第270話 捕縛された新人狩りたち
『うおぉい! シュウか! こっちに出やがったぞ!』
「は?」
開口一番にそんな言葉がスマホから聞こえてくるが、何が出たのかさっぱりわからない。
『だから、新人狩りが出たんだって!』
「……は?」
『だーかーらー!』
何度も同じことを繰り返してくるが、イヴァンの言いたいことはさすがに理解した。理解はしたんだが……、なんであっちに出るんだよ!?
認めた感じになるのであえて言葉にはしないけど、見た目俺たちよりベテランに見えるイヴァンのほうに出るとかなんなの!? 俺たちだって新人っぽく見えるようにがんばったのに!
「あー、うん。とりあえずわかったから。で、今どんな状況?」
言いたいことを飲み込んでイヴァンに問いかける。電話をかけてくるくらいの余裕があるなら、ちょっとくらいここで聞いても大丈夫だろう。
『エルが全員蹴散らしたけど、二人くらい逃げられたんだよ』
「そうなのか」
『それでも四人もいるし、どうしようかと思って』
「わかった。とりあえずそっちに行こう。エルからも話を聞きたいし。んじゃまたあとで」
通話を切ってポケットにスマホを仕舞うと、莉緒とフォニアから視線が向けられていた。
「イヴァン兄だいじょうぶだった?」
「ああ、元気そうだったぞ。なんでも新人狩りが出たらしいけど蹴散らしたらしい」
エルが。
「おお、イヴァン兄つよい!」
「それで合流するのよね?」
急にシャドウボクシングを始めたフォニアを微笑ましく見やり、莉緒が尋ねてきた。
「ああ」
「わかった。じゃあ行きましょ」
さっきまで電話をしていたので、階層の違うダンジョンだろうと場所ははっきりとわかる。俺たちは莉緒が開けた次元の穴をくぐり、イヴァンの近くに出た。
「うお、もう来たのか」
「へぇ、そんな感じで出てくるんだ」
驚くイヴァンに感心するエルの声が上がる。聞くところによればここはダンジョンの九階層らしい。気が付いたら到達階層抜かれてたんだけど、最初はフォニアの赴くままだったから仕方がない。
「んで、新人狩りというのは?」
あたりを見回すと四人の男が転がっているのが見える。そのうちの一人は腹から血を流しているようで、生命反応がかなり弱くなっている。
「尋問して証言は取れたから間違いないと思う」
エルが魅了スキル持ちだからというのはわかるが、なぜイヴァンが自信満々なのだろうか。
「と言っても全部聞き出せたわけでもないけどね」
肩をすくめてそう言葉にするエル。ということはまだ聞き出せていない情報もあるということか。
「なるほど。じゃあまだ死なれると困るな」
死にかけている男に視線をやると、俺たちの会話を聞いていた莉緒がさっと治癒魔法をかけて応急手当をしていた。
「がはっ、ごほっ」
治癒魔法を受けた男が咳き込んで、うっすらと目を開ける。
「そういえばこいつからは何も聞いてないな」
「あ、そうなんだ。じゃあさっそく」
男に近づくと問答無用で首輪を嵌める。
「俺たちの質問に答える以外に喋るな」
驚愕に目を見開く男だったが、口をパクパクさせるだけで何もしゃべることができない。同じことをやられたことのあるエルが、今回ばかりは気の毒そうな表情を浮かべるとそっと目を逸らした。
改めて尋問をした結果、イヴァンに絡んだこいつらが新人狩りで確定した。なんでも盗賊ギルドの元サブマスターが頭らしい。過激派だったサブマスターがやらかしてギルドを追い出された復讐みたいだった。なんかもうどうでもよくなったのでそれ以上詳しくは聞いていない。
アジトやメンバーまで聞き出したら、もうコソコソする必要もない。
「それじゃさっさと終わらせますか」
「対策打たれる前に叩かないとね」
「終わらせるって……、もうだいたい終わったじゃねぇか」
莉緒と二人でやる気になっていると、イヴァンが片眉を上げて尋ねてきた。元サブマスターが元凶ならきっちりと潰しておかないと、また復活されても困る。
……いや、しばらく大人しくなれば俺たちは困らないのか。直近の作業さえ邪魔されずに、楓さん捜索が進めばいいんだし。でもまぁ、中途半端にして後で文句言われても嫌なので最後までやっとくか。
「一気にケリつける気かい」
「まぁね。さすがにこいつらが速攻でいろいろと情報を吐いたとは思わないうちに」
「あぁ、そういう……」
エルとのやりとりで得心がいったのか、腕を組んでイヴァンが頷いている。逃げたっていう二人もいるみたいだし、アジトを変えられたりすれば面倒だ。
「というわけだ。お前ら、ちょっとアジトまで案内しろ」
声を掛けると男たちが怯えたようにビクリと体を震わせる。四人全員起きていて、今は大人しくしている。というか全員に首輪を嵌めて大人しくさせている。いちいち捕らえて連れていくより、自分で歩いてもらった方が楽でいい。
「……こりゃ相手さんも気の毒だねぇ」
エルが憐みの表情を向けているが、悪党の末路にそこまで心を砕いてやる必要性も感じない。
「フォニアとニルも、こいつらがちゃんと案内してくれるか見ていてくれよ」
「わかった!」
「わふぅ!」
任務を言い渡された幼女とペットが元気よく返事をするのを確認すると、俺たち二人を先頭にしてまずはダンジョンの外へと出た。衛兵のところでダンジョンを出る手続きをすると、今度は男たちを先頭にしてアジトへと続く道を歩き出した。




