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ベルリク戦記 ー 戦争の生涯 ー  作者: さっと/sat_Buttoimars
第2部:第14章『ぼくらの宇宙大元帥』

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27話「これが粗製魔族の濫造現場か」 ヤヌシュフ

 お湯の中? 手が、見えるような、ないような。

 チンポは? まあいっか。

 目ってあったっけ?

 ……誰だお前? 弱いにおいがする。またお見合いしたいの?

 また? 前にやったか。ちょっと思い出してきた。

 見えるのは、なんかフニャフニャ、流れてきたゴミみたいだから、完全に才能が無い。駄目だなこりゃ。

 すぐまた次が来た。この、脂肪の抜けたおっぱいみたいな、おばあちゃんのおっぱい以下の何か。あっち行けゴミめ。せめて乳首くらい生やして来い。

 ……また誰か来た。

 ”アレオンの山の麓で産まれて、兄弟と姉妹はいっぱいいたけど半分以上死んだ。

 農業用水と飲料水の区別がついていないことがあって、旅行中の医者が来るまで腹を壊して良く死んだ。己もよく下痢をしていたが、他の兄弟より多く食べたら助かった。

 灌漑使用料が高い畑を耕し、山羊を牧畜して生計をたてる。

 村には法典派の学者がいたけど金を払わないと勉強を見てくれなかった。

 父親は早い内に隣の村との水争いで戦死。若い伯父と母が再婚して新しい子供が生まれたら十三歳で家を出された。

 母の実家で農作業を手伝っていたが、家の税払いが滞ってきて食事が出なくなったので盗賊に参加。

 皇帝陛下が兵士を集めているということで、盗賊では将来が無いのでそちらに参加する。

 兵士になって初めて読み書きを習ったが、時間が足りなくて自分の名前を書ける程度。

 辺境の警備につく。狩りは上手いと言われた。

 一度兵役が終わってまとまった金が入る。地元に帰れば結婚出来そうなくらいの金は貯まったが、その地元の村の名前が分からないので帰れなくなっていた。

 次はイバイヤースの軍に参加。術の才能があると初めて言われたのが三十歳を過ぎてから。何に適性があるのか訓練して見出せるらしい。

 ベルシア上陸作戦に参加したのが実質初陣。道中、戦中に魔術が使える人に習うけど難しい。まずは頭の中で三角柱を回してみろって言われたけど分からない。

 フラル半島を北上して、ネーテルロ攻略作戦で勲章をもらう。

 今はエーラン市中を警備中。もっと出世して、次は騎士になりたいかもしれないかも、たぶん”

 お前はそういう奴なのか。最後ははっきりしないのか? おたんちんめ。

 ゴミと違って記憶が流れてきたが、姿がおぼろげ過ぎる。無理に見ようとすると気持ち悪い。頭が締まる。いきなり視力が白内障爺さんになったみたいだ。

 目が覚めるような雑魚の物語だ。死ね。

 烈風……っぽいの。粉砕!

 ……また次、誰だ?

 ”シャフィリー市の生まれで靴職人の息子。

 家の壁は白くて二階建て。市場が見えて一日中話し声がしていた。

 学校に通ったところ、覚えが良いと言われて神学生の道を選択した。

 学業の途中で父が病死。職人の道へ戻るが手に職はついていない。しかし読み書き計算が出来たので、職人仲間達の代筆業を行う。上手くやれていた。

 二十歳になった時にイバイヤースの軍が兵士を召集していて、事務係が必要ということで市の太守に徴用されて従軍。一応銃の扱いは習ったが訓練の時以外は撃っていない。

 新生エーランの首都を本来の位置に戻すということで、少し前に船でフラルにやってきた。気候は悪くないが、戦争跡地ということで何か気味が悪い。家に帰りたい、近所に好きな子がいる。ただ学生だった時にもう結婚してしまったが”

 こいつは若い。己は気付いていないが術の才能が少しある。でも弱過ぎる。戦士ですらない。

 俺は戦士だ。死ね。

 食らえ烈風っぽいの。粉砕!

 ……また次。

 また似たような経歴の奴が連続してやってきた。飽きてきたな。とりあえず粉砕。

 寝呆けていたような意識が覚めてきた気もする。

 ……次はまた、何だてめえ? かなり覚めて来た。

 死んだと思ったらこの赤いゆっくり流れるお湯っぽい何かの中。潮流の緩い海に見える気がする。

 つまんねぇなここ。これが”天”が見ている”風”になった後? どう見ても我々のご先祖が馬でカっ飛ばしているようには思えない、ネチャネチャヌルヌルの世界じゃないか。

 チンポでも弄るかと触ろうとすれば、一瞬触れるが抜ける。身体が液状?

 ……で、また次か。何なんだよもう。


■■■


 はいはい……。

 ”黒の山羊毛皮の天幕育ち。双子だったが一人は産婆が締めたらしい。

 子供の頃は隊商の中継地点で羊の放牧をしていた。規模が小さくて本業じゃないようだ。

 大きくなってくるとその隊商の隊長が親父だということがわかった。

 砂漠の旅を勉強する歳だと言われてから旅に出る。途中で魔術に目覚めて賊や敵対部族を砂の刃で鋸みたいに切り刻んだ。

 二十年もしたら親父が膝を壊して引退し、己が新隊長になった。この頃になると岩塩板じゃなくてもっと北の遊牧民が作ったという武器を運んだほうが儲かるようになる。妻も六人まで増やして余裕があった。

 賊殺しじゃつまらないからもっと、戦場へ行きたくなる。

 更に海を渡って北大陸へ兵隊を運べばもっと儲かるようになった。更に更にフラル半島での輸送をやるようになってもっと儲かった。だが山道に潜んでいた民兵に撃たれて重傷。

 魔族になると重傷も変身と一緒に治るということで今、ここにきた。

 子供ももう三十人はいるし、孫もちらほら生まれている。チンポが使えなくなってもいい”

 は? いつから俺が治療院になったんだよボケが。

《とりあえず構えてみろ》

 相手は意志が弱いのか、この身体じゃない身体、魂か霊体というのか、それがあまり動かない。そもそも手足が生えていない? ポコポコ突起はあるんだが。

 自分は生えているぞ。指もある曲げ伸ばし、上腕内回しと前腕外回しを同時にして力むくらいも出来る。剣の二本だって生やせる。

 しかし気に入らない。力を継承したいとする者が、馬鹿にし過ぎだ。

 自分が魔剣ネヴィザ、言葉は不明だったが彼と対峙した時、互いに構えた時にはこれだ! と感じたものだ。馬みたいなチンポも生えていた。

 俺のも生えているのか!? ああ生えている、これは俺のチンポだ。いや、エレヴィカのチンポでもある。

 エレヴィカはどこいった? あっちは生きているのか。そりゃそうだ。仕事に子育ても、いくらでもやることがあるからな。

《お前のチンポを見せてみろ!》

 何だ、見せてみることもできないのかこの玉無しめ。

 ははあ、これが粗製魔族の濫造現場か。やっとピンときた。

 思い出すぞ、魔剣ネヴィザ継承の前。魔導評議会の偉い人に相手がどんな人物でどんな人生を送り、どのような言葉を使い、何よりいかなる魔術を用いたか。それが自分とどう相性が良いかどうかという話を長く詳しく聞かせて貰った。

 そうか、こういうことだったのか。あちらとこちらで記憶が曖昧になることは多いが分かったぞ。

 侮辱にも程がある。以前なら鼻くそぐらいにしか感じなかっただろうに。お前、俺の何を知っていて、どう愛されようと思ってきたんだ?

 それにお前、魔王軍だな? 決着がついたとは聞いていないぞ。

《烈風》

 死ね。

 次は誰だよ。また魔王軍の兵士か?

 話すのも面倒臭い。すぐ死ね。


■■■


 才能がちょっとありそうな奴を十人くらい殺したら来るのが止まった。

 ここで敵を殺しても何か肉がババンとこない。血がドチャっとならない。つまんねぇ。

 死なず永遠になるって苦し過ぎないか?

 いや、嫌な気分が続かないな。楽だ、酒で丁度良く酔っぱらうより十倍、いや、三倍くらい気持ち良いや。

 なんだっけ?

 そうか、何か来ないとすぐ寝ちゃうのか。でも春秋の、昼に起きた後の二度寝くらい良いな。痒いと痛いとか無いし、鼻詰まりとか歯がざらざらしてるとか、無駄に持て余す朝勃ちも無い。飯もいいや。

 うーん……また次! 誰だ?

 誰、いや、その姿、まるでしっぽのようなそのチンポはネヴィザ!

《また会えるとは!》

 なになに、その切り裂く技が、概念が良いと魔なる神が言っているって?

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― 新着の感想 ―
前回見る限りこれパスできたのがいたのか… 弔い合戦の結果単に回収するのか、ベルリクさんが人間やめてしまうのか
こんな物騒なお見合いマッチングを上手いこと回し続けてきたなんて、魔人代理領ジジババ魔族たちの蓄積ってすげー 思いの外しっかり(?)死なず永遠になるのですね、シルヴがシェンヴィクから受け継いだ辺りを思い…
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