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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
95 祭りの前に遊ぼう
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4

 月那美香とクローンズが転烙市に到着してから二日が経った。


『転烙魂命祭で販売される目玉商品第二弾! それがこちら!』


 ホテルの一室で、情報収集目当てに転烙市のローカルテレビを見ていると、そんなCMが流れてきた。


『新発売の念動力手袋! これさえあれば、寝たままで遠くの物を……ほーら、この通りっ! ゲームしながらでも、こうして持ってこれる!』


 寝たまま、部屋の本棚に置かれた本を念動力で撮って運んできたり、ゲームしながら戸棚に置かれたお菓子を取ってきたりする映像が流れる。


「着せ替えボックスもそうだが、やたらと横着していく物が多いな!」

「でもさ、文明の発展て、そういうものじゃない?」


 美香が呆れて叫び、十一号が冷めた表情で意見する。


「そうかもしれんが露骨だ!」

「いっひっひっひっ、あたしは好きだぜ~。こうやって怠惰になっていく世界。最高じゃん。純子はわかってるよ~」


 ストローを咥えてへらへら笑う二号。


「まったくだにゃー、このストローとか最高だにゃー」

「それは何だ!」


 七号もストローを咥えて笑っていたので、麻薬の類かと疑い、七号と二号の口からそれぞれストローを奪う。


「色んな成分と味が絶え間なく流れ込んでくるストローらしいです。カフェイン、糖分、アルコールをミックスしたような刺激を与えますが、すぐに体内では分解し、肉体的に悪い効果はほぼ無いとか。依存性も無いという話ですね。連続で使用すると飽きるように出来ているとか」


 十三号がストローの一つを取って、小さく振りながら解説した。


「純子らしい細かい気遣いとも言えるな!」


 敵に回っても、他者への配慮の心は忘れていない純子に、少しほっとしてしまう美香であった。


 部屋の扉がノックされる。

 警戒したが、訪れたのは来夢と克彦とマリエだった。


「俺達の担当決まったよ。俺達は美香達と組むことになった。頑張って任務を遂行しよう」


 来夢が報告する。


「応! ……って、意外だな! どうした!? 一切悪口言わずにポジティブとは!」

「克彦兄ちゃんとマリエと怜奈が、一緒に仕事することになったんだから、喧嘩売るような言動禁止って、三人がかりで……。だから我慢する。何か言いたいことがあっても仕方なく我慢する。ストレスで魔が押し寄せて破裂しそうになっても我慢する」


 美香に驚かれ、来夢は気恥ずかしそうな微笑を浮かべて、理由を述べた。


「我慢なんてしなくていいってー。うちのオリジナル相手にそんな気遣いいらんいらん。あ、あたしには気遣いしてねー。あたしは豆腐メンタルだから」

「心臓に剛毛生えている分際で何を言うか!」


 二号が呑気な口調で言い、美香ががなる。


「マリエさんとは仲が良いんだな! いつも連れてきている!」

「別に仲良くはないよ。あたしはこの子に振り回されてうんざりだよ」


 美香が言うと、マリエは疲れ顔で肩をすくめた。


「マリエは将来俺の嫁にする予定だからね。なるべく連れ回す」


 来夢が言い切る。美香も他のクローンズも言葉を失くす。


「あんたは本当よくもまあ臆面もなく、そういうこと人前で言えるもんだよ。最早感心するわ」


 大きな溜息をつくマリエ。最早怒る気にも、否定する気にもなれない。


「しかしよほど来夢はマリエさんのことを好きなんだな!」


 上手い言葉が見つからず、スレトートに言う美香。


「恋心とかそういうんじゃないけどね。顔の造詣が好き。体つきも好き。エロい」

「あんたねえ……」

「エロいと言っても、来夢には性欲も無いから、本当にイヤらしい気持ちで言ってるわけじゃないから、マリエさん気悪くしないで」

「そうだったのかい?」


 憮然としかけたマリエであったが、克彦の意外な言葉を聞いて、少し興味が湧いた。


「そうだよ。性欲という概念は空っぽ。俺には性別無いし、性器も無いから。芸術感覚、美的感覚として、エロチシズムを感じるかどうかなんだよ」

「それなのにエロ発言ばかりしてるのはどうなんだい?」

「だからこそ! ではないか!? 自分に無い物だから過剰に意識している!」


 マリエが口にした疑問に対し、美香が私見を述べる。


「そうかもね。AVとか視るのは楽しいけど、きっと普通の男の人の鑑賞の仕方とは根本的に異なると思う」


 寂しげな顔つきで言う来夢に、室内にいた者達は言葉を失くした。


***


 バイパー、桜、つくし、ミルクの四名は、転烙市を訪れてからというもの、連日転烙幻獣パークに通っている。動物園や水族館が大好きなミルクが、ここをすっかり気にいったせいだ。


「そう言えば今建設中の空中カフェさあ――」


 パーク内を歩いていると、立ち話中の中年女性達の会話が耳に入って来た。ミルクはバイパーが持つバスケット内で聞いていた。


「空中にお店とか……怖くないかしら? もし事故が起きて落っこちてきたらと思うとねえ」

「それでも人は集まるでしょうし、反対しても作ってしまうでしょうよ。今の転烙市はそうなってしまったの」

「どんどん変わっていって、ついていけないわ」

「でもここでの便利な暮らしを捨てて、他所に行くってのもねえ……」

「若い子達ははしゃいでるけどね」

「うちの子も今の流れに歓迎してるけど、どんどん贅沢になっているみたい。何だか心配だわ」


 パーク内での井戸端会議は、転烙市の変化をあまりよい風に思っていない論調であった。


「なあ、ミルク。転烙市に来てからいまいち元気ねーよな」


 中年女性達から離れた所で、バイパーが声をかける。


『そう見えるか?』

「私にはわからなかった」


 ミルクが心なしか自虐的な声を発する。桜はきょとんとした顔でバスケットを見る。


「お前は注意力と観察力乏しいのな。普通男より女の方がそうしたもん優れている気がするけど」

「えー、何それ。ひどいなー……」


 バイパーに言われ、桜は頬を膨らます。


『純子が作ったこの転烙市に圧倒されちまって、敗北感みたいなもん感じているですよ。悔しいってのが正直な気持ちだ。三狂だなんて言われて同列視されていたけど、現時点で大きく引き離されちまったわ』


 沈みがちな口調で、ミルクが心情を吐露する。


『それと同時に、リスペクトの念も抱いちまってる。すごいことやってくれたなと称賛したい気持ちが私の中に生じちまってる。認めざるをえなくて、それが悔しい。そして憧れるし……あいつと一緒に、世界を変えていきたいってい気持ちまで、ちょっとだけ湧いちまってるんだ』

「ちょっと……今更……」


 ミルクの話を聞いて、桜は顔色を変える。桜としてはそれは大反対だ。


『もちろんそんなことしない。私のプライドが許さないし、あいつの目指す所は私の目的とは違う。でも、それが出来たらどんなに楽しいかと……どうしても意識せざるを得ない。きっと多くのマッドサイエンティストはあいつに賛同しているだろうし、現時点で協力している奴等も多いはずです』


 そして時間の経過と共に増えていく可能性や、あちこちに声をかけてスカウトし続けている可能性も、ミルクは考えていた。


『史愉は馬鹿だから、純子への対抗心一色で染まっている。少しあいつが羨ましいわ』

「三狂のもう一人、霧崎剣はどうなってる?」


 バイパーが尋ねる。


『動きが見えない。特に変わった反応もアクションも見せていない。あいつの性格を考えれば、今回の純子のやり口には賛同しない気もするが……』

「三狂という呼び名がついていることが不思議なほど、マイマスターや雪岡純子と比べ、良識を持ち合わせた方であります」


 つくしが口を挟む。


『ふざけんなヴォケガ。女を半裸にして馬代わりや椅子代わりにし、最終目的は全宇宙中全てを女体にするとほざくあいつのどこがまともだ』


 ミルクが反論した直後、バイパー達は足を止めた。見覚えのある、真っ白な魔女の衣装を着た少女が、うつむき加減の浮かない顔でベンチに座っていたのだ。

 白禍ホツミだった。


「惑星グラス・デューで見た顔だな。雪岡純子達と一緒に、ラストバトルに現れた奴だ。ああ、それと貸し物競争の際にも、雪岡純子についていたな」


 目立つ格好をしていたので、バイパーは覚えていた。


「可愛い格好してるけど、何か暗い顔してやがるな。前見た時はもっと明るかったような」


 ホツミを見て、訝るバイパー。


『純子の有力な駒がのこのこ現れたんだ。ここでぶちのめして戦力を削いでおこう』

「えー、何か嫌だ。可哀想」


 ミルクの提案に桜が拒否する。


『お前の頭が可哀想だし、そんなお前と行動を共にしている私の方が可哀想だっ』

「むっかーっ。それを言うなら口の悪い猫にムカつかされてばかりの私の方が可哀想ですからねーっ」


 ミルクと桜の言い合いは無視して、バイパーがホツミに近づいていく。


「おい、俺達のこと覚えてるか?」

「あ……うん、覚えてるよ? ひょっとしてPO対策機構についてる? ここでは争い起こしてほしくないな。それに……私、今、誰かと戦うとか、そんな気分じゃない」


 バイパーに声をかけられ、ホツミが顔を上げて、沈んだ口調で言う。


「何があったの?」

「友達が死んじゃって……殺されたの……」


 桜の問いに、ホツミは再びうつむいて答えた。


「仇を取ってくれるって言ってたけど、私はそんな気分には……」

『純子がか?』

「今の声は……」

『まあお前になら姿を見せてもいいだろう。ここだ』


 バスケットを開けて、白猫の姿を晒すミルク。


「にゃんこが喋ってるの?」

『これでも妖術師で科学者なんだぞ。純子とは腐れ縁だ』


 目を丸くするホツミに、ミルクが告げた。


「仇を取ってくれるって言ったのは純子ちゃんじゃない。別の知り合い。貴方達、PO対策機構の人達なら、ひょっとしたらあの子とも知り合いかな? しかもこの国の支配者で、有名人だし」

『勇気かよ』


 ホツミの人場を聞いて、ミルクは呆れ声をあげる。よりによってここでその名が出てくるとは思わなかった。


「やっぱり知り合いだったんだ」


 何となくそうではないかと思った次第のホツミであった。


「殺した奴はわかってるのか?」

「デビルとか言ってた」


 バイパーに問われ、ホツミは答えた。

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