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第六十一話・嘘はいつかばれる……⑥ Jの取り繕い □


 私はJの元勤務先の社史を持っています。なぜなら当時存命だった父も組合員だったから。そこにはJの姿が掲載されています。数十名の集合写真にJがいます。Jは最前列の真中に座っています。取り囲むようにして男性たちが両脇に座っています。誰が実力者かその一枚の写真でよくわかる。金融ADRをしても、私に「さん」 でもJには「様」 をつける理由がよくわかる。その写真では一番最初に対応し、Jに対して諮問をするといった支店長が、Jのずっと後ろの最後列に若い顔でいました。Jに対して頭があがらぬはずです。

 その元支店長はすぐ異動になっていましたが、金融ADRには出席しました。しかし、手ぶらでした。顧客管理台帳の開示はできないことになっていると主張しました。諮問の件も「するとは言ってない。聞き間違えだ」 と仲裁担当弁護士の前で言いました。

 相手方出席者は皆、「J様」 のいうとおりに動いているのです。金融ADRはJは出席しなかったものの、そこに至るまでの担当職員はまるでJの子供の使いでした。つまりJ本人に聞いてくれと言うだけなのです。J様がそう言ってますと伝えるだけ。

 そのJとは電話ながら一度だけ会話もしましたが、私の疑問に答えず「何もしてない。全部Gがした」 と叫ぶだけでした。六十才で亡くなったGに全部責任をなすりつけています。遺産分割協議書も勤務先に預けたままだという。話自体かみあわず紛糾しました。そしてJから電話してきたにもかかわらず、部屋に入ってきたらしきFに対して「私から電話があった」 とあわてたように叫びJ自ら電話を切りました。

 この会話に関しては、ヒントになる言葉、特に遺産分割協議書にまつわる嘘がぎっしりあり、時折聞き返しています。そして万一私に何かあったときに預け先で公開するようにしています。

 それにしても金融ADRに期待を持って臨んだ私が愚かでした。話し合いにすらならなかった。担当弁護士は公平な立場を貫き、私の出方を黙って聞くだけ。そういうものかもしれませんが、私は何のために金融ADRをしたのかと悩みました。


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 Jの周囲が退職済みのJの言いなりなのは、おそらくJと親しい議員の威力があるせいでしょう。その議員は高校時代の同級生でJのことを皆の前でもJちゃんと愛称で呼び、Jもことあるごとに議員と親しいことを吹聴します。

 加えて職場では権力のある天下り組合長の不倫のうわさも数十年にわたってある。去年の三月に亡くなられたが、Jを諫める人も逆らえる人も皆無の状態でした。だからこそ姪の告発が許せないのでしょう。

 Jの評判自体はいいです。横領の負い目があるからこそ、まじめに働き、人のために動き時には恩を売る。例の議員ですが、実は私もJを通じて利用したことがあります。不本意な異動があったときに、どういう経緯で異動になったのかの調査と希望職場に行かせてほしいと依頼しました。その願いは二年後にかなえられ、私はお礼をしました。Jはそういう方面での斡旋もできる女です。議員に顔が利くというのは、周囲にとってとても便利です。詳細は書きませんが、政治家は政治以外にもする仕事があるってことです。

 Jは職場の私物化もしていました。海外旅行に行くときは送迎を部下にさせていました。そういうことをできる権力をもっているのです。だからといって私が祖父母の相続が不満でお金欲しさに金融ADRをやったことにするなんて。そしてそれが通る世の中もおかしい。私は貧乏人でJと違ってなんのバックもないから、相手先もJもそれで通して平気なのでしょう。

 また亡くなった叔父Gも、実は同じところに勤務していましたが、姉Jと同じ支店ではまずかったのか、別のところで異動になりました。そこにはGの妻の遠縁が勤務しており、金融関係で双方の財政は把握しており、祖母が亡くなる直前にJが数億の貯金があるにもかかわらず、祖母の名前でお金を借りました。相続税逃れの操作です。そのことで別支店にいたGが遠縁から嫌がらせを受けたため、Gは仕事をやめて機関誌編集の会社を起業しました。一種の独占企業をJの顔で受けたわけです。

 Gの妻や長男が社員に名前を連ねています。現在はGが亡くなり、社名も社員も変更になっています。機関紙自体は絶対に倒産しませんし、支店統一統合もあったので部数はかなり多く儲かっているはずです。これもG亡き後も安心して暮らせるのも、「J様」 のおかげです。Jは実の弟に独占企業に等しい下請け会社を経営させるほどの力も持っていたわけです。それ以外にもGに公的なキャラクターデザインもさせていました。これはあとで後述します。



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