第406話 対策に使おう
目の前で綺麗なDOGEZAを決めているダークエルフは五人だ。一番前にいるのは長であるリゼルエーデだろう。
「先日は大変失礼な態度をとってしまい、申し訳なかった」
思ったよりも殊勝な態度で謝罪を行うリゼルエーデ。本心かどうかはわからないが、以前より会話はできそうだ。
「あの後の調査で、我らの集落から離れたところにオーガの集落があったのも確認しております。もしかするとシュウ様が殲滅されたのかと思い、それも確認したかったのです」
一つ後ろに控える女が言葉を続ける。
全部灰にしたつもりだったが、オーガと分かるような痕跡があったってことか。外に出ていた奴らまで徹底的にやったわけじゃないし、集落に帰ってきて途方に暮れるオーガとかがいたのかもしれない。
「ああ、確かにオーガの集落は潰したな」
「やはり……!」
俺の言葉にダークエルフたちの間にあった緊張感が少しだけ緩む。俺の脅威度が増したというわけではなさそうだが、なんだろうな?
「よもやあのようなオーガの集落ができていたとは思わず……。妾たちの普段巡回する範囲のギリギリ外じゃった」
集落からは五十キロメートルくらい離れてたと思うけど。周辺全部が森だと考えると、ダークエルフの索敵範囲は思ったより広い。しかしそれをわかっててオーガはあの位置に集落を作ってたんだろうか。
思ったより知恵の回るオーガだとは思うが、もう殲滅したしいいか。
さすがにいつまでもDOGEZAさせてるのも話しにくいので、ダークエルフたちもソファへと座らせる。三人が席について、二人は後ろに立っているようだ。
こちらも俺と莉緒で対面のソファに座り、エルはその後ろで控えている。
「しかしそれよりも驚いたのが、この地に居を構えていることじゃ」
「うん? どういうこと?」
「百年ほど前じゃが、妾たちの集落から山を越えたこの地には、凶悪な蜥蜴がうじゃうじゃと棲んでいたはずじゃ」
「え、そうなんだ?」
リゼルエーデの言葉に思わず振り返るが、二人とも首を横に振るだけだ。来たばかりだから会っていないのか、いなくなったのかはわからない。
とはいえ。
「たまに遠くに蜥蜴っぽい魔物は見るけど、うじゃうじゃはいないわよね」
「そうだな」
莉緒の言葉に何度もうなずく。たまに魔物は見かけるし、中には蜥蜴っぽいやつも確かにいた気がする。
「だけどそんなに手ごたえはなかったよな」
「うん」
戦闘回数は少ないが、ゼロだったわけではない。
聞けばその蜥蜴は好戦的だったらしいが、俺たちが見たことのある蜥蜴は……というかここの魔物は滅多なことでは近づいてこない。
「まぁ百年もあれば生態系が変わることもあるだろ」
「うむ……。ここに来るまでに妾たちが今まで見たことのない魔物もいたことじゃし、駆逐されたのかもしれんの」
「なるほど?」
「金属光沢のある鋭角的な蜘蛛の魔物じゃった。えらく気配が希薄での……、発見した時は背筋が凍ったわい」
聞いてみればよく知ってる奴だった。蜘蛛TYPEね。
本気を出したダークエルフには見つかってしまうか。まぁしょうがない。
「ああ、蜘蛛の魔物ね。ここらにもいるけど、こっちから手を出さない限り襲ってこないから気にはしてないな」
「そ、そうか。それを聞いて安心じゃ」
使役してるとはあえて言わないでおく。手を出さない限り襲ってこないのは事実だし、嘘は言っていない。
「ふむ……。一応謝罪は受け取っておくが用はそれだけか? あんまり長居されても困るんだが」
「ま、待ってくれ。妾たちの集落を救ってくれた礼を受け取ってくれぬか」
はよ帰れと促してみるとまだ用事はあったようだ。しかしお礼と言う言葉を発したあとで、リゼルエーデの後ろに控える二人が前に出てきたので悪い予感がする。
「いらん。帰れ」
相手が何か言う前に封殺すると、隣から莉緒が笑いをこらえる小さな声が聞こえてきた。
物を出してくるのかと思いきや、人が前に出てきたので思わず口に出てしまったところもある。
「は? いや、待つのじゃ。こやつらは優秀なのじゃぞ……!」
やっぱりか。どういう扱いでダークエルフを俺たちのところに送り込むつもりだったのかはわからないが、その優秀さも役に立つかは微妙なところだ。
鑑定したところ斥候職特化なスキル構成で、ステータスを見てもそれなりに使えるのは確かだろう。しかし集落の外の言葉や文化や常識なんかを知らない人材なんぞ、魔物相手ならともかく街で情報集めなんぞできるとも思えない。
「そういうの間に合ってるんで」
情報ギルド職員も優秀な人材が揃っているのだ。まだ増やしたくはあるが、余計な手間はかけたくないとも思う。
「ぐっ……、そういうわけにもいかぬ。集落の長としての矜持があるのじゃ!」
「そうです! リゼルエーデ様の好意を無下にするのですか!」
抑えきれなくなったのか隣にいる女も声を荒らげて抗議してくる。というかホントにお前ら何しに来たんだ。
「なら俺たちがもらって嬉しいものに――、いや、待てよ?」
「何か思いついたの?」
「ああ」
そういえばクラスメイトがこっちに向かってるんだよな。考えたくはないが、まず間違いなく俺たちに接触しようとするはずだ。
「せっかくだし、迎賓館の防衛でもしてもらおうかな?」
こいつらをクラスメイトにぶつけてみてもいいんじゃないかな。




