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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
97 命と魂を弄ぶお祭りで遊ぼう
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11

 勇気が大量の鉄の栗を放ち、柚は巨大どんぐりを幾つか放つ。

 空中で鉄栗と巨大どんぐりが衝突する。鉄栗と接触した巨大どんぐりは爆発し、他の巨大どんぐりと連鎖爆破を起こし、鉄栗を尽く吹き飛ばす。


「やるな、父上」

「こっちの台詞だ」


 にこにこ笑って称賛する柚に、勇気も不敵に笑う。


「父上もそっちの台詞なのか?」

「そんなわけないだろ」


 柚の台詞を聞いて、勇気の笑みが消える。


「世の中には色んな趣味を持つ奴がいる。いや、この場合嗜好と言うべきか」


 勇気が脈絡の無い台詞を口にして、能力を発動させる。


 勇気の前に、天狗が現れた。しかしただの天狗ではない。天狗の団扇を持ち、錫杖を持ち、翼も生え、鼻も長く顔も赤いが、服装は山伏のそれではない。タキシードを着ている。


「何を思ってこんな能力にしたのか、俺には謎だ」

「これは自分が考えたわけではないという言い訳?」

「うるさい」


 突っ込む鈴音に、勇気は不機嫌そうな顔になる。


 タキシード天狗が柚に向かって飛翔する。


「体術で戦うつもりか? それならそれで付き合ってあげる」


 柚が不敵に笑い、身構える。


 タキシード天狗が錫杖を振るうが、柚は片腕で錫杖を打ち払った。

 微かに体勢を崩したタキシード天狗の腹部に、柚が蹴りを突き入れる。タキシード天狗は体を折り曲げて空中で押し返される。


「あの子、近接戦闘も強いんだね」

「体は人間のそれだと聞いたけど、改造強化されているのかもしれないな。あるいは肉体の強化も、鏡の力か」


 柚の戦いを見て、鈴音と勇気が呟く。


 一方、蟻広の術にかかった真は、完全に戦意を失くしていた。戦わなくてはいけない事を、理屈ではわかっている。しかしその気持ちが起きない。体が言うことを聞いてくれない。


 妖魔銃から生じた臓物が触手を伸ばし、真を攻撃する。


 真は虚ろな眼差しのまま避ける。回避や防御まで出来ないわけではない。しかし攻撃しようという気はどうしても起こらない。


「真がおかしい。ぼーっとして……」

「本当だ。あんな顔滅多に見ない」


 伽耶と麻耶が真の異変に気付いた。


「真が何されているか解析~――敵の術にかかって、戦闘意欲ゼロになってる模様」

「真を蝕むラブアンドピースな心よ、失せよ。猛き心を解き放て~」


 麻耶が解析し、伽耶が真にかけられた術を解く。


 真が虚ろな表情から無表情に戻り、一方で蟻広の顔が曇った。


「おいおい……ポイントマイナス6」


 術をあっさりと解かれて、蟻広が忌々しげに呟き、トレンチコートのポケットをまさぐる。


(何だ? 何をするつもりだ?)

 蟻広の動きを見て、真は警戒する。


 蟻広がポケットの中から取り出したのはガムだった。片手で素早く紙から出して、口の中に入れる。


(あれでパワーアップするとかか? いや……深読みかもしれない。ただガム食べて気持ちを抑えているだけかも)


 いずれにしても、蟻広の動きを警戒して、真は数秒攻撃の手を躊躇ってしまった。


 ガムを噛みながら、同時に呪文も唱える蟻広。


「人喰い蛍」


 蟻広が雫野流のお馴染みの術を行使する。真には見慣れた代物であるし、使われた事もある。そして――


「人喰い蛍」

「えっ……」


 同じ術を用いた真に、蟻広のガムを噛む動きが止まる。真は前世の力――御頭の力を使っているのだが、蟻広が知る由も無い。


 真と蟻広の二人の周囲に、大量の小さな三日月状の光滅が浮かぶ。

 先に光滅が解き放たれたのは、後から術を使った真の方だった。蟻広も少し遅れて光滅を放つ。空中で光滅同士が激突し、相殺されていく。


 光滅の数とコントロールで蟻広の方が上回り、真の方に幾つかの光滅が飛来したが、真は体を捻って巧みに避けつつ、蟻広に銃を二発撃つ。


 蟻広は顔を歪めて崩れ落ちた。銃弾の一発が、腹部を直撃したのだ。しかも防弾繊維を貫き、腹部に食い込んでいる。


「蟻広っ!」


 タキシード天狗と肉弾戦を行っていた柚が、顔色を変えて叫んだ。


「やめて! やめてくれ!」


 倒れた蟻広にとどめを刺そうとした真に、柚は戦闘を止めて悲痛な声で懇願する。タキシード天狗の攻撃の手も止まる。


「やめる」


 真はあっさりと柚の懇願を聞き入れ、銃を下ろした。


「父上、蟻広を助けてくれっ」

「その呼び方やめろと何度言わせるんだ」


 蟻広の側に駆け寄った柚が、血を吐くような声で懇願すると、勇気は憮然とした顔で大鬼の指を出して、倒れている蟻広の側に近付けると、癒しの力を使った。


(ちょっと……そこで勝手に戦闘中断されても困るんだけど。しかもこっちは不利だし)


 その様子を見て、呆れる凡美。


「勝負はついたも同然だな。そこの二人も降参しておけ。そうすれば許してやる」


 ツグミの怪異と交戦中の勤一と凡美の方を向いて、勇気が傲岸不遜な口調で告げた。


「ああ言ってるヨー? どうするネー?」


 悪魔のおじさんが戦闘を中断して、煽り口調で伺う。


「ま、これで決まりでしょ」

 影子も動きを止めて肩をすくめる。


(糞っ……。俺と凡美さんはこの変な奴等に苦戦しまくりだったし、悔しいが、ここは降参するしかない。意地を張っても殺されるだけだ)


 勤一は勇気を憎々しげに睨みながら、変身を解いた。それを見て、凡美も棘付き鉄球を回収し、手の形に戻す。


「よし。素直に従ったから、御褒美だ。感謝しろ」


 勇気が思いっきり不遜な笑みをたたえて言い放つ。


(それにこいつらのこの甘さ……嫌いじゃないとか思っちまってる)


 勇気や真達を見て、勤一は思う。


「勝利?」「助かった」

 伽耶と麻耶が安堵する。


「勇気達のおかげで助かったな」

「うん。二人がいなかったら結構危なかったよ」


 熱次郎の言葉に同意するツグミ。


「御父上。いや、勇気」

「わざと言ってないか?」


 柚が声をかけると、勇気がしかめっ面になった。


「変なこと言うようだけど、戦えて嬉しかった。短い時間だったけど、何ていうか、気持ちを吐きだせてすっきりしたよ」


 嬉しそうに言う柚だが、勇気はしかめっ面のままだ。


「お前のその男と女の言葉遣いが混じっているのは、わざとなのか? どっちかに統一しないキャラ作ってるのか?」

「元が男の喋り方なのだが、現代の女の喋りにしようとしていて、上手くいってない感じ」


 勇気の指摘に対し、柚は照れ笑いを浮かべる。


 意識を失った蟻広を勤一が担ぎ、柚と凡美と並んで撤退する。


「お前に言いたいことがある。もうあんな作戦はやめろ」


 勇気が真に向かって硬質な声で言い放つ。


「お前も止めなかっただろう」

「何だと……」


 冷たく言い返す真に、勇気は険悪な表情になった。突然の仲間割れかと思い、熱次郎と伽耶と麻耶は恐々とする。


「勝つための手を用いる。負けたら何もならない」

「自分達が勝つために、関係無い誰かまでも踏みつけるような手は御免だ」


 真が冷淡な口調で告げると、勇気は沈みがちの声で言い返した。


「それは僕だって嫌だ。しかしそうしなければ自分達が死にかねない状況になっても、お前は拒んで死ぬのか?」

「死ぬかも……な」


 真が少し口調を和らげて問う。すると勇気は真から視線を外してうつむき、ぽつりと言った。


「お前一人で死ぬのは勝手だが、味方も大勢巻き込んで、手は汚さない道を選んで仲良く死ぬ事になってもいいのか?」


 さらに指摘する真。勇気は答えない。


(こいつの言うことの方が正しい。俺はただの安っぽい感情論)


 口には出さないが、勇気は真の考えを認めていた。


(皆で楽しくワイワイ、日々ニコニコで……それだけが俺の望みなんだがな……)


 空を仰いで、勇気は虚しげな表情で思った。

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