表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
90 欲望の赴くままに遊ぼう
3072/3386

21

 四台の軍用ヘリの眼下には、浜名湖が広がっている。


「たった四人のために物々しいと言いたい所だが、奴等は全員糞強い能力者だから、数で押すしかねーわけか」


 窓から湖を眺めながら、ミランが言った。


「つーか、いつまでこうしてお空の上にいるんだ?」

「今、ターゲットの位置を探しているらしいわん」


 ミランが問いかけると、キャサリンが答える。


「生体情報は取得してるんだろ? 超常の力で探れないわけ? あるいは人工衛星で探索とかは?」


 次々と疑問をぶつけるミラン。


「生体情報の時点で後者は無理ですよ。特殊な監視装置に反応します。超常の力による探知は、ガードされてしまっているようです」

「しかし超常の力で、監視装置の生体情報キャッチは防げないわけか」


 テレンスが答え、ロッドが言った。


「だからこそ相手も苦労して逃げているわけだ」


 ミランが皮肉げに言った所で、ヘリが降下しだした。


「見つけたのか?」

 ロッドが立ち上がる。


「それならまずこちらに報告があるはずです。どうして何の報告も無くいきなり降下しているのですか?」


 テレンスが操縦席に声をかける。


「オフィスからの指示です。見失ったという判断に至りました。どの監視装置にも引っかかりません。この地形では、通れる場所は非常に限られていますし、他の面々と一度打ち合わせをした方がよいと」


 PO対策機構の操縦士が、少し戸惑い気味に答えた。


「確かに湖にかかった橋の上を通らないのなら、大きく迂回するか、泳ぐしかないわね。私もあの湖で泳いでみたいわ~。泳ぐのは得意なのよ~」

「その脂肪は水より軽いのか? すぐに沈むイメージしか無いんだがな」


 キャサリンが声を弾ませると、ミランが揶揄した。


***


 湖畔にある広けた場所に、最初に降りた軍用ヘリは、プルトニウム・ダンディーを乗せたヘリコプターだった。


「ここまで来て見失うなんてね。何のために来たって話だい」

「それ以前はちゃんと追跡出来てたのか?」

「天使の足跡は、おぼろげながらにあったらしい。しかし突然途絶えたとか」


 マリエ、克彦、エンジェルが言う。


「他のヘリも皆降りてきた」

 来夢が言いつつ、ヘリを降りる。


「今のうちに給油します」


 と、操縦士が報告する。来夢以外の面々もヘリの外に降りた。


「亜空間トンネルを通ったという可能性は無いですか?」

「サルバドール吉川は転移能力持ちだけど、そんなに長い亜空間トンネルを作れるなら、逃げることにも苦労しないだろうし、こちらは追い切れないんじゃないかな」


 怜奈の疑問に対し、克彦が私見を述べた。


 クローンズと義久もヘリから降りてきた。自警団の面々も降りる。しかし美香の姿は無い。


「本当に見失ってしまったのか!? そもそもちゃんと位置を把握していたというのか!? おかしいじゃないか! まだ来てないだけなんじゃないのか!? 何故ここにはいないという判断を下したんだ!? 誰が!?」

「オフィスがそういう判断をしたのです……」


 ヘリの中で苛立たしげに叫ぶ美香に、ヘリ操縦士は困ったように答えた。


「遠視能力者や予知能力者による曖昧な判定ですから。それも妨害されまくっていたので、追跡は困難とのことでした」

「そいつらは、ターゲットの場所をしっかり特定できないのに、いないってことだけはわかるのか!」

「美香ちゃんさ、その人にクレームつけても仕方ないでしょ」


 皮肉る美香を、ヘリの中に戻った義久がなだめる。


「とうとう美香はクレーマーになっちゃったんだ」

「黙れ!」


 くすくす笑ってからかってくる来夢に、美香は腹立たしさ全開で怒鳴った。


 最後に海チワワの面々も降りてきた。


「相変わらず太り過ぎ。何でダイエットしようとしないの?」


 キャサリンを見るなり、来夢がうんざりした顔で問いかける。


「ちょっとっ、またそれを言うの? この脂肪には意味が有ると、もうわかったでしょう?」

「ベルーガがどうのこうのと言って、嫌な気分にさせてくれたことは覚えている。思い出して今もムカムカしてきた。ベルーガを辱められている気分。俺、ベルーガ好きだし」


 互いにむっとした顔になるキャサリンと来夢。


「おお、テレンス久しぶり」

「おやおや、高田さんじゃないですか」


 義久とテレンスが再会し、互いに頬を綻ばせる。


「取材ですか?」

「ああ。A級指定のヤバいサイキック・オフェンダーを追跡しているっていうんでね。取材させて貰っているよ」

「いい記事は書けそうです?」

「現時点では苦しいなあ。いい記事を書かせてくれよ。テレンスが捕まえてくれたら、いい記事になるぜ」

「頑張りますよ。最近で言えば、『ミルメコレオの晩餐会』――汚山悪重の悪事について色々と書いていたようですが、大丈夫でしたか?」


 笑顔で話していたテレンスだが、真顔になって義久のことを案じる。


「大丈夫じゃなかったよ。しつこく狙われた。だから今はこうしてPO対策機構にべったりくっついて、身の安全を計ってるわけさ」


 義久が苦笑していかつい肩をすくめた。


「『ミルメコレオの晩餐会』……サイキック・オフェンダーを集めて作った犯罪組織か。PO対策機構とはかなりやり合っている間柄だな」


 二人の会話を聞いて、克彦が呟く。


「優達が一度派手にやりあったって言ってた。勝利はしたけど、犠牲も相当出たって」

「ボスが相当なろくでなしって聞いたね」


 来夢とマリエが言う。


「マリエも昔は魔が差して相当なろくでなしになってたけど、改心してよかったよ」

「うるさいよ」

「マリエは天使の加護を失ったわけではなかった。心の中に天使が残っていた。それが大きい」


 来夢がからかい、エンジェルは微笑みながらフォローする。


「我々はどうするのだ!?」

「しばらく待機して欲しいとのことです。目下、情報収集に全力で当たっているとのことで」


 一方、相変わらず苛立ち気味の美香が問うと、操縦士は困り顔で報告した。


***


 車で北に向かう勤一、凡美、吉川、ユダの四名。


「あれから一時間経ったけど……大丈夫そうね」

 しきりに後方を伺っていた凡美である。


「ヘリが追ってくる気配は無いな」

「スリルいっぱいですねー」


 勤一とユダが言う。


「明智がいてくれていつも助かっている。こいつは遠視能力者の力を妨害することも出来るからな」

「いえいえー」


 運転席の吉川が言うと、ユダは照れ笑いを浮かべる。


「メールだ。他のサイキック・オフェンダーからだ」

 勤一が硬質な声を発して報告した。


「知り合いか? それとも仲間か?」

 吉川が尋ねる。


「仲間ではないが、知り合いだ。俺達の状況を知り、手助けしてやらなくもないとのことだ」


 明らかに乗り気ではない口調の勤一。


「助っ人に来てくれそうな人だといいんですけどー。期待しちゃうんですけどー」


 ユダが期待する。


「実は以前二回会っただけだ。しかし俺の状況を知っているうえに、助っ人に来てやってもいいと、横柄な言い方をしている」

「横柄な言い方ってことは……汚山悪重?」


 凡美も知る人物だった。勤一が嫌そうにしている理由と、横柄な言い方の時点でわかった。


「そうだ」

「何だと……」


 勤一が頷き、吉川が険悪な声を発し、ユダは蒼白な顔になって震えだした。


「どうしたの? 明智君」


 凡美が尋ねたが、ユダは震えたままで答えない。まるで凡美の声も耳に入っていないようだ。


「そいつは論外だ。来なくていい」

 吉川がきっぱりと拒む。


「何かあったのか?」

「以前、孤児院で明智を虐待していた奴だ。俺とも面識はある」

「わかった。断っておく」


 吉川に言われ、勤一は断りのメールを返した。


「すまないな。戦力としては心強いだろうが」

「いや、いい。気にするな」

「私もあの男は嫌いだから、呼ばなくてほっとしたわ」


 申し訳なさそうに吉川に、勤一と凡美は明るい声で言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ