第371話 エピローグ
「城の修繕費などより、宰相らの罪を暴いた功績と、スタンピードを退けた功績のほうがよほど多い」
そんなものは簡単に相殺できるとでもいいたげだが、それはそれで払う気のない分を勝手に差っ引かれるのはなんとなくイラっとした。
「そっちは迷惑料と相殺しといてください」
「あ、ああ、そうじゃな」
伝わったようでなによりである。
「して、褒美ではあるが……。没収した領地などはあるが、それはいらないのじゃろうなぁ」
咳払いをして気を取りなおすと、自信なさげに言葉にする。
「そうですね。街の統治とか面倒ですし」
それもメサリアさんにぶん投げればやってくれそうな気はするけど、ちょっと最近いろいろと丸投げしすぎかもしれない。
「それにこの国の貴族なんてやる気はないですよ」
「それはわかっておる。じゃから領地の割譲じゃ」
「へ、陛下!?」
まさかの言葉に後ろに控えていた大臣から声が上がるが、国王は気にせず話を続ける。
「もちろん街は含めんよ。統治が面倒なのじゃろう? 我が国は山岳地帯が多いゆえ、領地と言っても人跡未踏な土地がたくさんある。ああ、取り上げた領地であれば一部平野部も融通できるぞ」
「へぇ」
割譲と言うことは、どこの国にも所属しない土地ということか。サタニスガーデンの街で土地を借りて野営用ハウスを置いたときも思ったけど、帰ってくる家があるっていうのはなんかよかったよなぁ。
今だとダンジョンの入り口でも作ってやれば好きなところと行き来も簡単だし、案外土地というのはアリかもしれない。
「地図をこれへ」
「は、はい!」
なかなかの好感触と見たのか、後ろに控えていた大臣に言って地図を引っ張り出してきた。街を含めないと言ったからか、他大臣らからの文句も出てこないようだ。
広げた地図にはフェアデヘルデ王国とその周囲が載っている。南は商業国家アレスグーテ、西にアークライト王国があり、北は魔の森だ。東は海に面しているようで、国土の半分くらいが山岳地帯になっている。
サタニスガーデンを南へ下ればここ、王都がある。さらに南へ行けばザルアーツと国境の街へと続く。俺たちが商業国家からやってきた逆順をたどる形だ。
「南の国境沿いはすべて山岳地帯になっていてな。海に面した南東の国境沿いがちょうどトーガビート伯爵領だ」
「ふむ」
王都の東側には広大な平野が海まで広がっている。ただし南へ行けばすぐに山にぶつかり、国境へと至る。
指で示された伯爵領は平野部が三割ほどしかない、南東の土地だ。ほとんどを山岳地帯が占めており、三割の平野は北東の海沿いになっている。
「一番南の村から南の山のふもとまで五十キロほどだが、街道も通っていない。たまに踏み込む冒険者がいるが、それでもふもと近辺までだ。商業国家とは国境の街以外に、東の海を船で渡る方法しかないからの。伯爵領と商業国家は陸路ではたどり着けん。領土問題などは起こっていないので安心するがよい」
街道も通っていないということは、資源の採掘も行われていないということだろうか。これはいろいろと捗りそうである。
「なるほど。確かに陸の孤島って感じですね」
「ふふ。陸の孤島か。言い得て妙じゃな」
「ふーん。個人で持つには広い気がするけど、面白そうね」
莉緒が地図を覗き込みながら目を輝かせている。
面白そう……ね。確かに面白そうだな。街を発展させていくゲームもやったことあるけど、あれは確かにハマった覚えがある。
それに海もあるんだよな。前に港町でさんざん魚を釣ったけど、こっちは違う魚がいるんだろうか。
「そう言ってもらえるとありがたい。国を挙げての開発にも未だ手を出せなかった僻地じゃが、貴殿ならうまく活用できるじゃろう。……他にも割譲可能な土地はあるが、ここでよいかの?」
「……海沿いの土地はありますか?」
地図に視線を落としながら他に割譲可能な土地がないか聞いてみれば、魔の森と隣接する部分を示される。
「海沿いじゃとここしかないな。しかし貴殿であれば魔の森も開拓できるのではないか?」
確かに。そもそも魔の森は誰の土地でもないはずだ。わざわざ割譲してもらわなくても問題はないか。それこそ師匠の家みたいな場所ならすぐ作れそうだ。
「それもそうですね。じゃあ伯爵領のところにします」
「うむ。受け入れてもらえて助かる。念のため書類を用意しよう。そうそう人が来るとは思えんが、地元民に通報されても面倒じゃろう」
国から土地をもらった証書とか信じてもらえる気はしないが、ないよりはマシだろう。
「よくわかんねぇけど……、すげぇな……」
書類を用意してもらっている間に、地図を眺めていたイヴァンが感心していた。
「メサリアに任せておけばなんとかしてくれるでしょう」
エルは最初から丸投げ予定のようだ。俺もそのつもりだったけど、基礎は作るから安心してほしい。
「書類ができたらさっそく行ってみようか?」
「行こう行こう!」
「おう」
「わふっ」
「承知いたしました」
俺の掛け声に、寝ているフォニア以外の言葉がそれぞれ返ってくる。
「いろいろとあったが、結果的には貴殿がこの国にいてくれてよかったんじゃろうかのぅ」
国王の言葉には肩をすくめる。
頭の悪い貴族しかいなかった印象だけど、ダンジョンを手に入れたことが俺には一番かもしれない。
「それじゃ、俺たちはもう行きます」
出来上がった書類を受け取ると踵を返して謁見の間を出ていく。
「達者での」
国王の言葉を背に受けて、俺たちは新たな土地を目指すこととなった。
ちなみに城の玄関から門に向かって出ていく途中で、「お前が城に襲撃をかけた冒険者か! この腐った貴族社会をぶち壊す第一陣を任せてやる!」とかいう革命軍っぽいのが声をかけてきたのでぶっ飛ばしておいた。
第六部 完
これで第六部が完となります。
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しばらく閑話を投稿しつつ次のプロットを練りますので、第七部開始までしばらくお待ちください。




