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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
最終章 マッドサイエンティストをやっつけて遊ぼう
3372/3386

19

 アメリカ。貸切油田屋本部。


「やっと大掃除完了だ」


 子供姿のテオドール・シオン・デーモンが、ソファーに腰を下ろして、大きく息を吐く。


 数日前より貸切油田屋内で、原理派の一派がクーデターを企んでいたという報告があった。あまつさえ転烙市とも繋がろうとしていたという話だ。

 クーデターを起こす証拠も抑えたうえで、テオドールは反逆者達を粛清した。最近はテオドール達改革派が、原理派に押され気味になっていたが、ずっと逆転の機を伺い、準備を進めていた次第である。そしてとうとう決定的なクーデターの証拠を押さえるに至った。


「当たり前だが、原理派と改革派の争いは今後も続いていく。我々が一枚岩になることはない」


 テオドールを見下ろし、大幹部の一人であるラファエル・デーモンが言う。


「さて、これで日本により多くの支援が出来るな」


 熱次郎にやっと協力できると意識して、テオドールは安堵と喜びが入り混じった気分になる。だがその一方で、自分の恩人である純子には敵対行為を働いてしまう事になると考えると、胸中は複雑だ。


「正確には日本のPO対策機構に支援できる――だな。それに、もう遅いんじゃないかな」

「こちらが動く前にケリがつきそうですね」


 ラファエルと、テオドールの側近兼世話役であるマリオ・スコットが言った。


「そう言えば日本はうちらみたいな、組織内での内輪揉めはあまり聞かないな」

「ある意味日本は上手くやっている。裏社会を飼いならし、国防にも国益にも繋げているのだからな」


 テオドールの言葉を受け、ラファエルが日本の内情を説明する。


「ヤクザがいた頃からずっとやっていたことだ。犯罪組織がおおっぴらに看板掲げて、商売しているというのに、それを国ぐるみで容認しているのだぞ。上手くやっているのは事実だが、理解に苦しむ国だ」

「理解できれば、我々もさらに上に進むことが出来るかもしれないぞ」


 少し皮肉っぽい口調で語るラファエルに、テオドールは悪戯っぽく微笑みながら、電話をかける。


『ちょっと今……会話しづらい。傍受されているかも』


 電話に出た熱次郎が戸惑いの声を発する。


「これは特殊回線だから多分平気だよ。こっちから支援できるぞ」

『もうラストバトル直前だけど……ちょっと待ってくれ……』


 熱次郎が困ったような声をあげ、しばらく通話を中断する。仲間と相談しているのだろうと、テオドールは察した。そしてこの様子だと、支援は不要と言われそうだとも。


***


 台風の雨脚が強くなっていく。時刻は六時を過ぎ、球場内に電気がつく。


「大木のおかげで、グラウンドにいても雨避けできますね」


 安楽警察署署長の酒井が、合体木の根本に腰を下ろし、穏やかな微笑をたたえて言った。


「端っこは微妙だ。風の向きがたまに滅茶苦茶になるし」

「すでにびしょ濡れだわ」

「パンツの中までぐっちょぐちょですし、雨避けとか今更ですよねー。あーあ、早く帰りたーい」


 梅津と香苗と松本がそれぞれ愚痴る。


「アネモネ、久しいな」


 安楽警察裏通り課に所属するワリーコであるアネモネに、同じワリーコであるミサゴが声をかけた。


「あんたまだ生きてたの。しぶといわねー。しかもPO対策機構にいたんだ」


 アネモネがミサゴを見上げて微笑む。


「実はついさっき来た。外から連絡したら転移された」

「外の様子はどうだった?」


 黒斗がミサゴに尋ねる。


「空間操作封じの結界強化を行っていた也。僕が転移することができた時点で、まだ猶予はあろう」

「ガオケレナによる転移での呼び込みや追放は厄介だからな。それで俺達はこうして中を占拠出来たわけだが」


 ミサゴの報告を聞き、黒斗は得心がいく。


「こっちは雨風凌いでいるが、敵さんはこの嵐の中で屋外待機していやがる。この差は何気に大きいぞ」

「屋内でも休めるしねー。体力の消耗具合も地味に違ってくるよ」


 新居が言い、シャルルが頷く。


「芦屋が来ていやがる。味方だと心強い限りだな。顔は合わせたくねーけど」


 新居の側にいるバイパーが、安楽警察裏通り課の面々が待機している方をチラ見して言った。


「ああ、以前ボコボコにされたんだっけ」

 新居がバイパーをからかう。


「俺も昔安楽警察署裏通り課には世話になりまくったわ。サイモンと一緒にな」


 裏通りで過ごした少年時代を懐かしむ新居。


「バイパーをボコボコにする程なのか。戦闘力インフレすげー」

「俺より強い奴なんてこの場にいくらでもいるだろ」


 感心する李磊に、バイパーが垂れてきた頭髪を指で払いながら言った。


「あのおっさんとかか?」

「超常殺しの旦那か。うーん。どうだろうな」


 新居がオンドレイに視線をやると、バイパーもオンドレイに視線を向けて唸る。正直少し対抗心がある。


(んー? 毒蛇の坊やがこっちを見たようだが、俺を意識しているのか?)


 オンドレイはバイパーの視線に気付いていた。そして対抗心を抱かれている事にも気付いている。


「夜になるのー」

 チロンが雲で覆われた空を仰ぐ。


「逢魔が時だ」

 来夢もチロンに反応して空を見上げ、呟いた。


「えっとー、ガオケレナがDNA書き換えアルラウネ種子を放出するまでの、残り時間はどれくらいですか~?」

「放出を遅らせる薬の投与で、わからなくなってしまったらしいぞー。ガオケレナからもはっきりとした答えが返ってこないとか」


 男治の疑問に、史愉が答えた。


「テオから電話来た。貸切油田屋もそろそろ動く事が出来るとのことだ」


 熱次郎が真に報告する。


「もうほぼ土壇場だし、この時点でどんな協力が出来るんだという話だな」


 現在の状況で、貸切油田屋の支援など要らないと真は感じる。


「日本国内にいる貸切油田屋の私兵を動かして、球場外にいるサイキック・オフェンダーを襲撃できないか?」

「サイキック・オフェンダーに匹敵する戦闘力があるならな。仮にあったとすれば、雪岡の放射線攻撃であっという間に皆殺しだろう。全員放射線耐性付与の施術済みなら話は別だけど」

「わかった。断っておく」


 真の言葉を聞き、熱次郎はテオの支援を断った。


「綾音姉、無事でよかったよォ」

「おかげさまで。父にはこっぴどく叱られました」


 みどりが綾音の姿を見つけて声をかけると、綾音が優雅に微笑む。


「御先祖様は?」

「こちらに転んだとのことですが」


 綾音が球場内を見渡す。累の姿は無い。


「ふん、今やすっかりお馴染みの面々が揃っているな」


 タオルで髪を拭きながら、オンドレイが球場内を見渡す。


「皆で大運動会って感じする。そんな感じしない? 私はします? 楽しくない? 楽しいよね? しかも信頼できる強い人がいっぱいだしさ。これはもう絶対スペクタクル。これからそんな人達と全員で、純子相手にラストバトルなんだから、そりゃ自然と気分もあがるよ。あがらない?」

「相変わらずやかましい娘だ」


 興奮気味にまくしたてる正美の横で、アドニスが吐息をつく。


「ケッ。おっさん、まだ生きていたのか」


 輝明がオンドレイの側にやってきて声をかける。隣には修もいる。


「星炭の当主か。全く背が伸びていないな」

「はあ? 再開早々それ言うか?」


 オンドレイの言葉を聞いて、輝明はやけに尖った犬歯を見せて笑う。


「私別にピアス嫌いじゃないし、背の低い男の人にも変形無いけど言わせて。そんなにピアスいっぱいしてるから背伸び無いんだよ。私女だけどそう思う」

「ピアスも女も関係ねーし、それは根拠が何もねー偏見だろっ」


 正美の意味不明な理屈に、輝明はむっとする。背に関してからかわれるのは諦めているが、ファッションを馬鹿にされるのは苛つく。


「夜か……天使の活動する時刻だ」

「え? そうなの?」


 エンジェルの呟きに、ツグミが反応した。そんな話は初めて聞いた。


「この男の言うことを真面目に取り合わない方がいいよ。何にでも天使に絡めて新しい法則作っていくんだから」

「それはそれで楽しそう」


 マリエが苦笑気味に言い、ツグミが微笑む。


「おい、テル……あれ」


 修が後方を見やりつつ、輝明の肩に手を置いた。


 修の向いている方を見て、輝明、オンドレイ、正美、アドニスは一斉に目を大きく見開いた。

 球場内がざわつく。全員、同じ方向に視線を向けていた。唐突に現れた人物に注目していた。


「ぐっぴゅう……堂々と入ってきやがって」


 スタンド席に一人で現れた純子の姿を見て、史愉が不敵な笑みを浮かべた。


「純姉がここに入ってきたって事は、空間操作封じの結界の強化が完成したって事だろうぜィ」


 真の傍らにいるみどりが言う。


 その純子の方に、一人の少年が片手を軽く上げながら、スタンド席に向かって歩いていく。真だ。片手を上げているのは、手を出すなと訴えている。


「おおっ、相沢先輩が行くっ」

「先輩がタイマンするのかな?」


 晃が声をあげ、十夜が訝る。


「正に縁の大収束に大集結って感じだねー。勇気君とかデビルとか、一部の子はいないけど」


 球場内の面子を見渡し、純子が面白そうに笑う。


(その縁の大収束は僕が作ったんだけどな)

 真が歩きながら思う。


 スタンド席の純子の前まで移動した真が、足を止める。両者、対峙する。

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