に、伸ばしそうになる手を拳に変えて止め、呼ぼうとする声をため息に変えて流す。
また、行ってらっしゃいと言えなかった。どうにも、顔を背けていると時機を測り損ねる。
「お疲れさま、さなちゃん。お茶入ってるわよ」
「……義母上か。ありがたい」
呼ばれるまま居間の食卓について熱い緑茶をすすり、出るのはやはりため息であった。
「何かあったの?」
「何がじゃ?」
「琢磨が寂しがってるわよ。朝はそっぽ向いてるって」
「う……」
俄然、気が重くなる。あまり口数の多くない琢磨が口に出すということは、本当に気にしているのだ。そしてその上で、敢えて訊かず、事情があるのではないかと気遣ってくれているのであろう。
「顔を……見づらいのじゃ。引き留めてしまいそうでな」
欲だけ言えば、学校など行かずともよい。極論、監禁なり何なりしてしまいたいくらいだ。気兼ねなく触れてよいと琢磨には言われたし、そうしてよい立場も得ているはずだが、それでも邪魔の入らない状況をついつい夢想してしまう。
無論、実行そのものは考えていない。琢磨のためになるまいし、そもそも嫌がられることであろう。この身は災いではあるが、琢磨の為に在りたいのだ。
いつの間にか百面相を演じていたことに気付き、頭を振る。義母と目が合い、気まずさに顔が火照った。
「あらあら」
義母はとても楽しそうに笑みながらこちらを眺めている。考えていたことの何割かは見透かされているに違いない。
しかし、義母は知るまい。この髪に触れる琢磨の指が、この名を呼ぶ琢磨の少し低くかすれた声が、どれほど優しく心地よいか。あの日向のような喜びはこの身にのみ許されているのだ。
まだ手を握られるくらいで、気安く肩を抱かれたり唇を奪われたりしないのがもどかしくはあるが。より高みにいる義父母をうらやんだりなどしていない……していない。
「……うらやましくなどないからな」
「ね、さなちゃん」
「む?」
我に返って見返し――居住まいを正す。義母の顔に浮かぶ笑みはそのままだが、眼は真摯な光を帯びていた。今この時、彼女は面白がっていない。
「どうした、義母上」
「さなちゃん……いいえ、紗雫媛。改めて、琢磨をお願いしますね。私もあの子は大事だけど、私にはまず、あの人がいるから」
「錬――もとい、義父上か」
なるほど、夫婦であれば自分の連れ合いが第一であろう。自分が琢磨を思うように、義母もまた、義父を思っているのだ。
これは約束だ。大事な、とても大事な、自分の先達から託される約束。持ちかけられたこと自体が、認められている証左に他ならない。
「確と――承った」
真っ向、見つめて返すと、義母は改めて柔らかな笑みを浮かべた。
「ありがとう」
「わしは琢磨を好いておる。それだけじゃよ」
「それが一番、得がたくて強いものだと思うの。嬉しいわ」
「照れくさいのう……」
無論、思う通りを口に出して嘘はないのだが、持ち上げられるとどうにも面映ゆい。
互いに言葉が続かず、間が持たなかったところに、単調な電子音が響いた。洗濯機が一仕事を終えたらしい。
「行きましょうか」
「う、うむ」
そろって腰を上げ、食卓を後にする。
義母と手分けして洗い物を片付けながら、ふと思い立った。
「のう、義母上」
「なあに?」
「これが片付いたら、しばらくお昼寝をしてもよいか?」
「ええ、いいわよ」
「ありがたい」
考えてみれば、これは好機というものであろう。琢磨に見られるのは、さすがに恥ずかしいものがある。
気兼ねせず済みそうなのは、よいことだ。もしかすると、自分で思っている以上に表情が緩んでいたかもしれない。
【二】
「九十七、九十八、九十九……百っ」
つぶれた。腕立て伏せを終えた体勢のままのうつ伏せから、転がり直して仰向けになる。
腕に力が入らない。
神様の牙でついた傷はだいたい塞がった。腕がまともに動くようになったので筋トレを始めたら、そのせいで腕がまともに動かなくなった。
「源センパイ、大丈夫ですか?」
降ってきた声の主に目だけ向ける。
腕まくりをしているのにまだだぼだぼに見えるジャージを羽織った短い髪の女子が、ペットボトルが入っているらしいスポーツドリンクのロゴ入りの段ボール箱を抱えている。
たぶん、部室から運び出してきたところなんだろう。投擲組が柔道部に混じってウエイトトレーニングをしているこの体育館まで、よく体力がもったものだと思う。
「橘川おまえ……本当にちっちゃいな」
「第一声からセンパイがひどいっ!?」
「ああ、悪い」
適当に返しながら、深呼吸。
「何、新種の漫才? いつの間に仲良くなったのきみら――一本もらうよ」
首にかけたタオルで汗を拭きながらすたすた歩み寄ってきた、タンクトップにジャージと軽装の女子が、橘川の段ボール箱から取り出したスポーツドリンクをさっそく一気飲み。
「共通のお知り合いというか……それにしても桐野センパイ、いい飲みっぷりですね」
「ふいー。そりゃ疲れてるしね。で、どうしたの源くん。トラック組のきみが上半身の筋トレなんて珍しい」
空にしたペットボトルをぷらぷら振りながら、オレの枕元にあぐらをかく桐野先輩。元々ネコっぽい顔立ちが、面白いものを見つけた、と言いたげな笑みで輝いている。
「えっと、その。一身上の都合です。トラックにあんまり必要ないとは思うけど」
ひとつ、憧れというか、企みを持っている。それを叶えるために、どうしても大胸筋が必要なのだ。
「一身上の都合って」
先輩がけらけらと笑い出し、手を添えてオレの耳元に口を寄せた。
「やっぱり、あのお姉さん関係?」
「え、ええ、まあ」
「へえー」
笑みが一層深まる。
「悲劇だよ橘川。我々陸上部女子は大きな損失を被った。校外に相手がいるそうだよ。かっさらわれた形になるねえ」
「それは、……知ってますっ。でも、相手のひともいいひとですもん。……トラック組の人たちにも配ってきますから失礼します」
なぜか少し不機嫌になり、橘川は足早に行ってしまった。やれやれ、と肩をすくめ首を振る先輩に、オレ自身も起き上がりながら訊く。
「桐野先輩、かっさらわれるってどういうことですか?」
その言い方だと、まるでオレが人気者か何かみたいだ。
「きみが女子避けてたのは知ってるけどさ。女子の方にはきみを気に入る人間多かったんだよね」
「え……なんで? 鑑は人付き合いうまいし、もててるのは知ってるけど、なんでオレもあいつと同じ扱いなんです?」
「源くん、怪我した子に下心なしで肩貸してくれるし。時々出る一言がストライクゾーン撃ち抜いたりするし」
「は?」
「女の子を避けない時は、見たまんまの感想言うでしょ源くん。ためらいなく『綺麗』だの『可愛い』だの言われると、普通の女の子は意識しちゃうもんだぞ」
思わず、首をかしげる。今まで、そういう口説き文句じみたことを言った覚えはこれといってない。
「じゃあ訊くけどさ。きみと付き合ってるあのお姉さん、綺麗だと思う?」
「ええ、綺麗なひとですよ」
「ほら即答するし」
「へ? えーと、ああ」
そうか、思った通りを口に出すのは、普通じゃなかったのか。
「……これから控えます」
今はもう、避ける以前に、他の女子に興味がない。変に関わりを持っても厄介ごとにしかならないだろう。
「そうするといいよ」
うんうんとうなずき、桐野先輩は立ち上がった。
「ダウンしてくるよ。またね」
「あ、はい」
練習の締めくくりのクールダウン。前半を略すと知らない人には勘違いを招きそうだな、と思いながら、軽い足取りの先輩を見送る。オレも立ち上がった。
やることやったし、朝言われた分の義理も果たしたし。さっさと帰ろう。
【三】
「ただいま」
「おかえりなさい」
玄関のドアを開けざまの声に応えてくれたのは、母さんの声だけだった。
朝の出かけ際には冷たいと思ったら、夕方にまでそれが続くようになったらしい。オレ、神様を怒らせるようなことしただろうか。あのひとの性格だと湿っぽく後を引くようなことはないはずだけど。
上がり込んで居間をのぞいても、いたのはやっぱり母さんだけ。オレの顔を見たとたん、母さんは噴き出した。
「なんて顔してるの。暗いわねえ」
「そんなこと言われても……姉さんは?」
「お昼寝中よ。まだ部屋じゃないかしら」
話す機会もないらしい。思わず落ちた肩から、スポーツバッグがずり下がる。
「そっか。ありがと」
背中を向けて、母さんに呼び止められた。
「なに?」
「ちゃんと本人から理由訊くようにね。彼女なりの考えがあってのことみたいだから」
「まあ……顔合わせたらね」
軽く返して、階段を上る。部屋の机の脇に荷物を置いて椅子を引き、どっかりと腰を下ろして――思わずもう一度立ち上がる。
オレのベッドにひとが寝ていたのだ。
「ね……姉さん?」
オレの枕を抱きしめながら、神様がすうすうと寝息を立てている。普段は結ばれているふっくらした唇が半開きになっていて、その寝顔は起きている間と違ってどこか幼くかわいらしい印象。
うん、いいもの見た。さっきからのもやもやが、あっけなく薄れていく。
「……わざわざ寝るためにオレのところ来ることないだろ」
声をかけるのも気が引けて、なんとなく神様のそばに腰を下ろす。肩口からこぼれている長い黒髪をすくうと、指の間をすべり落ちていくつやつやさらさら輝く感触が相変わらず気持ちいい。
「困ったな」
幸せそうな寝顔を見ながら、つぶやく。
なんだってオレの枕を抱きしめて寝てるんだ。普通に寝るとき、変に意識しちゃうじゃないか。
綺麗なひとと付き合うのも、なかなか困りものだ。
少し欲張って、神様の頭をなでようと手を伸ばしたところで、当の神様と目が合った。
とっさのことで、オレは言葉が出ない。オレを見返していたぼんやりした眼は、オレが何と言葉をかけようか迷ったときにはさっと醒めていた。直後、弾かれたような勢いでのけぞる神様。どす、と鈍い音がした。
「ちょ、姉さん!?」
「琢磨! いつの間に!?」
「いや……それより大丈夫?」
真っ赤な顔でオレから距離をとろうとする神様だが、まるで動けていない。何しろ、後ろにのけぞった勢いで角が後ろの壁に刺さっているのだ。頭を打たなかったのはいいが、どうにも間が抜けている。
「う……うう……ぬ、抜いておくれ、琢磨。見えぬので、わしが下手に動けば壁を崩しかねぬ」
「あ、ああ」
相当恥ずかしいんだろう。両手で顔を覆いながらの頼みに、うなずく。
「頭揺れるかもしれないけど、ガマンしてくれよ」
「うむ……頼む」
握った角は硬く、髪とはまた別の感じのすべすべで、若い木のような感触だった。考えてみれば、神様の角に触ったのは今が初めてだ。
角を握り直して壁に足を当て、踏ん張る。正攻法でまっすぐ引っ張ってみて、抜ける気配は今のところない。
「なかなか……深いな」
角は頭から生えているので、抜けないからと揺らしたり反動をつけたりするわけにはいかない。単に物が刺さっているわけではないことを考えれば、難易度は少し高めだ。
「のう、琢磨。その向きに動けば、引っかからぬのじゃな?」
「え?」
不意の言葉に、神様を見下ろす。
「琢磨に合わせてわしも頭を振ればよかろう?」
「ああ、そういうことか。じゃあ、いちにの、さん、で引っ張るから合わせて」
「うむ、わかった」
いちにの、さん! 声を合わせて引っ張り、抜ける。支えがなくなり、オレは勢いよく後ろに投げ出された。抜けた後のことを考えに入れ忘れていたのだ。
まずい、と思った直後、床に背中を打った。ただし、首筋から後ろ頭にかけては何か柔らかいものがからんでいて、衝撃はなかった。ついでに言えば体がやけに重い。
我に返ってみると、鼻先に神様の顔。
「危ないところじゃったな」
「あ、ありがとう」
とっさに神様がオレに飛びつき、手で後ろ頭をかばってくれていたのだ。
それから、沈黙。神様は何も言わない。オレも何も言わない。神様はオレの上からどいてくれないが、正直言えば、そのままどいてほしくない。口で訊くか直接行動するか……抱きしめたくなって、そうしていいか悩んでいたからだ。
ふと、神様の眼が困ったようにそらされた。そしてまた、オレを見て、顔が赤くなっていく。
考えていることの見当はついた。というより、外れていても自分の勢いを押し通したくなった。神様が動くより先に、その首に腕を回して上体を起こす。
驚いたのか、神様の体が一瞬こわばり、そして力が抜けていった。
この女の唇は、やっぱり柔らかい。
唇の離れ際、神様は鼻にかかった甘えたような不満そうな声をもらした。オレの首に回っている腕に力がこもり、上体ごと覆いかぶさるように追ってきた唇に、オレの唇がもう一度ふさがれる。
ぬるっとした。
驚いたが、そもそも口をふさがれているので声は出しようがない。そのまま、上唇や下唇が内側からくすぐられる。半開きになった歯の隙間から更に入ってきた舌が、オレの舌をなめて、からみ、ついでに吸い上げる。
刺激が強過ぎて頭の回転が鈍る。唇から糸を引かせながら離れる神様の赤い顔をぼうっと眺めていた。
「辛抱……できなんだ」
恥ずかしそうに笑いながら、神様。
「琢磨のおらぬ時間を紛らわそうと思うておったが、やはり残り香では足りなんだ」
「残り香って……」
男の体臭って、普通そんないい扱いじゃないと思うんだけど。だいたい、足りないって、オレがいればいいと思ってるってことじゃないのか?
「オレ早く帰るっていつも言ってるじゃないか。それをそっぽ向いて、見送ってんだか見送ってないんだか」
「それは……その」
神様の眉が、八の字に寄る。
「引き留めてしまうではないか」
「へ?」
「欲を言えば四六時中添いたいぞ。しかしそれは琢磨のためになるまい。家の外で琢磨がひとりぼっちなのは、きっと悲しいことだ。じゃから、わしも我慢しておる」
朝オレが出る時には、何かしている最中でも必ず飛んできて、なのにそっぽを向いている。そこにそういう理由があったとは。
「何か変だとは思ってたけど、オレのこと心配してくれてたんだな……ありがとう」
そっと頭をなでると、神様は幸せそうに頬を緩めた。
「とりあえず、立とうか」
「そうじゃな」
オレを放して傍に立っていた神様は、オレが立ち上がるなり、またオレの首に腕を回して寄り添った。
「あの、姉さん?」
「どうにも、昂ぶってのう。念入りにきすしたからじゃろうか、もうしばらく触れていたいのじゃが、よかろう?」
肩越しの声に、顔が熱くなった。そういえばディープキスしたんだ、オレ。
さっきキスした時は勢い任せでためらわずにすんだけど、肩を抱いて嫌がられなかった。たぶん、今も嫌がられないはず。恐る恐る自分からも腕を持ち上げ、指先が肩に触れた瞬間、階下から聞こえた声に手を引っ込める。
「ご飯よ琢磨。さなちゃん起こして一緒にいらっしゃい」
「……らしいよ。行こうか」
言ってみたものの、反応はない。それなら、と動こうとしても、がっちり首を捕まえられていてまともに動けない。
「行きたくない?」
すると首を左右に振る気配。
「そういうわけでは、ないのじゃが……」
語尾を濁して、耳元で、ぼそり。
「しばらく、体を離したくないぞ」
「やっべ、可愛い」
じんわりと感動してしまった。本当にオレは好かれてるんだ。
とはいえ、この状況をどうしたものか。神様とくっついたまま移動する手段があれば――。
「あ」
ひらめいた。
「中腰になるよ。放さなくていいから、ちょっと腕緩めて」
「む?」
わけが分からない様子ながらも前かがみになって付き合ってくれる神様の両膝を、裏側から片腕ですくい、持ち上げる。自然、空いていたもう一方の腕は神様の背中を支え――お姫様だっこが完成した。
「おお……これは……!」
「重い……けど、感動……」
まさかこんなに早く、野望が叶うとは思わなかった。これがしたくて、散々腕立て伏せばかりやっていたのだ。
「これが伝説の……乙女の格好かっ」
目を輝かせる神様に、思わず首をかしげる。
「何、伝説って」
「街中で、このような格好は見かけぬではないか。しかしよいものだな。嬉しいぞ琢磨!」
ぎゅう、と一際強く首を抱かれた拍子に、少しふらついた。
「琢磨?」
「あ、うん。じゃあ下行こうか。ドアは、姉さん頼む」
「わかった」
実は、もう腕がしびれてきている。たぶんまだまだ筋トレは付け焼き刃、しかも疲れて帰ってきての今なので、タイミングそのものは考えてみればかなり悪い。
神様の幸せそうな笑顔で充電しながら階段を下りきり、居間へ。居間で待っていた母さんは何も言わず、ただ笑顔だった。
そうこうしているうちに父さんも帰ってきて、食卓に家族がそろう。オレの隣に神様、神様の向かいに母さん、その隣、オレの向かいに父さん。
いただきます、と声がそろう。
箸を持つ手はまだしびれていたけど、それは口に出さない。母さんに冷やかされたり、言葉少なに愛を語る父さんにちょっと引いたりしながら、しみじみと思う。
こういう時間が、きっとずっと続く。というより、続けられる。いつか、食卓につく人数だって増えているかもしれない。いつなのかは、まだ想像もつかないけど、そういう時はきっと来る。
「どうした、琢磨?」
「いや、なんか幸せだな、って」
神様と一緒なら。
最終話を読み終えてくれた君は、ノクターンノベルズで「やさしい角に、たんぽぽを。」を検索してもいいし、しなくてもいい。




