表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
96 マッドサイエンティストの玩具箱で遊ぼう
3245/3386

3

 勇気と鈴音は今日もスノーフレーク・ソサエティーの面々と共にいる。


 気配を殺してこっそりと勇気を見張っていたデビルは、勇気を襲いづらくて苛ついていた。彼等と共にいる限り、とてもじゃないが襲撃は出来ない。

 かといって、勇気が単独行動を取った時は、それがまた罠である可能性もある。

 色々な意味でもう無理があるのではないかと、デビルも理解している。しかしそれでもなお、チャンスを伺っている。


(他の誰かと交戦した時こそ、最大の機会)


 純子と対立しているからには、いずれその機会は訪れるとデビルは考えている。


(でも……勇気をずっと見張り続けていても不毛な気もする)


 実はそろそろ飽きてきたデビルである。勇気に執着して付け回すよりも、もっと面白いことがあったら、そっちに移った方がいいのではないかと思い始めていた。


「貸切油田屋に協力を求めちまったか。ティムの暴走の時もそうだったが、あいつらは都市一つ破壊することも躊躇わないし、それが心配だ」


 ジュデッカがにやにや笑いながら、全然心配していなさそうな口振りで言った。


「勇気がいるのに、都市ごと破壊する? 大問題になりそうだけど」


 鈴音が疑問を口にする。


「貸切油田屋っていう組織は、そういう連中だぞ。自分達の正義を押し通すためなら、人の命なんて塵芥程度に吹き飛ばすし、そこにどんな御身分の奴が紛れようとお構いなしだ」


 皮肉たっぷりに言い切るジュデッカ。


「でもね、それならね、純子も何か対策してそうなもんだよね。あの純子が何も考えないわけがないし」

「だろうな。これだけ文明を発展させたのだし、大陸弾道ミサイルも余裕で防げそうなもんだ。そもそもレーザー衛星『月読』もあるしな」


 政馬と勇気が言った直後、ジュデッカが一瞬険しい顔になる。


「何かがいる気配がするな」

 ジュデッカの台詞に、デビルは若干緊張する。


(いや、別人だ。僕は何度も何度も発見されて、隠密スキルを高めまくって、完全に気配という名の電磁波を出さなくする術を身に着けている。僕じゃない)


 今となってはあの忌々しい明智ユダにも感謝したいと、デビルは思った。ユダのおかげで身を隠すスキルを磨けた。


「近くに亜空間トンネル出来てるぞ」


 ジュデッカが指摘すると、空間の扉が開き、白い小人が二人、飛び出してきた。

 イーコのアリスイとツツジだった。


「お前等か」

「わあ、お久しぶりー」

「君達も来たんだ」


 勇気が呟き、鈴音と政馬は嬉しそうな笑みを広げた。


「お久しぶりです」

「おっひさーっ、政馬はちゃんと元気にしてましたかー」

「あんた達、転烙市の情報が公表されてそれで来たん?」


 挨拶するツツジとアリスイに、季里江が尋ねる。


「違います」

 ツツジが小さくかぶりを振る。


「オイラ達はつい三週間くらい前から、調査しに来てますよっ。でも、ここで見たこと聞いたこと全て、外に報せることが出来なくて困っていました」

「私達より長いね」


 アリスイの話を聞いて、鈴音が意外そうな声をあげた。


「PO対策機構と転烙市の戦いも、知ってはいましたが、巻き込まれないようにしていました。でも、政馬がいることを知って、心配になって会いに来ました」


 腰に手を当て、何故かドヤ顔で言うアリスイ。


(イーコか。僕の大嫌いな連中だ。もうここにいたくない)


 こっそりと立ち去るデビル。


「で、何しに来たんだよ?」

「だから調査ですってばー。イーコ達の間でも噂になっていましたし。イーコ的にも放置できない問題という事になってましたし」


 ジト目で問う勇気に、アリスイが答える。


「そうか。でももう帰った方がいいぞ。ここは危なくなる」

「転烙魂命祭で何かあるんですね? 私達にも出来る事はあると思います」

「そうですよー。政馬のお世話とかはお任せください」


 勇気にすげない態度を取られても、ツツジもアリスイも引き下がらなかった。


***


 勇気を観察していたデビルだが、だるくなって離れて、純子の元を訪れた。ある目論見があった。


「んー? 何の用?」


 ラボで一人で作業を行っていた純子が、デビルに声話かける。


「クローン製造をしているとCMで見た。作って欲しいクローンがある」

「じゃあクローン製造工場に作って欲しい人の細胞を持っていって。ただ、時間かかると思うよー」


 デビルが要求すると、純子はあっさりと承諾する。


「時間はかからない方がいいけど、どれくらい?」

「二週間以上はかかるかなー」

(遅い……)


 純子の答えを聞いて、デビルは絶句した。それでは祭りも終わってしまう。できれば祭りが始まる前か、祭りの最中辺りには、クローンを使って遊びたい。


「不完全でもいいならすぐにも出来るよ。すぐ死んじゃうような体で、知能もろくにない代物になっちゃうけど」

「それでいい」

「じゃあ話つけておくよ。どんなクローンがいいの?」

「かくかくしかじか」


 デビルがリクエストをすると、純子は一瞬だが苦笑いを浮かべていた。


「あのさ、デビルは文字通り悪魔なんでしょ? 私に力を貸してくれない? これの引き換えってわけじゃないけど」

「僕が? どうして?」


 純子に加担したい気持ちはあったが、天邪鬼であるデビルは、面と向かってお願いされると断りたくなる。


「いい所まで手助けして、そのいい所で裏切って背中を押して奈落に突き落とすのが、悪魔なんだから、こういう時は力を貸してくれるものじゃない?」


 喋ってから、純子ははっとした。デビルも目を丸くする。


(何でだろう……。これは既視感か……?)

(あれ? 何か私懐かしく感じるなあ。ずっと昔に同じような台詞言った?)


 デビルと純子、二人して記憶を掘り返すが、思いだせない。


「真はどうして君に盾突く?」

 デビルが話題を変える。


「んー……それを話さなくちゃいけないのー? 私の口から勝手に話すのは……」

「興味がある。君が話さないなら、真から聞いてもいい。」

「そんなこと尋ねるってことは、私の方に心が傾いている? 迷ってる?」

「4:6が8:2くらいにはなっている。自分でもそうなった理由はわからない」


 何故か気恥ずかしさを覚えながら、デビルは心情を吐露する。


「僕は君と昔、素敵な時間があったらしい。友達だった?」


 さらに気恥ずかしさが増しながらも、疑問をぶつけるデビル。こうして純子と向かい合っているだけで、満たされるような感覚がある。


「うん。何回か一緒に遊んだし、私は友達だと思っていたよ」

「そうか」


 屈託の無い笑顔で答える純子に、珍しくデビルも微笑んでいた。しかしその表情の形は、表面上は全く見えない。


「悪魔と友達になるなんて、変な子供だったんだね」

「うん、まあそれはそうかもねー」


 デビルが指摘すると、純子は照れ笑いを浮かべる。


(死ねるチャンスはあったのに、この子を想って、僕は死を拒んだ。それならやっぱり、僕はこの子についた方がいいはずだ。僕がそう望んでいる)


 勇気との戦いの時、デビルは全てを諦め、投げ出しかけた。もう死んでもいいし、死ぬにはいい機会だとすら思った。死を受け入れかけた。引き留めたのは、頭の中に出てきた幼い姿の純子だ。

 デビルが最も信じて慕っているのは犬飼だ。しかしその犬飼のことを思い浮かべる事は無かった。思い浮かんだのは、見た事も無い少女の幻影。その正体は今、純子の口からはっきりと告げられた。


 犬飼とも睦月とも勤一や凡美とも違う形で、デビルは純子に惹かれている。


(でも――誰かの夢に従い、協力するなんて僕らしくないと、天邪鬼な僕は拒んでいる。せめてあともう一押し、何かあれば……)


 デビルには純子に与したい気持ちは確かにあるが、現時点ではどうしても踏み切れなかった。


***


 ヨブの報酬の精鋭部隊ヤコブナックルの一員、モニカ・イグレシアス。彼女は今、転烙市のあちこちで、とある作業を行っている。


 モニカのすることは極めて単純だ。見つかりづらい場所に、規則的に宝石を置いていく。そして陣を張る。

 ただの宝石では無い。全てに力が宿っている。ヤコブナックルのリーダーであるライ・アジモフが力を込めた宝石だ。定められた位置に世知するだけで、陣が張られ、その陣が結界の支柱となる。張られる結界も、陣と呼べる。つまりは小さな陣を各地に作って、巨大な陣を形成するようなものだ。


「そこの怪しい女~、何やってんの?」

 裏路地にいるモニカに声がかかる。


 声のした方に振り返ると、数人の男女がいた。


「こいつがビンゴかなあ~? 陣を張ってるとかどうこう言われてたけどさァ。何か宝石みたいなの置いて、それっぽく見えるし~」


 中央にいる、ボーイッシュな服装の目の下にクマのある少女が、妙にねちっこい口調で喋る。転烙ガーディアンの泡崎一華だ。


「そろそろ来ないかなあって期待していた所よ。誰にも見つからなくて暇してたんだよね」


 モニカが不敵に笑い、殺気を放つ。


「随分と自信あんのねぇ。この人数相手に余裕吹かしてられ……」


 一華の台詞は途中で止まった。両隣にいた男が、それぞれ一人ずつ、崩れ落ちたからだ。


 一華は沸き起こる恐怖を押し殺しながら、倒れた男二人に視線を素早く走らせる。二人共、頭部と股間から出血していた。


(股間から頭にかけて貫かれた? それとも頭から股間にかけて貫かれた?)


 外傷からはそう判断できる。不意打ちをかけられて気付かぬうちに殺されていた。そうなると、上らの攻撃より、下からの攻撃の方が気付きづらいと、一華は判断する。


 一華がモニカに視線を戻そうとした瞬間、一華は見た。二人の男から流れ出る血が、高速で盛り上がる様を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ