第八十七話・そんなんでお金を払ったのかと言われました
「ぼられる」「ぼったくり」 とは、法外な料金を取られることをいいます。語源は大正時代にわが国で起きた米騒動から来ているそうです。お米がどんどん値上がりして品薄になる。昔はパンなんてありませんからね。お米は庶民にとって生命線に等しいものです。買占めや売り惜しみがおこり、暴動が起きて米問屋が打ち壊されたりしました。日本には暴動なんてないと思いたくても結構残っていますね。将軍への直訴も百姓一揆もあって調べると涙なしに読めないです。ともかく、 ぼうり ⇒ ぼうる ⇒ ぼる、ですね。
もっとわかりやすく書くと、何もわからぬ相手に対してこれ幸いと、百円のものを千円で売りつけることです。あとで損したとわかった買い手が「ぼられた」 と嘆くわけです。
私も相場を知らなかったこともあって、家事代行業者の言いなりにお金を払ったら、表題の通りのことを言われました。でも払ってしまったものはそのまま。返金までの手間暇を考えると躊躇する。結局嫌な気分だけが残ります。
なぜか。
クレームがつけられぬ案件だからです。内容は家事代行ときたら、わかるでしょう。クレームをつけたいのにクレームが言えないという非常に立派なイラクサが採取できましたので今回はこの話。
クレームをつけたいのにクレームが言えない理由……それはこちら側の情報を握られているということにある。住所、電話番号、家の間取り、すべてを知られている。その状態でクレームをつけたら業者にわかる。業者が倫理観のない人であれば、何をされるかわからぬのが怖い。
私はその業者と接触したのは初めてです。初対面とはいえ、なんどかメールをしあって、大丈夫そうだと依頼しました。しかし実際は一時間半も遅刻したうえで時間も短く切り上げられました。「終わりました」 と現場を見せられ私は呆然。さっさと帰り支度もされているので次の予定を気にされているのでしょう。いわゆるうるさいお客さんなのかもしれません。お金を渡すと、その業者は紹介者にもお金を払わないといけないので、次回以降の依頼は直接電話してくれと言われました。
気の強い私がその場でクレームをつけなかったのは、やはり怖かったから。あとで出来栄えを見た家族から「業者も業者でこれでお金をよく取った。そして払う方も払う方だ」 と言われました。近所の人からも同じ言葉をいただきました。もちろん、その業者へは二度と利用はしない。
民間でやっている登録業者といえでも、近年急拡大してきた大手仲介業者から選択したのに、当の業者が仲介料がきついので、今後は名刺にある電話から依頼してくれというのは、明白な違反でしょう。遅刻は論外ですし、肝心の仕事の出来栄えもひどい。ここまでなめられて、非常に残念に思いました。
続きがあります。私はネット検索で登録した紹介業のホームページをチェックしました。そこはクレーム受付の項目が一切ありません。電話連絡先もありません。企業情報や企業理念をチェックすると社員の笑顔が並べられています。業者や利用者のコメントが褒め言葉以外ないのは逆にあやしい。社長の言葉も口当たりのよいことを言っていますが、汗水たらして現場で働くひとや利用者への思いなど一行も見当たりません。ネットだけで人を仲介して楽して儲けている会社というイメージを持ちました。
登録した業者の紹介料でお給料をもらっている社員たちは利用客の私のみならず、当の業者から紹介料が高いと初対面の利用客に対して愚痴る気持ちも理解できないでしょう。クレームがつけられないものの、この会社を利用したことで何らかの問題、犯罪が発生すればただではすまないでしょう。会社のホームページを事前にチェックしなかった私も私ですが、「楽して儲けている」 イメージを誰がしても持つような会社って果たして今後も存続するものでしょうか。




