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第八十一話・受付の女の子が会社の印象を変える

 どこぞの会社に訪問して、最初に用件を取りついてくれる人は、その会社のイメージを決定させるほど重要な立ち位置にあると思います。

 だからこそ、企業によっては若くて美しい女性を受付係にさせます。また企業イメージを損なうことのないように念を入れて社会ルールを叩き込んだり、不正なことをができぬよう縁故採用をしたりします。

 受付任務の重要さは経営者にもわかっており、近年は社長や院長自ら受付や案内係に徹したりします。ふんぞりかえるだけの仕事なぞ、目下のものにとって亡霊みたいなものです。偉過ぎて声を聞いたことがない社員が大半というのは問題です。だから上のものが最前線にいるのは、よいことだと思っています。


 ちょっと前の話です。Zが友人だと紹介してきた弁護士についての話。母はその人をよく知らないままに二十余万円を支払っていたし、詳細を覚えていないので電話で事情を伺ったことがあります。

 直接の会話を試みれば、その弁護士はZの友人でもない人で、市役所に無料法律相談の窓口で網を張っていたら相談者がそのまま依頼人になったというパターンでした。弁護士に費用の友達割引って本当ですかという私の質問に爆笑され、とても恥ずかしかったのを覚えています。

 それでも、当時の私はZが将来的に母の介護をしてくれるだろうと思っていたので、Zの希望する母の全財産をすべてZのものにするという公正証書作成に署名押印しました。

 当時の母は元気でいましたが。Zは不妊で子供がないから不安だから相続を確定させたいのだろう、怒ると怖いし、実印をついてあげて、というのでつきました。ついたあと、無事証書はできましたがZからあいさつや連絡は一切ありませんでした。

 私は事後処理として弁護士事務所に行きました。そこは淀屋橋にありました。弁護士御用達ビルですね。

 問題はここから。

 応接間で待っている間、お茶をだしてくださったのですが、受付の二十代とおぼしき若い女性が私の席の前にお茶を放り出すように音をたてておいたのです。驚いた私は彼女の顔を見上げました。その女性は無表情ですぐに背中をみせて退出しました。初対面三十秒足らずで受付の女性から敵意をあらわにされるとは思いませんでした。

 弁護士との今度のZの対応なども相談して相応の料金も払いました。先生は誠実な態度でしたが、私はそのお茶は一滴も口にしませんでした。Zがここにきて、その女性に母や私の悪口をふきこんだのかと思ったぐらいです。でも先生には愚痴は言いませんでした。ただそういう経験は、忘れられないです。見知らぬ人から敵意を持たれる経験は学生の時に散々していますが、司法の世界でそれをされるとは思いもしなかったから。

 言えるのは、彼女は私以外の客相手でも彼女自身の判断でおなじことをやっているということ。先生の体面など眼中なく、バレさえしなければ感情や態度をあらわにしてもよいという思考です。おそらく私もこの事務所には何度も来ないだろう、先生の依頼者はZさんなのに何を血迷ってZさんが憎んでいる姉が出張ってくるのかという思考だろうと推測しています。

 この件があってから、私は重要な会話をするときはボイスレコーダーをするようになりました。結論としてやってよかったと思うことがあります。あの時は気分が悪かったが、これもやられて感謝すべきかもしれません。終わります。



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