第421話 エピローグ
翌朝には騎士団の団体が街に到着し、その翌日からは沖に停泊していた大船団が次々と港へとやってきた。もちろんどれも戦利品としてだ。
街民には、海の向こう側からやってきた海賊が討伐されたとだけ伝えられている。ただの海賊の割に船は大型だし、数も多いのが謎として囁かれているのがもっぱら噂の中心になっている。
さらに翌日には禁止されていた漁も解禁され、街にはようやく平穏が戻ってきた。
「まいどおおきに!」
港に出ている露店の一角で、島出身のサムエルがタコ焼きを売っていた。
彼にはいろいろと情報をもらったし、あのあと大船団に合流することもなく、国とは関係を断ってずっと街で暮らしていたそうだ。差し入れたタコによっぽど感激をしたらしい。
本来なら捕虜として拘束されるんだろうが、俺たちの商会員としてスカウトした形になっている。
「やっぱり本場の人間に作ってもらうのが一番美味いな」
「くるくるひっくり返るのも面白いよ!」
はふはふとタコ焼きを頬張りながら、フォニアが目の前で焼かれているタコ焼きを見て興味深そうにしている。
「じゃあ今度俺たちも作ってみるか」
「えっ、ホント!?」
軽い提案だったけどフォニアの興味を刺激したようだ。ワクワクと輝かせた瞳で振り返ってきた。
「シュウさん、タコ焼き焼くんやったら貸しましょか?」
話を聞いていたサムエルがプレートを指さすが、商売の邪魔をする気はない。
「いや、プレートはこっちで用意するから大丈夫だ」
「そうでっか。シュウさんはタコ焼きの恩人やさかい、なんかあったらいつでも言うてください」
「タコ焼きの恩人ってなんやねん」
小さい声でツッコむイヴァンに苦笑しつつ、タコ焼きパーティー用に大型プレートでも作ってみるかと心の中で決める。土魔法ですぐ作れそうだ。
「ああ、そんときはよろしく。じゃあまたな」
「これが気配遮断の魔道具です」
さらに一週間後、鹵獲品売却の交渉にあたっていたメサリアさんが、お目当ての品を届けに我が家までやってきた。リビングのテーブルの上には大きな魔石が嵌った三十センチ四方の箱が二つ置かれている。
「ありがとう。もう一つは情報ギルドで自由にしていいよ」
「畏まりました」
異空間ボックスに一つ仕舞ってから使い道を考えてみる。解析して複製品が作れたら、各地の情報ギルドにでも配ろうかな。
「それとこちらが捕虜や大型船の売り上げになります」
追加で収納カバンから取り出したのは、ジャラジャラと音のする大きな袋がたくさんだ。現金の在庫が国にあまりなかったようで分割払いになったが、それもやむなしだろう。
「それも情報ギルドの運用資金にしていいよ」
「よろしいのですか?」
「うん。そんな大金使い道も思い浮かばないしね」
家の使用人にも払ってはいるが、今のところ手持ちのお金で足りている。
「ありがとうございます!」
全額をメサリアさんに渡すととてもいい笑顔が返ってきた。もしかして資金足りてないんだろうか。日本の商品をパクって商会で売り出せと指示はしたけど、そんなにすぐ軌道には乗らないだろうし。まぁ直接足りないって言われるまではスルーでいいか。
「よし、これで厄介ごとは全部片付いたかな」
「たぶん?」
隣で莉緒が首を傾げているが、まだ何かあったっけ?
「……クラスメイトはいいのか?」
考えないようにしていたことをイヴァンに掘り起こされて眉間に皺が寄る。
「いいんじゃない? 島を探検できなくなったのは残念だけど」
「そうだなぁ。確かに放置でいいかも」
島の探索もできなくはないが、わざわざ見つからないように気を遣うのも馬鹿らしい。それに島なんて探せば他にもあるんじゃなかろうか。そういえば前にそんな話をしたような。
「そういえば他にも大きな大陸があるんだったか」
「ええ、ございます。南は帝国から船が出ていたかと。西にもあると言われていますが、そちらは情報網が薄いので確かなことはわかりません」
「楓さんを探してた時にそんな話してたわね」
莉緒がうんうんと頷いているけど、そんな前だったか。
「じゃあ今度は新しい大陸に行ってみる?」
「そうするか。島より新大陸のほうが面白そうだ」
少なくとも面積は広いからいろいろありそうとは思う。
「どうやって新大陸まで行くんだ?」
次の行き先が決まったところでイヴァンが手段を尋ねてきた。東の島に行ったときは莉緒と二人で空を飛んで先行したが、南の大陸へは船が出ているのだ。
「今回はのんびり船にでも乗るか」
「いいわね。船旅って初めてかも」
「そういえばそうだな」
「船って港にあったおっきいやつだよね?」
フォニアが鹵獲された大型船を見たときに興奮していたが、今も船と聞いて目を輝かせている。
「そうだぞ。あれくらい大きいかわからないけど、次は船に乗ろうな」
「うん!」
耳をぴこぴこ尻尾をふりふりして嬉しそうだ。頭をなでなでもふもふしていると、ニルも自分も撫でろとやってきたのでもふもふしてやった。
「承知しました。我々はこの大陸にしか情報網を持っていませんので準備を進めておきます」
「え? あぁ、うん。よろしく?」
何かの決意を秘めた真剣な表情でメサリアさんが宣言するので、よくわからなかったけどとりあえずお願いしておいた。
「美味いものあればいいなぁ」
「そうねぇ」
「新しい素材や食材があれば商売のネタになりますね」
「あ、うん、そうね」
メサリアさんの言葉に、ちょっとだけ情報ギルドの資金についても考えてみようと思った。
第七部 完
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どうぞよろしくお願いいたします!
これで第七部が完となります。
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