第413話 今玄関にいるの
あれからリゼルエーデには集落に帰ってもらった。山を単独では越えられないのでお互いのダンジョン同士を繋げたのだ。逆に来やすくもなってしまったが、リゼルエーデ以外ならそれなりに歓迎しよう。
応援に来た職員からグランドマスターと呼ばれているうちに、何に納得したのかリゼルエーデからもグランドマスター呼ばわりされるようになってしまったが解せぬ。
「迎賓館の前に壁は作ったけど、もしかして海から来る可能性もあるのかな?」
東の島の奴らが押し寄せてくることを考えると、可能性はゼロではない。
「壁も海までは作ってないし、ちょっと考えないとなぁ」
街から迎賓館までしっかりとした街道が続いているわけではないが、誰かが通った道は存在する。その道から十キロ程度しか壁は作っていないのだ。奴らの目的は街だと思うのでこっちには来ないと思うけど、用心するに越したことはない。
迎賓館以外は何もないから、最悪ここだけ守っておくのもありだ。
「一応冒険者ギルドと領主にも伝えておくか」
「お忙しいようでしたらこちらから使いを出しますが」
「あー、ヒノマルと繋がってることは黙っておきたいが……」
自分で行こうと思ったけど、そういえばもう街にクラスメイトが来てるんだよなぁ。領主の館はともかく、冒険者ギルドに顔を出せば鉢合わせする可能性もありそうだ。
「やっぱりお願いしようかな」
「畏まりました。ヒノマルとは無関係を装って伝えるようにします」
さすがメサリアさんである。
「よろしく。あとはクラスメイト対策と大船団対策だな」
「街には出ずにここを強化するしかないんじゃない?」
「あとは孤児院くらいか?」
莉緒の言葉にイヴァンが続く。
確かに孤児院なら守備範囲に入れてもいいかもしれない。ヒノマルからも活用させてもらっているし、何よりフォニアのお友達がいるのだ。
「ボクも手伝うよ!」
孤児院と聞いてフォニアがふんすと鼻息を荒らげる。
「はは、じゃあ孤児院は任せる」
「うん!」
やる気のあるフォニアにお願いすると元気な声が返ってきた。
「じゃあ俺も孤児院に付いておく」
「頼んだ」
実力はフォニアのほうが上だがまだまだ子どもだ。イヴァンがいてくれると助かる部分は大いにある。
「クラスメイトは個人だからまだいいとして、大船団がどう動いてくるかかなぁ」
「いきなり武装して乗り込んでくるとか?」
「それはそれでわかりやすくていいね」
「ぶっ飛ばして終わりだろ」
「それはそうだけどな」
こちらからすると市街戦は避けたいところだろう。とはいえ相手の出方もわからないうちから船を沈めるという判断は領主もしなさそうだ。
「王都からは騎士団が派遣されてきており、現在移動中です。大船団が港に姿を現す前に到着は間に合わないと思いますが、そう時間をかけずに到着するかと」
「ふむ……。それならまぁ、街のほうは大丈夫なのかな? 俺たちは迎賓館と孤児院に集中するか」
こうして俺たちは、来たる敵に備えるべく本格的に動き出すことになった。
「どうやらクラスメイトが迎賓館へとやってきたようです」
あれから三日ほどたったころ、エルから報告が来た。
奴らが街についてすぐに、俺たちのことを探っていると報告があり、その翌日にはヒノマルのアイソレージュ支部にも顔を見せたと報告を受けている。なんだかんだと行動力のあるクラスメイトだ。
誠に遺憾なことながら、国落としの二つ名で呼ばれるようになった俺はこの国ではそこそこ有名らしく、この迎賓館のことも冒険者ギルドで聞けばだいたいの奴らが知っているのだ。
「早かったな」
「普通に馬車とか使えばもうちょっとかかるよね」
莉緒の言う通り、アイソレージュから迎賓館までは馬車で四日ほどかかる。とはいえ冒険者でもそこそこのランクになれば、自分で走ったほうが移動速度が速いというのはざらにある。クラスメイトもその例に漏れなかったということだろう。
「今はセバスチャンが門前払いをかけていますが、思ったよりしつこいようですね」
「まぁそうだろうなぁ」
ここに俺たちはいないし、お前らとは絶対に会わん。帰れ、と伝えるように執事のセバスチャンには言ってある。居留守を使ったところで「待っていればそのうち会えるかも」という根拠のない希望を与えることにもなりかねないからだ。
「電話か?」
ふと感じた魔力に呟くと、何事かとこちらに視線を向けたメサリアさんのスマホから着信音が流れてきた。
「……失礼します」
一言断ってから電話に出ると、どうやら相手はセバスチャンらしい。
『メサリア様、大変申し訳ございません……。奴らに門を破られ、突破されてしまいました』
聞こえてきた声は概ね予想通りの言葉だった。
「そうですか。想定通りではありますが……、困った方たちですね……。怪我はありませんか?」
『はい。私は無事ですが、建物が一部』
「わかりました。では予定通りに」
『畏まりました』
そう言って電話を切ると大きなため息が漏れる。
「立派な不法侵入じゃないの」
思わず呆れた声が莉緒から漏れるが、まったくもってその通りだ。そのためにも迎撃用の人員をダークエルフの集落から受け入れたわけだが、ちょっと実力を拝見といきますかね。




