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第三十話・生まれ育ち


 あの子は◎◎の子供だって……と、うわさをされる人がいませんか? 

 ◎◎には世間的に認知される著名人や有名企業の創業者名などが入ります。時には特定の職業も。通常は黙っている人多し。同じような境遇の仲間内では何も言わぬが、下位の中にいると思って優位性をアピールする人がいるのが今回のイラクサです。本人には無意識な行動かもしれぬが、私はそういうのを見かけると観察してしまいます。

 彼らはいつでも認知と優遇を要求しています。周囲の反応としては最初はへえ~と妙な感心と関心を持たれるだけですむ。しかし己の努力でもない生まれ育ち等の成育環境を自慢し続けると、逆に反感が発生します。しかしそうなってもめったにトラブルにもなりません。

 暗に優遇を要求するバカを相手にするだけ無駄だし、相手にする人は何らかのメリットがあるからするだけだからです。私の場合は、その◎◎って子育てがへただな、と思うだけ。

 逆に◎◎の立場、育ちであることを隠す人は、優遇を要求するどころか不利だと感じている。己の個性と行動そのもので人生に「勝負」 だ、ということを感じている。己の力で得たものでないものを自慢する人と黙って隠そうとする人の心は雲泥の差。どちらがよいかはもちろん誰にも決められない。自慢せず、己の力で直球勝負だと思っている人の方が、カッコいいのは事実。とかく難しきは、人生。

 このあたり出生前から周囲に認知される王家などの高貴なお家柄の人は特に大変だな、と感じます。出自を隠しようもないから。大変恐れ多いことでございますが。


 さて、ある人から聞いた話です。Tさんとします。業務で新規の取引をすることになりました。相手とは数度面識はあります。双方とも重要事項を確認の上、会社実印を押してというところで、場違いな年配の人物がひょっこりと登場した。Tさん側はびっくり。すると、その新規取引先が立ち上がって「お父さん、来なくていいと言ったでしょう? 私はちゃんとできるから」 と怒りだしたという。

 Tさんは闖入者から名刺を渡される。それを見て、再度びっくり。某界の著名人だった。どうりで見たことのある顔だと思ったと。しかし職種もまったく違う会社の取引に何故しゃしゃり出てくるのか。

 

 つまるところ。このエライ人がわざわざ顔出ししたのは、我が子が経営する会社に不利な取引などしたら、わしが出張って懲らしめてやるからそれなりの覚悟せえ、という意味合いがあったかと思われます。Tさんに対して悪さ? をしないようにと睨みを利かせにきたわけです。その新規取引先は業界では認知度も低い会社です。それでも父親の名前を借りるなどどの援助なしで頑張っていたということらしい。そこの社長は、援助なしで実力でTさんの会社と取引できるまで大きくしたよ~と父親に報告をしたのでしょう。

 某界ではエラい人でも、家庭内ではただの親ばかで、心配のあまり、子供の会社の契約並びに取引場と時間を事前察知して登場したというわけです。取引は滞りなく無事完了して、Tさんはしみじみとおっしゃいました。

「事前の金融調査でも問題なかった。でも社長の親があの人かと思うと、今後の扱いも心理的に変わっちゃいます。ヘタうてば、どうなるかという恐怖はある。逆に、伝手ができたので今後の展開にラッキーという心理も。相手先の社長つまり例の人の子供はちょっと怒っていたので、たぶんこっちの気持ちと対応が微妙に変質するのを見越していたのでしょうねえ……」

 やっぱり萎縮はしますよね……双方の気持ちはわかるので、それも人生かなあと思いました。Tさんはその後の会社同士の交流もうまくいき、大出世されました。元々仕事ができる人ですが、普段からどのような人にも丁寧に接する人なので、それも有利になった。特定の人におべっかなど使わなくともいずれは出世される人です。

 一貫した謙虚かつ誠実な行動が良い人との出会いがその地位をさらにおしあげたのではないかという話。出会いもまた運次第か、と言われそうな話ですが、今春Tさんのご昇進を伺ったので、書いてみました。

 当のお子さんの会社も地味ながらよい方向にいっています。やっぱりどういうお生まれ、育ちだろうが、バッグに誰がついていようが、結局はご本人の努力が一番の根っこになると思います。

 

 




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