第八十話・通話中だよ
今時の子供はSNSはあって当たり前です。子にスマホをねだられて買い与えたとたん、子の人生がかわり、人格まで変わったと思っています。つまりスマホをあやつっているようで、あやつられた人生という意味合いで言っています。今回の話は、母親視点、SNSをいまだ使いこなせない機器音痴からの愚痴だとおもってください。
以前にも書きましたがSNSの最初はツイッターからでした。友だち同志で教え合い次に友達の友達、まったく知らない人、海の向こうの国の人たちとも触れ合える……子にとっては夢のような世界だったようです。朝から晩までスマホを放さず、学校でも隠れて使って先生に注意され、そのうちツイッターやラインでトラブルを起こしていじめにあい……怒涛の十代半ば。
まだ中二病の方がずっとかわいい。我が子は児童相談所や警察のお世話にまでなりました。今は落ち着いています。この体験を通じて私の思考も激変し、とりあえず学校へ行かずとも、生きていればまあいいか……と考えるようになりました。
放任といえば放任ですが、うっかり昼夜逆転してるよとでも当然の注意をしようものなら荒れ狂います。これでまた家出して警察のお世話になっても困ります、というわけです。やれやれですが、解決方がない。
以前、事件を起こした子供の親がテレビ局のインタヴューに応じましたが、放任過ぎる、他人事のようだと批判を受けました。が、視聴していた私は複雑な気分。私もまた放任すぎると思われる側の親ですので胸がすごく痛みます。でも放任せざるをえない事情もあります。で。話を本筋に戻します。
子にかわいい彼女ができたらしく、ほぼ一日中通話状態です。部屋に籠っているだけならわかりませんが、食事中でもやる。急に笑い出したりはしょっちゅうです。私が気にしすぎかもしれませんが、家の中に透明人間の家族がもう一人いるようです。
これの何がイヤなのかというと、現実世界に居住しているものを軽視し、ネットの向こう側の世界を大事にしている表れだと思うからです。そういう子に育てたのは私なので私が一番悪いですが、哀しい思いをぬぐえません。
でも、言ったらまた家出するかも、警察の世話になるかも、自傷行為をするかも、で、言えません。私はそういう親です。JやZが利いたら喜ぶ話です。事件を起こさないだけましと考えて生きています。
思えばひと昔前、私の子供のころはテレビを見ながら食べてはいけませんと言われていました。行儀が悪いからとされていたからです。でも今は違います。でも今はテレビをつけて食べるのは当たり前です。だから今の状況をみていたら、子が老人になる未来になれば、SNSで見知らぬ人と会話しつつも目の前では家族と一緒にすごすのは当たり前になるのかもです。




