第422話 新大陸
第八部開始です。
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「あ、見えてきたわよ」
空を行く莉緒の言葉と共に、俺にも遠くに見える山が見えてきた。
眼下にはひたすら海しか見えなくてかなり飽きてきていたが、ようやくと言ったところだ。
現在地は帝国にある港街レブロスからひたすら南下した箇所である。帝国のヒノマル支部からの情報によれば、新大陸はレブロスから南へ千五百キロほどの距離にあるとのことだった。もちろん船で行けば何日もかかる。でもたまにはのんびりするのもいいかと思って船に乗ろうと思ったんだが、どうやら海皇亀が現れてから船の運航が止まっているとのことだった。
となれば莉緒と二人で空を飛んで行くしかない。フォニア……とついでにイヴァンと船旅ができないのは残念だったが仕方がない。
ニルに乗せて空を行く方法もあったが、ニルは空を飛んでいるのではなくスキルで空気を掴んで空を走っているだけだ。休憩もできない海の上ではきっと長時間は無理だろうし、何より空を飛んだ俺たちより遅い。
「あれかぁ。話には聞いてたけど、すげーな」
そう。見えてきたのは海岸などではなく、天高くそびえる山だ。あまりにも高すぎて岸よりも先に視界に入った。そしてその天まで届くといわれている中央の山には、神竜様が住んでいると言われている。誰も見たことはないらしいけど。
「えーっと、とりあえず山に向かえばいいんだっけか」
メサリアさんに聞いた通りに、少し左手に見えてきた山が正面に来るように進路を変えて進む。
「お、見えてきた」
しばらくすると海岸が見えてきたが、港街はどこだろうか。少しだけ高度を上げると右手側にあったのでまたもや進路を変えて進む。
「港街の近くに降りるんだっけ」
「うん」
どこか適当な場所に着陸してから街門を通って街に入る方法を考えている。普通に船で街に来た場合はその場できっと入国手続きか何かが行えるだろうが、空から直接港街に入れば住民からも大注目を浴びるだろうし、それは避けたい。
門から街に入る時にもひと悶着はあるかもしれないが、そこは船が難破したとか言っておけば大丈夫だろう。たぶん。
港街がギリギリ見えないくらいの海岸へと降り立つと、次元の穴を開いてフォニアとイヴァン、ニルを呼び寄せる。
「へー、ここが新大陸か」
「海だー!」
「わふぅ!」
イヴァンが周囲を見回しているが、どこにでもありそうな砂浜が広がっているだけだ。内陸の方は草原になっているようだが、その向こうには天を突く山が見える。西へ向かえば港街があるが、ここからではまだ見えない。
「マジででかいな」
「山だー!」
振り返った二人が神竜様の住処を見てそれぞれリアクションを取っているが、相変わらずフォニアは可愛い。両腕を目いっぱい広げて自分も大きく見せたいようだ。
「よし、それじゃ街に向かって出発だ」
「おー!」
「わふぅ!」
のんびりと西へ向かっていくと砂浜がだんだんと岩場に変わってくる。歩きづらくなったので少し内陸へ入ると、街道に出た。あとは道に沿って行けばいいだけなので楽だ。
「見えてきたな」
遠くに外壁が見えてくると、イヴァンが指さしている。
「何ていう街だっけ」
「確かペルグリッドって名前の港街だったと思う」
メサリアさんから聞いた話を思い出しながら街についてあれこれ話していると、ほどなくして街門へとたどり着く。それなりに賑わっているらしく、中に入るための待ち行列ができている。見たところ獣人が多いようだが人族もちらほらいるようだ。パッと見ではエルフやドワーフといった種族は見当たらない。
「次!」
ようやく順番が回ってきたようだ。襟元から冒険者証を出して見せると、犬らしき耳を頭から生やした門衛が訝し気な表情に変わる。
「これは……、何だ?」
「え? 冒険者証ですけど」
「このデザインは……。もしかして北の大地から来たのか?」
「北の大地?」
思わずオウム返しをしてしまったが、詳しく聞けばその名の通り俺たちが来た帝国のある大陸を指す言葉だった。それにしても冒険者証が通じないということは、こちらの大陸にまで冒険者ギルドは進出していないのかもしれない。
「最近大陸を渡る船は出ていないと聞いたが、どうやって来たんだ?」
「あぁ、船が難破しまして、南へ進めばなんとかなるだろうとがんばりました」
「そ、そうか……。それはかなり運がよかったというかなんというか」
自分が船に乗ったわけではないが、海へ出た船であれば難破したものも存在するだろう。船を使わずに来たというよりは信憑性があるだろうし、南へ向かってたどり着いたのは事実である。嘘は言っていない。
「超大型の魔物が出たと聞いたんだが、どうなったんだ?」
「亀ですか? それなら討伐されましたよ」
「亀……だったのか? 本当に討伐されたのか?」
「嘘は言いませんよ。実際に亀の出た海域を通ってここに来ましたし」
むしろ討伐したのは俺たちだが、言っても信じないだろうし討伐証明を取り出すスペースもここにはない。
「……確かにそうだな。よし、詳しい話を聞きたい。少し別室に来てもらってよいだろうか」
どうやらすんなりとは通してもらえないようだ。とはいえ予想はできていたので否やはない。後ろを振り返れば莉緒やイヴァンも頷いているし、特に問題はなさそうだ。
「わかりました」
こちらとしても冒険者証が使えないのであれば、代わりになる身分証があるかなど聞きたいこともあるので都合がいい。
俺たちは門衛に連れられて門をくぐると、そばにある詰め所へと案内された。




