第84話 土魔法で武器を作ろう
結局手に入れた鉄鉱石はギルドに納めることなく宿へと帰ってきた。いろいろと練習に使いたいので、余った分をギルドに持っていくことにしたのだ。
また地図スキルに興奮してすっかり忘れていたが、鉱山を出て宿に帰る間、例の尾行はまだついてきていた。相変わらず何もイベントは起らずに宿まで到着したので今のところ放置しているが。
「よーし、今日は土魔法でいろいろやるぞー」
「そんな宣言しなくても……」
テンションが上がっている俺に、莉緒から呆れた声でツッコミが入る。いやいや莉緒さんや、そんな呆れ声を出しても目がキラキラ輝いているのは隠せてませんよ。
「とりあえず鉄鉱石で練習かな」
「うん」
宿の部屋で試すのも憚られたため、街の外の誰もいない場所へと来ている。これだけ街道からも外れていれば誰かに見られることもないだろう。派手に魔法をぶちかますわけでもないので問題ないはずだ。
異空間ボックスから鉄鉱石を取り出し、いつも土をいじるような感覚で土魔法を発動させてみる。さほど苦労することもなく鉄鉱石の塊を正四面体に変形することができた。
「やっぱり鉄鉱石と言えど、地面を掘って取り出した土の塊には違いないってわけか」
「そうみたいね。土に何が含まれてるかはあんまり関係なさそう」
「土から砂利とか小石を取り除く応用で、鉄成分だけ抜き出せるかも?」
というわけでいろいろと試行錯誤をしつつも鉄を抽出する。思ったよりも簡単だった。そういえば鉄以外にも炭素とかいろいろ混ぜればいいんだっけか。そこはいろいろ試すしかないかなぁ。
それはともかく、金属製の包丁という意味では第一弾があっさりと出来上がった。
「これでお昼ご飯でも作ってみようかしら」
「お、さっそく試し切りだな」
お昼になったのでさっそく料理だ。異空間ボックスから調理器具や食材を取り出して準備をする。
莉緒も野菜を用意してさっそく包丁を試していた。
「おお、すごい、魔法で強化しなくてもさくさく切れる」
「さすが金属製ってところか」
「うん。これは期待できるかもしれないわね」
お試しで作った包丁で満足のいく結果が出たようだ。魔の森の土だけで武器を作った経験がかなり生きていると思う。さほど苦労することもなく出来上がっていく武器に、俺たちは調子に乗っていろいろ作っていった。
「地図スキルきた!」
そして次は地図スキルだ。どうやら莉緒にも生えたらしい。
「俺も地図に気配察知をなんとか組み込めたぞ」
言葉通りに地図を表示させると、スキルの地図上にアイコンがいくつも表示されている。周辺から気配察知で感じられる気配を、地図上に投影するイメージだ。
「すごいわね」
「だけどコレ、自力でやってるからすごい意識集中しないとダメなんだよなぁ」
「あはは、それはそれで大変そうね」
「うん。だから無意識で使えるように練習しないと」
「師匠からの教えにもあったわね」
師匠からは、『息をするように無意識で魔法を使えるように』とさんざん言われ続けてきた。もちろん魔法以外のスキルにも当てはまるのだ。
「最近さぼり気味だし、初心を思い出しながらやらないとな」
「それを言われると私もそうね……」
人里に出る前は、周囲に魔法をいろいろ浮かべて維持する練習方法だった。さすがにこれを街中とかでやるわけにはいかない。目立たずに使用できるスキルで代用していくことにしよう。
そんなこんなで仕事もせずにスキルを磨いていると五日が経過していた。宿はすでに、家具を注文した時に二週間かかると言われた時点で延長してある。
「あ、シュウさん、リオさん。ちょうどいらしてたんですね。よかった」
宿で朝食を食べ終え、食後のお茶を頂いていたときにフルールさんが訪ねてきた。
「あれ、どうしたんですか?」
「実はお仕事を頼みたいと思いまして……」
「仕事……、ですか?」
んん? 商人のフルールさんが俺たちに仕事を頼むって……、なんだろう?
素材収集くらいしか思いつかないけど、まだEランクだぞ俺たち。
「実力のあるお二人ならばと見込んで、指名依頼を出させていただこうかと思いまして」
「俺たちまだEランクですよ?」
もしかして知らないんだろうかと思ったけど。
「存じていますわ。でも、Cランクの魔物を無傷で容易く仕留められる実力はお持ちでしょう?」
ニコリと微笑まれると否定はできない。というか実際に仕留めた獲物を高値で買い取ってくれたのもフルールさん自身だ。誤魔化したところで意味はない。
「あはは、まぁそこは否定はしません」
Bランクの獲物も一度ギルドに持ち込んでいるしな。にしても指名依頼か……。受けたことはないけど、実力を見込んだ依頼内容だったらEランクの仕事にならなそうな気がするんだけど。
「ギルドへの依頼内容でしたら心配いりませんわ。Eランク相当の内容でお伝えいたしますので」
予測していたかのように対策方法まで教えてくれる。
「ということは、本来の仕事は別にあると?」
「だから直接私たちのところに来たんですね」
「はい、その通りでございます」
俺たちの言葉に大きく頷くと、真剣な表情で仕事の内容を話しだした。
詳しく聞いていると、だんだんと額に汗が浮かんでくる。なんでそんなことになってんの……? もしかして……、いやもしかしなくても俺たちが原因じゃねぇのかと思われる心当たりしか浮かんでこない。
思わず莉緒と顔を見合わせるが、莉緒も同様なのか眉間に皺が寄っている。
「受けてもらえるかしら?」
「「喜んで引き受けさせていただきます!」」
フルールさんの依頼に、俺たちは勢いよく返事をするしかなかった。




