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第六十三話・嘘はいつかばれる……⑧ 叔母Jとゆるキャラ □

 叔父Gが生きていたころの話です。ゆるキャラという名称がなかった時代の話。Gは、経営者のみ集う、某社会奉仕団体の会員でそれを誇りに思っていました。地元には名前の知られた人々と親交を持っていました。GはJのかげでJの勤務先の機関紙を編集発行する会社を起業しましたので余裕で入会できました。絶対に倒産しない部数確保済みの優良企業会社の社長ですものね。経営の苦労も知らなかったと思います。Gは、長じてその団体を通じてキャラクターデザインをしたと聞いています。物証はありません。伝聞です。とにかくそれが採用され、新聞にも名前が載りました。市役所主催で選考委員名などは調べたのですが不明でした。

 実は私はその当時の原画をG本人から見せられています。今とキャラの服装は同じですが表情が全く違います。ちょっと表情が苦しそうな感じで、もうちょっとかわいかったらいいのにと思ったことを覚えています。

 あれから三十年ちかくたった。現在は低年齢の子どもにも親しんでもらえるように輪郭や表情ががらっと変わっています。公式ホームページにも二十数編の応募から決まったと書かれていますがGの名前は一切出ていません。選考委員の名前もありません。この選考にあたっては、市役所にも顔が利くJの不倫相手兼天下りがかかわっていたなら一発だったろうと思います。

 ついでながら私の実妹Zは見栄っ張りなので、どこぞの自己紹介では例のキャラは私の叔父Gがデザインしたものですと言って好意的に覚えてもらっているらしいです。Zらしい話ですが、それほど、そのゆるキャラは市内のどこでも見かけるようになっています。しかも標章登録やデザイン料などの権利関係を一切取らないので美談になっている。

 情実が入っているのは確かでしょうが、私はもうその場所を離れているし、当の叔父GですらJの嘘を真に受けて相続税の嫌味を直に言われていたしもう全部書く。Gにゆるキャラデザインをさせた姉のJは横領していたのですよ。そのJの横領を知ってか知らずか、市役所から天下りしてきたJ上司とJは不倫関係だったのですよ。


 叔父Gが造ったあのキャラクター、今では見るだけで吐き気が出ます。今は母が一人暮らしを強く希望するので仕方なしに隔週ごとに戻っているけれど、市内に入ればどこに行っても見かける。私はあのゆるキャラを見たくない。母が再度倒れたら再度私が引き取ることになるが、そうなれば二度とその地に足を踏み入れまい。

 それでは本シリーズを終わります。少ないだろうけれど読んでくださった私の読者様には心からお礼を申し上げます。あなたたちだけは、私のいうことを信じてくれるでしょう。

 Jは完全犯罪をしましたが、こういう横領事件は表沙汰にならぬだけでもっと多いのはないだろうか。今でさえそこの横領のニュースは多いし、昔ならばもっとやりやすかったからでしょう。

 Jと血縁関係がある私はとても恥ずかしい。Jを信用して私を悪くいっている親戚もまた恥ずかしい。

 いや、私のことはもういいよ。

 好きなだけなんとでも言ってください。でもJには私からの要求金額や内容証明書があったかどうか聞いてよ。そして遺産分割協議書はまだ元の勤務先に置いたままかどうか聞いてよ。そして誰にも見せられないのか聞いてみてよ。それともHや亡くなったHの兄と協力してるから鉄壁だって?

  笑うしかない。それで旧家然としてるから。最低だと思う。例の国家議員もJの横領を知ったらどういう態度をとるか見ものだ。

 でも今の私は誰も見方がいないの。

 証拠も証人もない。

 ……ここに書くだけでこれでおしまいなの。


著者補足、令和二年八月、当時の公文書を一部開示していただきました。叔父Gは個人名ではなく例の某団体名代表として応募していました。審査員にうち二名は叔父の出身大学関係者、デザインもリストアップされた三、四点の中から決まったようです。選考過程に関与する会議記録などは不存在で結局立証は不可能。つまり私がここで憶測で言っているだけということです。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ここに書く事で、ふじたさんの心に溜まった澱が少しでも減るならば、良いかと思います。
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