第311話 達成報告
「はいもしもし」
昼過ぎまで魔の森で採集や狩りをしていると、イヴァンから連絡があった。
『あぁ、シュウか』
「どうしたんだ?」
『あー、それなんだが……、ちょっと魔物を狩りすぎてどうしたもんかと……』
何とも歯切れ悪い声がスマホの向こうから聞こえてくる。
『ギルドにたくさん持っていけばその分依頼達成数が稼げるんだろ?』
「たぶんそのはず」
冒険者なりたての頃を思い出す。集めた薬草をまとめて提出した時は、依頼達成数をそれなりに稼いでいた気がする。魔物もいっぱい納めれば同じなのではなかろうか。
「にしてもそんなに狩ったんだ?」
『ああ、どうも群れに遭遇したみたいでな』
「もう大丈夫なのか」
電話してくる余裕ができたからだろうけど念のため聞いてみるが、やはり予想通りで全滅させた後とのことだ。
『これ以上持てないんだけどなんかもったいなくてなぁ。それに早く俺もランクを上げて魔の森に行ってみたいし』
「わかった。んじゃそっちに行ってみる」
『助かる』
「何かあったの?」
電話が切れると莉緒が尋ねてくる。フォニアもなんだか眉を寄せて心配そうにしている。
「いや、魔物を狩りすぎたからなんとかならないかって」
「へ?」
「全部持って帰って依頼達成数を稼ぎたいらしい」
「あぁ、そういうことね」
よくわかっていないフォニアにも説明すると、イヴァン兄すごいと嬉しそうに目をキラキラさせている。何かあったら連絡するの『何か』は、悪い報告しかないと思っていたのかもしれない。
「それじゃ、今からイヴァンのところに行こうか」
「はーい!」
元気になったフォニアの返事を聞くと、次元魔法を発動させてイヴァンのもとへと繋ぐ。トンネルをくぐればそこはもうイヴァンの目の前だ。
「わざわざ来てもらって悪いな」
「気にしなくていいぞ」
どんな魔物が獲れたのかも気になるしな。美味い肉があればちゃんと持って帰らないとダメだろうし。
周囲を見回せばそこかしこに魔物が転がっている。鹿のような角の生えた六本足の猪みたいなやつだ。
「でも俺が回収してたら単独での依頼達成にならないんじゃ?」
「あぁ……、そうかもしれない……」
結局イヴァンが一人でギルドへと納入しなければ単独依頼とはみなされないだろう。運搬だけとはいえ手伝ってしまえば周囲からどう見られるかは明らかだ。
項垂れるイヴァンだったが、すぐ近くから両手をパンと合わせる音が聞こえてくる。
「じゃあ収納カバンでも探してみる?」
振り返れば莉緒が両手を合わせてそんな提案をしてきた。
「そんなアイテムもあったなぁ」
異空間ボックスを使える俺たちには必要のない鞄だったので、全く意識にもなかったけど今のイヴァンなら便利に使えるアイテムだ。
「いやいや、それってすんげえ高いやつだよな」
「値段なら気にしなくていいぞ」
なんかよくわからないくらいに資産はあるからな。
「そんなに言うほど高くないと思うし」
金銭感覚のマヒしてきている俺たちだから問題などあるわけもない。
「俺が気にするんだよ! そんな高いもの持ち歩きたくねぇぞ」
「じゃあちまちま依頼数を稼ぐしかないな」
「うぐっ」
うめき声が聞こえてくるが当然の帰結というものだ。大量に持って帰れないなら諦めるしかない。一人で一体ずつ納品するよりは俺が手伝ってまとめて納品したほうがランクアップも速そうだが、毎日イヴァンのもとに通って獲物回収作業はやりたくない。
「盗られたら取り返してあげるから大丈夫だって」
莉緒が安心させるように笑みを浮かべるが、確かに取り返せば問題ないな。
「そういう問題じゃないんだが……」
なおも文句を垂れるイヴァンを無視して収納カバンについて考えてみる。
要するに異空間ボックスが付与された鞄だろ? もしかすると作れたりしないかな。なんだかんだスマホも作れたし、どこでも○アを実現するよりは簡単そうな気がする。
とりあえず今は魔物の回収だ。一体だけ残して莉緒と手分けして魔物を回収すると、いったん街に戻ることにした。
「じゃあまたあとでな。収納カバンを手に入れるにせよ、いったん魔物はこっちで預かっとくよ」
「ああ、とりあえず助かった」
その場で解散すると、各々が街を出た門から帰還するのであった。
街の北門近くに転移すると街の中へと入る。まだ日は高いため、そこまで混んでおらずすんなりと入ることができた。そのまま大通りを進んでギルドへと入れば周囲がざわついていく。あれがSランクの、と慄くやつや、まだガキじゃねぇかと侮る奴らだ。
ギルド内もまだピーク前なのだろう。依頼報告をする人は多くなくそこまで混んでいる印象はない。買取カウンターへと向かえば、自然と人が避けてできた道を進んでいく。空いているカウンターの前に立つと、目の前にいた職員がごくりと唾を飲み込むのが見えた。
なんというか、普通に接してほしいなと思わないでもないが、Sランクの威光を利かせるのとトレードオフなんだろう。
「買取お願いします」
「は、はい!」
直立不動で答える職員の前に、常時依頼として出ていたものを一種類ずつ取り出していく。どこからともなく取り出される依頼品にざわめきが大きくなるが、取り出す量が増えていくにつれ静かになった。
薬草類の束に始まり果実や野菜類、そして小型の魔物へと推移していく。昆虫や動物、植物タイプと魔物の種類もたくさんいてさすが魔の森といった感じだ。
「これで全部かな」
「わかりました!」
カウンターの上に溢れんばかりに積み上げられた依頼の品が次々に処理されていく。特に査定額が下がるようなものもなく、すべて満額になるだろうとのことだった。




