第341話 一週間後
あれから一週間がたった。
魔の森のスタンピードに備えて、王都方面から軍や冒険者も続々と集まってきている。俺たちもダンジョンの各階層に散らばる魔物たちを集めて、魔の森のスタンピードに対応すべく部隊を編成しているところだ。
正直、あの凶悪な罠さえあれば侵入者は撃退できると思っているし、そうなると各階層にTYPEシリーズたちを徘徊させても意味がない。ちなみに魔物のクリエイトメニューでは、TYPEシリーズとなるロボしか生成できなかった。残念。
他には斥候として鳥タイプのロボを魔の森に放っていたりする。鳥が見ている景色を見ることができるので非常に便利だ。脳内映像は共有できないけど、タブレットで見ることができるので特に問題はない。というわけで魔の森の魔物の監視は最近はエルに任せている。
ちなみにだが、俺がダンジョンマスターになったからかどうかはわからないが、ロボたちの頭がよくなった。単なる突撃はしなくなったし、ロボ同士で連携も取れるようになっている。
「そういえばダンジョンの入り口って自由に作れるのよね?」
「クリエイトメニューの中にあったけど、そこまで自由ではないかな」
「そうなんだ」
最近やることが減ってきたので莉緒と二人、家のリビングでダンジョンについてあれこれ考察している。タブレットは10万DPで作成できるので、エルと莉緒の分と他にも予備でいくつか用意していた。とはいえクリエイト系の操作ができるのはダンジョンマスターとなった俺だけだ。他のメンバーはどれだけ権限を与えても利用することしかできない。
ダンジョンの入り口は作成に50万DPかかる。しかも作成できる場所に条件があるみたいで、例えば魔の森のど真ん中にいきなり作ることはできなかった。
「どうも俺が自分の領域と認識した場所じゃないとダメっぽいんだけど……」
「へぇ……。じゃあフェアリィバレイの妖精の宿は自分の領域だったんだ」
「自分の家じゃないんだけどな。ヒノマルの本拠地だからかな?」
そうなのだ。たまたま資金の補充に訪れた妖精の宿に、ダンジョンの入り口を設置できてしまったのだ。空間魔法で小さい穴を常時つなげて妖精の宿にもWiFi環境を導入しようと思っていたけど、ダンジョン内に電源とLANケーブルを引いて対応できてしまった。以前妄想していた異世界最強の情報組織は案外早くできるのかもしれない。
ダンジョンもあれから拡張が行われている。ダンジョン既存の階層のどこともつながっていないエリアをひとつ作り、妖精の宿に作ったダンジョン入り口と繋がるようにして中継地点を整えた。
入り口は他の地点にも作ってある。自分の領域と認識した場所じゃないとダメなのは、その地に立てば感覚でわかるようになっている。だけどまさか他の街のヒノマル拠点にまで作れるとは思わないじゃない?
妖精の宿にダンジョンの入り口を設置できてしまったとき、メサリアさんの瞳が怪しく光ったと思ったらもう手遅れだったのだ。「他の拠点にも資金の補充を」と言うメサリアさんに捕まると、各拠点に配った俺のスマホを転移先座標として転移を繰り返し、資金をばら撒きつつダンジョン入り口を作らされたのだ。
「ふふ、丸投げしてるから、頼み事されると逆に断りづらいわよね」
「ま、そのおかげで審議官関連の情報がすごい勢いで集まりそうだけどね」
幸いにしてダンジョンの入り口を利用できる鍵も、クリエイトメニューから作成できる。所持しているだけでいいので楽だし、所持していても初めてダンジョンに入った人物だとダンジョンマスターである俺にはすぐにわかるので、そこそこ防犯性能もある。
人の行き来が簡単になったので、本格的にメサリアさんには審議官関連の情報集めをお願いしている。今はヒノマルの所属員がこの国の王都にたくさん集まって情報収集中なのだ。
「フォニアは最近エルの手伝いしてるんだって?」
「そうなのよね。十四郎さんからいろんな文章をブリンクス語で書いてくれって依頼が来てるみたいで」
「ふーん」
パソコンのキーボードのどこにどの文字を配置すれば、一番文字が打ちやすいのか探ってるって話だったっけ。十四郎さんから届いた日本語文章をフォニアが読み上げて、エルがブリンクス語で丁寧に書いて送り返すという作業を繰り返しているのだ。
確かにスマホで英字配列キーボード出したらqwertyの順番になってるけど、よくわからん配列だよな。きっと人間工学的にとか文字が打ちやすい配列なんだろけど、こういうのを決めるのは時間がかかりそうだ。
「あ、ご主人様、家にいらしたんですね」
そろそろニルの相手もしてやらないとなぁと考えていると、リビングにエルが顔を出してきた。
「どうしたんだ?」
「審議官調査部隊から緊急連絡が入ったので報告を」
「へぇ」
「なんだろね?」
莉緒と一緒に首をかしげていると、侍女モードのエルから淡々と報告が入る。
「スタンピード対策でこの街に軍隊が集まっていますが、どうやらその中の一部にご主人様を捕縛する命を受けた部隊が混じっているようです」
集まってきた軍は街壁の南側に陣地を張って野営をしている。そして冒険者と共に魔物が攻めてくるであろう街の北側の緩やかな斜面に、壁と堀を作って迎撃準備をしているのだ。そんな中、この家をコソコソと探る奴らがいたようで、どうやら軍の一部らしいことが判明したとのこと。
また王都を調査中の部隊からも、軍に潜入した隊員が俺の捕縛命令が出たことを掴んだらしい。
「そうなのか、なんだかんだヒノマルの情報収集能力ってすげぇな」
「問題ないとは思いますが、念のため警戒を」
「わかった。ありがとう」
ちょっと疲れるけど、今日から範囲を広げて気配察知を常時行うことにした。




