勇者の後始末
魔王を倒し、平和になった世界で勇者は必要か? 魔王とは悪とは何なのか?それを問う作品です。
「ではこれより、勇者ジルクニフの処刑を執り行う」
廊下の奥からそう、聞こえてくる。
「何で何だよーー!」
「あんまりよ!」
「かの者は王国に多大なる貢献をしたが、その戦闘力はあまりにも危険で、何時、敵になるとも知れない。また王国転覆の計略の疑いがあるため、この刑を執行する」
ああ、俺は、俺達は何でこんな国を救ってしまったんだろう?
もうそろそろ廊下を抜ける。
俺の最後の舞台だ。
魔王を倒し世界を平和にしたが、俺の人生もここまでらしいな。
いや、もういいのか……
死ねば仲間にまた会える。
魔王討伐のために多くの兵士が死に、俺と共に旅をした仲間も四天王との戦いで死んでしまった。
そして満身創痍で王国に帰ったら投獄されて、この仕打ちか。
国民は不満の声をあげてくれるが、意味はないだろう。
俺の死は決定事項で、王様にとっては俺も使い捨てだ。
「はぁ……。こんな国、滅びればいいのに」
「貴様っ! まぁもう死ぬんだ、悪態くらいつかせてやろう」
俺の前を歩く兵士はそう言って、俺の手枷を強く引く。
「悪態か、なら一つ言わしてくれ。お前は王こそが本当の魔物だと思わないのか?」
「どう言うことだ?」
兵士は足を止め、睨んでそう言ってきた。
「用がすんだ兵士は使い捨て、自分の生活しか考えていない。まるで魔王ではないか?」
「罪状に不敬罪もつけておいてやる! これ以上の私語は禁止だ!」
外の土埃の匂いがする。
「勇者さま、逃げてー」
「お前なら、逃げられるだろう!」
廊下を抜けると四方から俺に声があびせられた。
逃げるか、それはないな。
今日死ぬかもしれないが、一つ頼まれ事があるしな。
「王!! どこかで見てるんだろ? 話がしたい! 一つだけ、確認させてくれ!」
俺は声を張り上げて、コロッセオを見渡す。
貴族席か、その上の隠し部屋にいるとは思うんだが……
「ジルクニフを中央の処刑台へ」
中央にいる仮面を被った神父がそう急かす。
引っ張られながら、死への道を歩く。
「王! 魔王軍、四天王が一人ユーゴは言った! 真の平穏は、お互いが干渉しない事だと!」
俺は精一杯の大声で、王に呼び掛ける。
「四天王が一人、トールは言った。人間とはどうしてそこまで自分本意なのかと」
王からの返答はない。
「四天王が一人、ジーグフェルドは言った。血の流れない世界が見たいと」
観客たちも俺の声を遮らないために、静かに俺を見てくれている。
「そして、最後の四天王、ゴーマは教えてくれた。魔族も心があるってことを!」
「その首、すぐに切断してやる!」
兵士が俺の首をつかんで、ギロチンにはめる。
俺は尚も観客席に視線を向けて、声を張り上げるために息を吸う。
「そして、魔王と約束した! 王国との和平を俺が取り付けるって! だからこれで最後にしてくれないか? この地に血が流れるのは……。魔王いや、ヒルデと共にこの世界をよくしてくれ!」
観客席から拍手が鳴り出す。
「勇者! 魔物と対話なんて発想さすがだぜ!」
「私の夫は魔物に殺されたのよ? それを許せと言うの?」
観客席から若い女性の声でそう質問が飛ぶ。
「許す、許さないじゃい。お互いに多くの無益な殺し間をしたから、これからはそれをなくすために動くんだ! 国民の皆! どうか一つ、真の平和のために力を貸してくれないか?」
「そうね、もう誰かが死ぬなんていや! 私は賛成よ!」
先ほどの女性はそう声を張り上げてくれる。
「俺は最初っから勇者に力を貸すつもりだぜ!」
俺も、私もと賛同の声が響き渡っていく。
「静まれーーーーー!!」
王の野太い声が響き、また静寂が生まれる。
「王! この提案、どうぞ前向きに検討してください!」
「処刑せよ! 魔王に洗脳でもされたのだろ!」
やはり、ダメなのだろう?
「では、刑を執行する!」
その時、雷鳴が轟きギロチンの刃が弾きとんだ。
「さっきから聞いていれば、なんと愚かな王なのか……」
「貴様! 王に対する侮辱は許されぬのぞ!」
何事かと声の出所をみると、まっすぐにフード被った小さな人物が俺の方に歩いてくる。
「敵襲! ジルクニフの仲間だ! ぶっ殺せ!」
近くに待機していた兵士が弓をいる。
「効かぬ! 効かぬ! 勇者の剣以外はな!」
バチバチと音をならし、雷で兵士を無力化していく。
「何で、何で来たんだよ……」
「お主をみすみす殺すか、愚か者め。しかし、これは不味いな……」
王国の騎士達が警戒しながら俺達を包囲するように立ちふさがる。
「王! これで最後だ! 新世界にいくか、このまま小さな国で終わるかどっちだ?」
「愚かな……。兵隊よ! 二人とも始末しろ!」
その声と共に、次々と兵士が剣をかまえて、斬りかかってきた。
「仕方ない、逃げるぞ! ヒルデ」
拘束具を腕力で壊して、走りながらヒルデを抱き抱える!
「ふぇ? え?」
兵士達の攻撃をかわしながら、出口に向かう。
「いいぞ! 逃げろ、逃げろ」
「勇者様、お幸せに!」
観客席はなぜか色めき立つような声で溢れかえる。
「バカ、下ろせ、妾の示しがつかぬであろうが!」
ヒルデはじたばたと長い髪を振り乱しながら暴れだす。
「このままじゃ、やばいんだ! 安全なところまで逃げるぞ!」
俺はヒルデを抱えたまま、王国から逃げ出すのだった。
(完)
お読みいただきありがとうございます。
このお話はまた長編として書くか悩んでいます。感想、評価よろしくお願いします。




