第419話 制圧完了
すっかり投稿を忘れていました。
孤児たちに見送られたニルは、最後の小型船を制圧するべく機嫌よく空へと飛び立っていった。
「よし、俺も行くか」
「がんばってね!」
「悪いやつらなんてやっつけちゃえ!」
誘拐されて怖い目に遭ったはずなのに思ったより元気そうだ。これもニルのもふもふ癒し効果だろうか。
「おう、任せておけ」
しかし応援されるのも悪くない。俺も機嫌よく大型船へと向かって飛び立っていった。
周辺に集めた鳥TYPEを大型船の周囲に配置すると、隠密系スキルをフル稼働させてこっそりと船へと乗り込む。
「なんやあれ?」
「アホか! 魔物に決まっとるやろ!」
「敵襲!」
鳥TYPEに気づいた船員が色めき立つが、鳥TYPEは監視だけで攻めさせるつもりはない。本命はダンジョン最下層で集めたTYPEシリーズだ。
ニルの姿が見えなくなって気を抜いたところもあってか、俺の潜入に気が付く船員は誰もいない。今のうちにと次元の穴をダンジョンへと繋ぎ、集まったTYPEシリーズをこの場に召喚した。
「な、何や!?」
「船尾方面に異常な魔力検知や! 誰か見て――ぐはっ!?」
とはいえ最下層のTYPEシリーズは特に隠密特化というわけではない。出現した瞬間から異様な魔力を振りまくやつがいたらしく、すぐに船員に気づかれてしまう。しかし召喚した瞬間から飛び出していったTYPEシリーズに、なす術もなく次々と意識を刈り取られていく。
「おー、さすが最下層のTYPEシリーズだなぁ」
数分のうちに静かになったので感心していると、仕事を終えた彼らが俺の前に整列する。猿TYPEがいたので船員をロープで縛りあげるのを手伝ってもらった。
人数が多いので思ったより時間がかかってしまった。こういう雑事を手伝ってくれるTYPEシリーズも欲しいなぁ。よし、百体くらい追加しとくか。
「よし、次行くか」
TYPEシリーズを残して単身、次の大型船へと向かう。
小型船や大型船が落とされたことなど、どこまで伝わっているかわからないが、それなりに警戒はしているだろう。
……と思ったが、一隻目の大型船はあっさりと陥落した。
鳥TYPEで包囲している間に俺が乗り込み、次々とTYPEシリーズを陥落済みの船から再召喚して次々と大型船を陥落させていく。猿TYPEも百体いれば拘束もあっという間だ。
そして四隻目の船へと乗り込もうとしたとき、目の前の船の上から予兆なく火球が飛んできた。
「うおっと!」
ニルが避けづらそうにしてたやつがこれか。普段何気なく飛んでくる魔法を避けてるけど、やっぱり無意識にでも魔力感知を使っていたらしい。
「来よったで! 近寄らせんな!」
「畳みかけろ!」
一斉に魔法が飛んでくるが、本命は俺じゃないんだよね。
空中に制止して結界を展開すると、飛んでくる魔法を防ぎながら魔法を行使する。次元の穴を遠隔操作で目的の船へと出現させると、TYPEシリーズを次々と送り込んでいく。
「なんやて!?」
「こ、こいつらどこから湧いてきよった!?」
実にあっけないものである。
その後も順調に船の制圧を続けていたが、最後の船に攻め入った時にはようやく変化があった。さすがに旗艦ともなればある程度強者が揃っているようだ。
どうやら鑑定もされたようで、鑑定感知スキルに反応があったが今更だな。
「ゲッ、ホシやないかい!」
「マジか。あんだけ注意せぇ言うたやろうが……」
「弱点見つけたんやなかったか?」
「なんやて?」
何やらいろいろ言われているようだが、ホシってなんだ。俺のことを知っているような会話っぽいが……。にしても弱点ってなんだ。何かあったっけ?
まぁいいか。今はとにかくTYPEシリーズにがんばってもらうだけだ。いつものように次元の穴を開くとTYPEシリーズたちを召喚する。
それなりに奮闘したようだがさすがに最下層のTYPEシリーズに敵う者はいない。一体だけTYPEシリーズが損傷を負ったようだが、まだまだ十分に動けるので問題はなさそうだ。というか機械だけど治癒魔法効くんだな。
「あらかた片付いたし、指揮官は……っと」
こちらの大陸に攻めてきたブラスヴェーク人の指揮官の名前は、島で情報収集をしているヒノマルギルドメンバーが入手していた。大船団での遠征は大々的に国民にも触れ回っていたので、ちょっと詳しい一般人なら知っているくらいだったのだ。
猿TYPEに拘束された船員を順に鑑定していくと、目当ての人物が見つかった。
「お前がブラスヴェークの第二回遠征団団長のレッド・シーリングライトか」
「ぐっ……、クソっ、何がどうなって……」
気絶していたので水魔法をぶっかけつつ呼びかけてみる。聞こえてなかったようなのでもう一度呼びかけるとさすがにこちらを向いた。
「はは……、あんたが噂の、国落としのシュウやったんか」
海の向こうの人間にまで二つ名で呼ばれてしまった。探ればすぐわかるぐらい浸透してるからしょうがないと言えばしょうがないんだが。
「なんで孤児なんて誘拐したんだ?」
とりあえず一番気になったことを聞いてみる。
「はぁ……、やっぱりそこが分岐点かいな……。クソっ、だからワシは反対やったんじゃ……!」
何やらブツブツ言っているのでしばらく待っていると、団長のレッドがこちらを睨みつけてくる。
「アンタへの人質になる思うたけど、とんだ間違いやったわ」
「え?」
予想外の言葉に変な声が出ると、団長が諦めの表情でまた大きくため息を吐いて周囲を見回す。
俺の後ろには船を制圧したTYPEシリーズと拘束要員の猿TYPEが勢ぞろいしており、船の周辺には無数の鳥TYPEが漂っている。
「こんなん勝てるわけないやん」
そうポツリとつぶやくと項垂れるのであった。




