第五十二話・反抗期の子ども
私の子どもは小学生にしてすでに私の背丈を超えました。足のサイズも私より大きくなりました。男の子にいたっては半年ごとにくつのサイズがゼロ点五センチずつ替えないといけない。学校名の入ったジャンパーや体操服や上履きなどはもったいないので、私が家で着用しています。オババの服にしては変だけど無料だしなかなか破けないし体を締め付けないし気楽でいい。
図体が大きくなると同時にやってくるのが反抗期。差支えのない範囲で書いてみます。
お兄ちゃんに夜遅くに数人の来客があり、そのまま家に泊まっていきました。それぞれゲーム機を持ち寄って対戦するためでした。私は寝ていてまったく知らなかった。朝起きたら、のっそりと子供が部屋から出てきた。
珍現象その一 まだ朝なのに台所に出て来た。
珍現象その二 にっこりと笑って私に「おはよう」 と言いました。
珍現象その三 「友達が部屋にいるからゴハンよろしく」 と言いました。
お布団の数は足りたかと聞くと「雑魚寝だ」 という。そっと戸を開けてみると本当に狭い部屋の中の雑魚寝。女の子同士のお泊りだと「パジャマ、バスタオル、シャンプーがどうのこうの」 とうるさいぐらいなのに男の子だとこうも違うのか。我が家だけかもしれぬが、男の子は特に用意しないで普通に寝るのな。ゲームをするだけのために、集合して何も食べずシャワーも浴びず、そのまま寝たらしい。いや、タオルもハンカチもなしでもいいけどさ、我が家も事前に言ってくれたら最低限の掃除や食べ物の用意ぐらいはするのに……皆そうなのか……わからん。
で、超絶簡単な朝ご飯を用意して部屋に持っていくと、皆で寝起きのぼさぼさ頭のままでゲームをしている。そうか、ゲーム友だちだもんな……。食器や飲み物をさげて入室したのに、彼らは振り返りもせず会釈のみ。戦闘中で忙しいらしい。確かに機器を両手に持っていては、ご飯も食べられぬ。うちの子もゲーム中に声をかけると怒るから、ましてや、よその子なので「おはようぐらい顔を見て言いなさい」 とは言えぬ。黙ってお盆を置いたまま退散。
で、いつの間にか午前中に彼らは姿を消した。問題はここから。
その日の夕方、泊まっていたうちの一人の母親から電話があった。
「うちの子が昨日から帰らない。そちらにお邪魔していませんか」 というもの。
「いや、昨日遅くに来て午前中に出ていきましたが」
「宿泊させたのですか。それは知らなかった。すみません」
……と謝られる。我が家に気を使わなくてもいいが、帰宅しないと心配だよねというわけで子供の部屋をノックして行先を聞いた。
「まるまるくんの家じゃないか。新しいゲームがどうのこうのって言ってたからな」 という。イースポーツをやっている子で上手な子がいるのでそこに行ったという。その通りのことを言うと相手は聞こえていたらしく、行き先がわかればいいです。今晩はそのまるまるくんのところで泊まるかもしれませんね、という。
携帯電話は母親からだと取らないそうだ……一緒だ……そちらもそうですか、と互いに言い合って電話を切りました。
男の子の母親ってつまらない。無駄に力が出るから怒ると壁を壊すし、気に入ったおかずは食べるけど、気に入らぬおかずだと勝手にラーメンやスープを作って食べる。ゲームに人生をかけている。他はどうでもいいみたい。ゲームに関しては最初は二時間までと自分で時間を区切って守っていていたが成長するにつれて、なしくずし。最終的にゲームにのめり込み過ぎて昼夜逆転した。しかもゲーム以外に我が家はいろいろありすぎる。現在彼は全日制の公立高校を退学し、好きな時に登校できる私学に行ってる。月に三回行けばよいほうで、彼はそれが義務だと思っている親の側からしたら、そんなので安くない金額が飛ぶ。お金で高卒の資格を買うようなところ。私は全日制で朝の決まった時間に登校し、夕方は部活に精出してほしい。私も集団行動が苦手だけど、それでもがんばって登校していた。でも彼には無理だったようだ。彼の場合の発端はいじめなので、私は心からその相手を恨んでいる。
反抗期の子どもに対し、どの家も苦労されていると思うがどうしたらいいんだろう。放っておくしかないのか。私は最低限朝はちゃんと起きて家族とご飯を食べてほしい。好きな時間にご飯をたべて夜中にシャワーを浴びてほしくない。生活のサイクルが狂うということは、成人して社会生活を営むときに苦労するのが目に見える。だから親は注意する。よけいなお世話だと怒られるだけ。もう親の出番はない。お金を出すだけ。
この子についてはいろいろとあるが、介護や親戚関係もいろいろとあって、私は現在心身症になりかけている。かなりな不調なので一応念のために検査してもらったが、何もでない。こりゃ不定愁訴でしょうかと医師にいうと、そうかもなと言われたですよ。
世間は自然災害の大きさに震えている。我が家もまた種類は違うが精神的台風がもう何年も来襲している。嵐はいつやむのか……。




