第333話 ダンジョン産のお宝
とりあえず壁に飾ってあるアイテムを片っ端から鑑定していく。さすがに一階層目の部屋だからか、役に立ちそうなものは見当たらない。
はく製はただのはく製だし派手な剣は見た目だけで、素材もただの鋼鉄のようだ。薬品の中には初級ポーションも混ざっていたけど、ただの濁った水が多かった。
『ハズレみたいだなぁ』
『残念』
『一階層目だしこんなもんかなぁ』
とはいえ探索を始めてまだ一時間くらいだ。この階層もめちゃくちゃ広いけど、今日一日あれば何かお宝に巡り合えるんじゃないかと期待している。
『次いきましょ』
こうして順調に一階層目の探索を進めていく。一階層目だというのに坂を上り、階段を下り上下移動もかなり入ってくる。
お昼ご飯を食べてしばらくしたころ、長い下り坂の下にある部屋にたどり着いた。
『罠はないみたいだけど部屋の真ん中に何かあるな』
『……剣みたいに見えるけど何かしらね』
『しかも浮いてるな』
部屋の大きさは学校の教室を一回り小さくした程度か。今まで見つけた部屋とそう変わりはない。その中心に、地面から一メートルほどのところに一本の抜身の剣が浮いている。刃渡りは70センチほどだろうか。飾り気はなく、両刃のよくある剣のようだ。
『げっ、マジか』
鑑定結果を見てげんなりする。ようやくまともなお宝登場かと思ったらダンジョンの魔物だった。
『……どうしたの?』
振り返る莉緒に鑑定結果を教えると、興味深そうに部屋の中央に居座る敵を観察する。
『へぇ、動物タイプ以外もいるんだね』
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名前 :なし
種族名:TYPE2016
説明 :ダンジョンによって創られた武器型(剣)の魔物。
空中を浮遊し、侵入者に対して容赦なく襲い掛かる。
状態 :通常
ステータス:HP 26432
MP 8321
筋力 25870
体力 20984
俊敏 17432
器用 2654
精神力 25
魔力 6311
運 1
スキル:
水魔法 火魔法 土魔法 風魔法
無魔法 雷魔法 氷魔法
斬撃耐性 打撃耐性 刺突耐性 破壊耐性
水耐性 火耐性 土耐性 風耐性
雷耐性 氷耐性
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ステータスが二万五千を超えてきた。もしかすると今までより厄介な敵の可能性もあるが……。にしても剣の筋力って意味わからんよな。単純に切れ味とか攻撃力って意味に置き換えればいいんだろうけど。
あとは耐性スキルが豊富だ。今までの敵にはついてなかったけど、追加で耐性があるってことは相当頑丈なのかもしれない。
『でもやることは変わらないわよね』
『そうだな』
部屋の外から中に向かって莉緒が手のひらを向ける。空間遮断結界が剣の周囲に即座に張られるが、今までの動物タイプと違う反応をするのだろうか。
『んじゃ行きますか』
他に罠がないことを確認してから部屋へと足を踏み入れる。結界に捕らわれた剣が、こちらに切っ先を向けようとするがもちろん動けない。結局何もさせることなく目の前まで来るとじっくりと観察する。やっぱりここの魔物は頭が悪いやつしかいないのか。
『柄のところから魔力を感じるわね』
『動力源があるのかな』
動物タイプと違って剣は全体の体積も小さいので、どこに何があるのかわかりやすい。確かに柄から魔力が感じられる。
『ちょっと柄のほうの結界解除してくれない?』
『いいけど、何するの?』
『ちょっといろいろ確かめたくて』
剣の鍔を含んだ刃だけが結界で覆われて、柄が外にむき出しになる。両手でがっちりと握ると剣が暴れだすが、結界もあるためそこまで激しくない。
『ふむ』
空中に結界の足場を出して降り立つと、莉緒に頼んで剣を覆う結界を全部解除してもらう。暴れる動きも激しくなるが、抑え込むのにそこまで力は必要ない。魔法を発動させようとしたのか柄の中心から魔力が膨れ上がるが、ちょうど握りこんでいる部分なので魔力を乱してやると簡単に発動を邪魔することができる。どうやら動力源として魔晶石が埋め込まれているみたいだ。
片手でも大丈夫そうなので、右手で剣を持つと左手で今までに倒してきたダンジョンの魔物の残骸を異空間ボックスから取り出した。
右手で持つ剣で切りつけると思ったより簡単に切断できる。筋力が高いだけあって、それなりに攻撃力はあるようだ。
『へぇ、悪くないわね』
莉緒の感想を聞きながら、今度は柄部分にある動力源の解析を始める。徐々に魔力を流していくと剣の動きがさらに激しくなってくる。
流す魔力を細かく分けて細部を探っていく。埋め込まれた魔晶石から全体に魔力が広がって、剣が動いている印象を受ける。
試しに魔力操作で魔晶石の魔力を抜いていくと、案の定剣の動きが鈍ってきた。
『大人しくなった?』
力を抜いた俺の様子に莉緒が尋ねてきたので、頷いて持っていた剣を手渡す。
『魔力が抜けてるわね。それで動かないのかしら』
『そうみたい』
ひとしきり観察するとダンジョン産の剣の魔物を異空間ボックスに入れておく。武器ではないけど武器が手に入った。ロボットはゴーレムと呼んでいたし、ゴーレム武器とでも言うのだろうか。
『さて、他には何があるかな』
改めて部屋を見回してみると、部屋の隅っこに台座が設置されているのを見つけた。その上には板状の物体が斜めに立てかけられている。
『充電台に置かれてるタブレットみたいね』
『確かに。んで取ったら罠が発動するんだろ』
肩をすくめていると莉緒も隣でうんうんと首を縦に振っている。このダンジョンの罠の凶悪具合は筆舌に尽くしがたい。うんざりしながらもタブレットもどきを鑑定すると。
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種類 :道具
名前 :情報端末
説明 :ダンジョンの各種情報にアクセスできる端末
品質 :S
付与 :なし
製作者:-
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『マジでタブレットだった』
もどきじゃなかった。
『え?』
『ダンジョンの情報が見れるみたい』
『なにそれ、すごいんじゃない?』
『ぜひ持って帰りたいな』
どれだけの情報を見られるかわからないけど、凶悪な罠をかいくぐる価値はありそうだ。
『ちょうどいい時間だし、今日はこれ持って帰りましょうか』
『そうだな』
『じゃあ先に行くわね』
莉緒が台座のすぐそばに空間の穴を開けて中に入っていく。次元を超えると魔力を食うので、繋がっている先はダンジョン内の入り口近くだ。
台座の中を通って部屋の外まで仕掛けが繋がっているので、この部屋がすぐに罠であふれる心配はないはずだ。下り坂の底にある部屋なので、毒か何かが流れ込んでくる系の罠を予想している。
『よし』
気合を入れて台座のタブレットを手に取ると、即穴の中へと飛び込む。すぐに穴は閉じられるが、閉じきる前に遠くのほうでガコンと罠が発動する音が聞こえた気がした。




