第417話 気配遮断の魔道具
すっかり予約投稿を忘れていました。
船員を次々に海へとぶっ飛ばすニルを横目にしつつ、攫われたと思しき人物がいる船内へと続く扉へと進んでいく。
「聞きたいこともあるから、全員海に放り投げるんじゃないぞー」
「わふわふっ!!」
船から気配が感じなかったこととか、動力のこととかはちゃんと聞きだしたいのでニルに念を押しておく。
「もう来たんか……。ここは通さへん――へぶっ!?」
扉の前にも船員がいたようだけど、とっとと排除して中に入っていく。すぐ階段になっており、降りると扉が二つあった。ごつい南京錠がついていたが、問答無用とばかりに壊して扉を開ける。
「……誰だ?」
狭い部屋には四人ほど押し込められているようで、一番前にいる人物から声がかかる。ロープで手足を縛られているようで、その声には余り覇気がなかった。
「通りすがりの冒険者です」
「も、もしかしてシュウ殿か!?」
真っ先に反応したのは一番奥にいたマイルズさんだ。
「ええ、そうですよ」
「通りすがりでこんなところまで来れるものかね……?」
攫われた孤児を探している途中なので、通りすがりと言ってもそう間違ってはいないと思うんだけどね。
「怪しい人に助けてほしくないようであれば配慮するので言ってくださいね」
「いや! そういうつもりでは……!」
笑顔で放置すると宣言したところ、慌てた様子で弁明が入ってくる。じゃあどういうつもりで言ったんだろうな。助けに来た人間に嫌な態度を見せる意味がわからん。
「何を言っておる。彼はSランク冒険者のシュウ殿じゃ! わしらは助かったんじゃよ!」
マイルズさんが興奮気味に叫んでいるが、まだ助かったというには早い気もする。
「Sランクだと!?」
「とりあえずロープをほどきますね」
驚くオッサンを放置してロープをほどいていくと、捕まっていた他の人たちの表情も安堵の色に染まる。
「お、おい! わしのロープもほどけ!」
一人だけ放置されていると気づいたオッサンが声を荒らげるが、第一印象が悪いのであんまり助ける気はなくなっている。他の人たちに宥められながらロープをほどかれているので、完全に放置というわけではないが。
「これで全員ですか?」
オッサンを無視しつつマイルズさんに確認すると、頷きが返ってきた。気配察知で船の中にはもういないことはわかってるが、他に情報があるかもしれない。
「わしらを乗せた船が出たときは、まだ一隻海岸に残っておったな。それを考えると先に出た船もあるやもしれん」
「なるほど……。何隻あるかわからないのは面倒ですね……」
気配が辿れないのが痛い。孤児だけならニルの鼻を頼ればなんとかなるかもしれないが、ここはTYPEシリーズに出張ってもらうかな。
ひとまず全員救出できたので甲板へと戻ると、折り重なって倒れた男たちを右足の下に敷いたニルがドヤ顔をしていた。扉の前を守っていた男もニルの足の下にいるようだ。
「よしよし、よくやった」
「わふわふっ!」
褒めてと寄ってきたニルをもふっていると、折り重なった男たちからうめき声が聞こえてくる。手足が折られたりしていて動けそうなやつはいなさそうだ。
「さすがSランク冒険者の従魔じゃな……」
「従魔もSランクじゃねぇか……」
目ざとく首に付いているタグを目にした救出者の一人が呟くと、倒れた男たちからさらにうめき声が聞こえてきた。
一応ひと段落付いたようなので、捜索用のTYPEシリーズを放つことにする。空から探すだけなので小細工はいらない。初期ステータスでもそこそこ強いので、鳥TYPEを百体ほど作って四方八方に放っておいた。
基本形の初期ステータスなら千DPしか使わないので、百体でも十万DPだ。
「まだ匂いが辿れるならニルも探しに行ってくれるかな」
「わふっ!」
お願いすれば周囲の匂いを嗅ぎながら、ニルも空へと旅立っていく。
「よし、じゃあこっちも聞き込みだな」
折り重なった山から一人引きずってくると、攫われた人たちの前へと出してやる。
「ぐうぅぅ、そないなこと言われて、しゃべるわけないやろ……」
「はは、すぐにしゃべりたくなるから大丈夫」
「シュウ殿、こんなところで拷問とかする気じゃろうか?」
「……」
マイルズさんの言葉に男が睨みつけてくるが、そんな野蛮なことをする気はない。やったことはないが、きっと自分も気分がいいものではないはずだ。というか簡単に吐かせる手段があるのに拷問する意味もないだろう。
というわけで異空間ボックスから隷属の首輪をサクッとつければ完了だ。
質問を投げればポンポンと答えが返ってくる。非常に楽でよろしい。答えている本人も、意識の戻った船員も顔が青ざめていたが知ったことではない。
気配が感じられなかったのはやはりそういう魔道具があるとのこと。船の動力は船尾にスクリューもどきがついていて、普通に操舵室から操作が可能とのことだった。
しかしやはり、ブラスヴェーク人はこちらの大陸の国を攻める意思があるとわかったのは収穫だな。これで容赦する必要がなくなる。
「これか……」
船の中心に取り付けられていたのは、ソフトボールくらいの大きな魔石が五つ嵌められた黒い箱だった。大きさは三十センチ四方くらいだろうか。天面に五つくぼみがあって魔石が嵌っている。側面にオンオフを切り替えるスイッチがあり、今はオンになっている。
「この魔道具はどうするんじゃ?」
「とりあえず街に帰るまではこのまま稼働させておこうかと。そうすれば魔物に襲われることもないでしょう。……船の操作方法は聞きましたけど、街まで帰れそうです?」
無理そうなら首輪をつけたブラスヴェーク人を操舵手として残しますけど。不要なら即回収だ。
「捕まっておった者の中に船乗りがおるし、問題ないじゃろう」
「へい、任せてくだせぇ」
一人の男が前に出てくると、確かに船乗りらしい服装だ。
「それじゃよろしくお願いします。俺は他に攫われた人たちを探しに行くので」
「うむ。街の住民をよろしく頼む」
こうしてブラスヴェーク人たちを縛って船室に押し込むと、船はマイルズさんたちに任せてニルの後を追うのだった。




