第274話 丸投げ
「よし、お前ら、なんで捕まったのかギルドマスターに教えて差し上げろ」
自分であれこれ説明するのが面倒なので、もう全部任せてしまうことにする。さっそく命令するとガルガントの顔には疑問が浮かんだが、自分のやらかしたことを事細かに自白を始めた男の話を聞いているうちに表情が引きつっていた。
「それはもしかして、隷属の首輪なのでは……?」
「ええ、そうですよ。こういうとき便利でしょ」
俺の言葉にガルガントの眉がピクリと動く。表情も険しくなってる気がするけど、知らないうちに何かやっちゃってるんだろうか。
「隷属の首輪は奴隷ギルドで管理されているはずですが、どこで手に入れられました?」
「ん? どこでって、奴隷からいただいただけだが……」
奴隷ギルドなんてあるのか。クラスメイトからいただいたから、管理されていると言われてももちろん俺たちはギルドに関わってはいない。
「いえ、そんなはずはありません。……もしかしてオークションですか? Sランクともなればいろいろと違法なオークションもご存じでなのでしょうね」
違法オークションて……。隷属の首輪ってそんなレアアイテムだったのか。普通にそこらの魔道具屋で売ってる高額商品って思ってたんだけどな。
「そうでなければ奴隷を殺して奪わない限り手に入るはずがない」
それにしても言葉は丁寧だけど、だんだんと含まれてくる棘に俺としてもちょっとイラっとしてくるな。新人狩りについてはさっさと丸投げして、魔人族の魔法陣をなんとかしに行くか。
「そうですか。喋らせることは喋らしたんで、あとはお任せします。こっちにもやることがあるんで失礼しますよっと」
「は?」
「ちょっ、ガルガントさん!?」
俺の行動がよくわからなかったのか疑問の表情で短く声を上げると、慌てたようにドロシーがギルマスを咎める口調で割り込んできた。
ドロシーからはまだ帰らないで欲しそうな気配がしたが、そんなことはもう知らん。元々ドロシーに丸投げする予定だったし、何も問題はない。
「んじゃ帰るか」
俺の帰る宣言と共に、莉緒たちから了承の言葉が次々と返ってくる。
「待ちたまえ。まだ帰っていいと許可を出した覚えはないぞ」
んなもん知るかよ。なんでアンタの許可がいるんだよ。
「用事があるのですみませんね」
肩をすくめて立ち上がると、首輪を回収すべく男四人へと近づいてさっさと回収する。目を剥くガルガントをスルーして、次にロープで縛られた男たちの空間遮断結界を使った拘束と遮音結界を解除したところで、やかましいほどに騒ぎ出した。
さらにギルドまで地面を引きずられたせいで体中に付着した土ぼこりが、拘束を解かれて動き出したことによって部屋に薄く広がり始める。
「急に騒ぎ出すとは何だ!?」
『よし、今のうちに出るぞ』
今まで大人しくしていた理由のわかっていないガルガントが慌てているうちに、全員に合図を送って素早く部屋を出る。
「あ、おい! 待ちたまえ!」
待てと言われて待つ奴などいない。徐々に遠ざかる声に振り返って全員が付いてきていることを確認すると、大きくため息をつく。
妙に突っかかってくるギルドマスターだったけど、なんだったんだろうな。どっちにしても頼まれたことは達成したし、あとはそっちでなんとかしてくれ。
というわけで後始末を丸投げした俺たちは、一旦宿へと帰ることにした。
「それで、魔人族とやらのところに行くんだろ? もちろんあたしも連れて行ってくれるわよね」
宿で一息ついているところに、期待に目を輝かせたエルが自己主張をしてきた。どうやらフォニアに召喚陣について説明されてから気になっていたらしい。自分だけ仲間外れで行けなかったことが影響しているようだ。
まぁそれも、俺たちが無事に帰って来たとわかったからだろうけど。
「そりゃ別にかまわないが」
「ボクも行くよ!」
エルに許可を出すと、フォニアも両手を握り締めてふんすと鼻息を荒くしている。渋面を作っているイヴァンよりやる気は満々のようだ。
「じゃあさっそく行きましょうか」
「ああ。目標は魔人族の城の奥にある召喚陣の破壊だ。最低限これさえこなせればあとはどうでもいいかな」
はりきるフォニアにちらりと視線を向けて、今回の作戦の目標を再確認する。さすがにフォニアの目の前で魔人族を血祭りにあげるとかは教育上よくなさそうなので、こちらに向かってこない限りは控えるようにしようと思う。
「記憶してる座標は、王城を囲む壁の上か、王城の裏山の二つか」
「見つかりにくいのは裏山かしら」
「そうだな。そこに出ることにしようか」
「じゃあ穴を開くわよ」
宿の一室で全員を見回した莉緒は、意識を集中すると魔人族の国へとつながる穴を作り出していく。次元魔法を行使する莉緒を真剣な目で見つめるエルであったが、その眉間には徐々に皺が集まっていく。
「……すごいわね」
自然と言葉が漏れてきたときには次元の穴が完成していた。
「それじゃ先に行くぞ」
こうして魔人族の召喚陣を破壊すべく、俺たちは全員揃って次元の穴を進むのだった。




