第356話 証拠の入手
今日は朝から王都にやってきた。目的は宰相の屋敷から不正の証拠を盗み出し、城へ訪問の連絡をするためだ。前回来た時は余裕でTYPEシリーズをターゲットに付けられたし、今回も余裕だろう。
宰相ともなればその屋敷もかなり大きい。本邸とは別に離れが三つもあり、敷地も広大だ。とはいえTYPEシリーズを駆使した我らがヒノマルの人間によって、敷地の見取り図どころか証拠書類の隠し場所まで丸裸になっている。
「メサリアさん有能すぎるだろ」
隠密系スキルをフル稼働させて、宰相の屋敷の一番高い屋根の上に俺は立っていた。
もらった紙の資料を広げると、足元にある屋敷とを見比べる。
上から見る屋敷の形と資料の地図を照らし合わせると、証拠が隠されている建物の目星を付ける。
「やっぱり重要書類は本邸だよな」
空間認識スキルを伸ばして開いている窓がないか探っていくが、さすがになさそうだ。地図では一階の執務室に証拠が隠されていると示されている。今いる建物の最上階は四階なので、いったん庭に降りてから侵入することにする。
さすがに庭も警備が行き届いているが、隠密スキルをフル稼働させた俺を見つけることはできないようだ。こっそりと庭へと降りると、執務室に一番近い位置の廊下へとテレポートした。
廊下を歩いていると、向かいから使用人らしき人物が歩いてきた。びしっと決まった執事姿の人物に、できる人間という言葉が浮かんでくる。が、さすがに隠密スキルを使った俺には気づけないようだ。
そのまま気を張らずに廊下の端に寄ってすれ違う。
「……ん?」
と、しばらく進んだところで執事が立ち止まって振り返った。
バレたかと思ったが、首を傾げるだけで確信には至ってなさそうだ。さすがにできる執事である。
そのまま進んで角を曲がったが付いてくる気配はない。気にせずに執務室の扉の前までやってきた。もちろん鍵がかかっているのでテレポートで部屋へと侵入する。
「えーっと、どこだったかな」
手元の資料へと目をやると、赤い丸が付けられている箇所を確認する。執務机の後ろにある棚のようだ。ご丁寧にも隠し扉を開けた後の写真付きだ。それにしてもどうやって撮ったんだろうか謎である。
棚に入っている本を何冊かどけると、奥の壁に微妙な出っ張りが付いていた。スライドさせると隠し棚の奥に、両手で握り締められそうな大きなドアノブが現れる。ガチャリと動かせば、棚ごと横へとスライドしていった。
「おっと」
そしてどうやら侵入したのがバレたようだ。
執務室の隠し扉にはさすがに警報器みたいなものが設置されていたんだろう。というか棚をスライドさせる音もそこそこうるさいし。
「とっとと見つけて逃げないとな」
執務室の奥のほとんどを占めていた棚が全部スライドした後ろには、これまた書類がたくさん詰まった棚があった。そこにひときわ目立つのが、建物の壁と一体化したような金庫だ。幅50センチ、高さ1メートルくらいの大きさだ。
「あったあった」
資料に載っている写真は、その金庫に赤い丸が付けられている。
問答無用で金庫を破壊するとその扉を開ける。
「いろいろあるな……。どれが問題の不正の証拠なんだ……?」
資料を見てもそこまで詳しくは書かれていない。少し考えこんでいるうちに屋敷が騒がしくなり、執務室の前にも人が集まってきた。
「侵入者だと!?」
「は、はい! 防犯装置に反応がありました!」
声が聞こえてくると扉を開けようとガチャガチャされるが、もちろんカギは掛かったままなので開くわけもない。
「面倒だから中身全部持って行くか」
ここで確認している時間はなさそうだ。片っ端から異空間ボックスへと収納していると、とうとう執務室の扉が開けられた。
「そこで何をしている!?」
完全武装の人たちが部屋へなだれ込んでくるが、こっちの仕事ももう終わりだ。
「あ、どうも、お仕事ご苦労様です。それじゃ用は済んだのでさようなら」
近くにあった窓へと飛び込むと、そのまま破壊して外へと脱出する。隠密スキルをフル稼働させると建物の壁を蹴って屋根の上へと素早く飛び乗り、そのまま屋根伝いにさっさと撤収する。侵入した時と同様にテレポートで逃げてもいいが、どこへでも跳べることはバレないほうが何かと面倒がなくていいはずだ。
騒がしくなっていく屋敷の喧騒背後に聞きながら、金庫からいただいた資料を逃げながら確認していく。
「よし、ちゃんと例の証拠書類ありそうだな。念のためメサリアさんにもあとで確認してもらうとして……。残るは城へのアポか」
正式なものである必要はない。俺たちが城へ顔を出すことが本気であるということが城の関係者に伝わればそれでいいのだ。宰相の屋敷が襲撃されたことも広まれば、信憑性も増すだろう。
『スタンピードの警戒レベルが解消されたちょうど十日後、宰相殿の不正の証拠を直接国王陛下に持参する。Sランク冒険者シュウ』
要約するとそんなことが書かれた内容の手紙が手元にはある。もちろん隠蔽されても困るので、コピーしたものが百部ほどあったりする。いやほんと、コピー機ってステキですね。
城の関係者にばら撒ければいいと考えているが、まずは正攻法を試してみるのだ。そのための事前調査も終えている。
城はここから目と鼻の先にある。屋根の上から適当な通りへと降りると、隠密スキルを解除して城へと歩いて向かった。




