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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
91 超常犯罪組織と遊ぼう
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19

 ミルメコレオの晩餐会のアジトの一室にて、大丘はとある施設に映像と音声を繋げて喋っていた。


「ぽっくり市へと送られた貴方達は、これから重要な使命を果たす役割があります」


 穏やかな口調で、柔らかい声音で、優しい表情で、大丘は語りかける。

 意識して作っているわけではない。昔からこうだ。大丘の内面が出ている。彼はとても温和な性格だ。殺意が生じた時も、優しい気持ちのまま、穏やかに実行する。出来るだけすぐに実行する。


 大丘の目の前のホログラフィー・ディスプレイには、大勢の青少年が並んで座っている。向こうも画面越しに大丘の顔を見ている。

 彼等はミルメコレオの晩餐会が、西へと送った者達だ。


「貴方達は世界を変える使命を帯びたのです。選ばれた栄誉ある者達です。貴方達は今の歪んだ世界を正すために頑張ってほしいのです」


 何とも怪しい台詞であると、自分で喋りながら大丘はいつも思っている。だがこれらの台詞に嘘は無いと、大丘は信じている。


 西に送った者達を安心させるために、時に指導するために、大丘はこうして定期的に声と映像を送っているが、彼等を騙しているわけではない。これは本当に世界を変えるためのプランだ。そしてこれは彼等への鼓舞であり、指導でもある。

 西に送った者達の問いかけは返ってこない。一方的に大丘が喋るだけである。


 一仕事終えて、部屋の扉を開ける。


「お疲れ様だ。プラス4ポイント」


 部屋の前で待っていた神産巣蟻広かみむすびありひろが声をかける。木島柚もいる。


「あんたのおかげで、西に送られた奴等も安心している。大したもんだよ」

「西に送った者達の面倒まで見ることになるとは、中々人使いが荒いですね」


 皮肉めいた称賛を口にする蟻広に、冗談めかして言い返す大丘。


「お前はPO対策機構と戦わないのか?」

 柚が問う。


「戦いますよ? できれば貴方達の手も貸りたい所です」

「俺はてっきり戦わないかと思ったがな。あんたはこの組織の人間というよりも、西の者だろう?」

「だからこそです。今のうちに出に来る限り、PO対策機構を弱体化しておきたいのです」


 にっこりと笑って口にした大丘の台詞を聞き、蟻広は眉根を寄せた。


(こいつはとんだ狸だ。ミルメコレオの晩餐会はそのための捨て駒か? 気に入らないやり方だ。マイナス4)


 元々大丘に不審感を抱いていた蟻広であったが、この時点で嫌悪感も抱くようになっていた。


「PO対策機構の集結場所に兵士を送ったはいいが、ここにいるサイキック・オフェンダーの全員を投入はしなかったんだな?」


 蟻広が確認する。


「伏兵の可能性もありますからね。全戦力の投入は出来ませんよ」


 そもそも全戦力の投入など、そんなことは容易にするものではないだろうにと、大丘は思う。


「奴等は本気でミルメコレオの晩餐会を潰しにかかりにきている。中途半端に突っつく真似をしていたら勝てないだろうに」

「そうかもしれませんね。しかし、どちらかが全滅するまで戦争する必要は無いでしょう? それとも、PO対策機構の力を削るために、ミルメコレオの晩餐会が全滅するまで戦ってほしいのですか?」

「いや……」


 大丘が穏やかな表情のまま確認すると、蟻広は鼻白んだ。


(俺の読み違いだったか。マイナス4は取り消しておく)


 蟻広は大丘が、ミルメコレオの晩餐会を使い捨ての駒にするつもりだと思ったが、そういうつもりではないようだと、認識を改める。


***


 真が市民センターの建物の中に戻った瞬間、市民センター前の駐車場が閃光で包まれ、強烈な破裂音が鳴り響いた。


「グレネードマシンガンの後にスタングレネードかよ……」


 輝明が耳を押さえ、顔をしかめて呻く。


(よしよし、うまくいったな。ひるんだ所にダメ押しって奴だ)


 ほくそ笑む新居。


「おい! お前等! 今だ! 敵が無力化した今のうちに全員突っ込んで皆殺しにしろ!」


 新居が大声で命じると、PO対策機構の兵達は一斉に市民センターの外にと踊り出て、倒れているミルメコレオの晩餐会のサイキック・オフェンダー達を、一方的に殺害していく。


「最初からスタングレネードぽいぽい投げまくるとか、グレネードマシンガンだけで殲滅とかじゃダメなのか?」


 輝明が疑問を覚えて、新居に尋ねる。輝明はとどめを刺す作業に参加する気は無かった。戦闘不能の敵を殺す作業で無駄に力を使いたくない。


「初っ端からスタングレネードだけ投げまくっても、防がれちまう可能性あるだろ。それでなくても相手は超常の能力者ばかりなんだし、何してくるかわからねー。グレネードだけで押し切れるわけでもない。敵が何してくるかわからねー能力者だらけの時点で、すぐに対策を講じられる可能性もある。だからこその二段構えだ。グレネードの連続攻撃で敵戦力を奪って、ひるませて動きを止めた所に、さらに動きを止めるスタングレネードで、防御や対策の暇も与えずに全員フリーズ、と。シンブルでありながらよく考えてある手。うん、流石俺」

「ケッ、またニーニーの自画自賛タイムだ。」


 早口で解説する新居に、輝明が小さく息を吐く。そして新居の理屈も、わかるようでわからなかった。


「ただいま」

 ツグミ達のいる場所に戻ってくる真。


「おかえり。先輩大胆なことするね」

「ジャッププ~」


 真とアンジェリーナが迎える。


「傭兵時代も似たようなことやらされた。追い詰められた時にな」

 そう言って真は、新居を一瞥した。


 その後、ほぼ一方的な殺戮が続き、あっさりと決着がついた。


「まだ少し生き残りがいるか?」

「いましたけど逃げちゃいましたよう」


 鋭一と優が言う。


「こっちは敵が来なかったぞー。暇だぞー。ぐぴゅ」

「うわ、こちらの犠牲者も多いですね~。私達もそっちで戦うべきでしたね~」


 史愉と男治が戻ってきて言う。


「だからさー、こいつを大量に用意して、ぶちこみまくればそれで済むんじゃねーの?」


 輝明がグレネードマシンガンを見て言う。


「街中でこれをぶっ放す許可を取るのも大変だったんだぞ。悦楽の十三階段の連中、俺ともう一人以外の全員が難色示しやがってよ。まあそれが一番手っ取り早いんだがな。ミルメコレオの晩餐会のアジトだってわかっているんだから、ロケット抱くだのグレネード弾だの撃ち込みまくればいいんだ」


 新居が口にする、もう一人の賛同者とは真だったが、当然ここでは口にしない。


「戦闘はこちらの勝利だな。犠牲は……思ったより出ちまった。こっちが攻め込む前に、戦力ダウンだ。おまけにとっておきの自動擲弾銃も、いきなり使っちまったしなー」


 渋い表情になる新居。


「弾はまだ残ってるんだよね?」

 修が尋ねる。


「残っているけど、知られちまったから対策立てられそうだぜ。ただのドンパチする戦争じゃないから面倒臭え。何しでかすかわからん超常の奴等が相手なんだから、手持ちのカードがどんなに強くても、カードは出来るだけ伏せておいた方がいい」


 新居が喋りながら電話をかける。


「裏通りの子飼いの病院に、救急車は手配した。戦闘不能の負傷者は連れていってもらう。無事な奴は予定通り、これからミルメコレオの晩餐会のアジトに攻め入るぞ」


 電話を終えた新居が、一同を見渡して告げた。二階にいる者達にも連絡を入れる。


「次はこの二人を前に立たせた方がいい。二人共かなりの強力な能力者だ」


 真が史愉と男治を親指で指して言った。


「ぐぴゅぴゅうう……それは構わんが、皆殺すのはやめろッス。あたしはサイキック・オフェンダーの生体を、実験台として確保しにきたってのに、皆殺しちまいやがって……」

「全くですよ~。とほほ~」


 史愉が憮然とした顔で文句を言い、男治も市民センター前に転がる夥しい数の死体を見て、肩を落としていた。

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