第268話 召喚陣対策と尋問
並列思考と高速思考のスキルをフル稼働させて対策を考える。
俺にくっついてくる召喚陣をどうにか固定できないものか。召喚といいつつも次元属性の魔法だからして、次元魔法の楔みたいなものを撃ち込めばなんとかならないだろうか。
目の前に広がる召喚陣を食い入るようにして見つめて観察する。魔力の流れを読み取って高速で鑑定と解析を試みる。
「魔法陣の固定は……これか?」
それらしい術式を見つけたので、実行に移すべく周囲を見回す。一応莉緒とフォニアは魔法陣からは外れているが、念には念を入れた方がいいかもしれない。ふと気配が大量に感じる背後を振り返った俺は、そのまま魔物部屋へと突っ込んだ。
魔物臭がむわっと吹き付けてくるが、気にせずに地面を踏みしめると部屋の中央へと向かって低空を飛んだ。急に現れた俺と、発光する魔法陣に咄嗟に動き出すことができずにいるうちに、無事に部屋の中央に着地を決めた。魔物を一匹踏みつぶしたが気にしない。
襲い掛かられる前に次元魔法で構築したナイフを、魔法陣の特定の術式めがけて飛ばす。間にいた魔物を貫通し、しっかりと目的の場所に刺さったことを確認すると、自分だけテレポートで魔物部屋の外へと飛んだ。
「よし、成功だな」
召喚陣が自分にくっついてこないことを確認すると、魔物が部屋から出られないように結界を張っておく。そしてより興奮するように威力微弱の火魔法を全体にかけて、うまくいくかどうかわからないけど隷属耐性の付与を全体に試しておいた。付与が魔物にも効くかどうかはわからないけど、試すだけならタダだ。
振り返るとすでに五人組パーティは姿を現していたようで、こちらにゆっくりと近づいてくるところのようだ。
召喚に巻き込まれないように莉緒の傍まで近づいたところで、ふと背後の魔物部屋からの気配が一斉に消える。雑魚ばっかりの魔物だけど、それなりに数はいたしがんばってくれるだろうか。
「よかった。うまくいったみたいだね」
「ああ、ついでに魔物の群れを送り込んどいた」
「うふふ」
魔人族の召喚陣については一旦後回しだ。今は目の前のことに集中しよう。とはいえ直後にもう一度召喚された経験がある。もしきても即座に打ち消せるように注意だけはしておく。
「あー、なんだよおい、見覚えのない道かと思ったのに先客かよぉ……」
残念そうに聞こえるセリフだけどその表情はニヤついている。男だけのパーティのようで、全員の人相はあまりよろしくない。
「何言ってんだ、先客は俺たちだろ?」
「だははははは! 違ぇねぇ! 誰も知らなきゃわかんねぇしな!」
勝手に五人で盛り上がってるみたいだけど、こいつら俺たちがここに来なかったことにする気満々だな。可能性は薄そうだけど、一応すんなり帰してくれるか試してみるか。
「じゃあ俺たちはこれで帰りますね。ここを見つけたことは誰にも言いませんので」
もう用はないとばかりに三人で素通りしようとパーティにゆっくりと近づいていくも、通路を塞ぐように五人で広がって封鎖された。
「まあ待てよ」
ニヤニヤと笑みを張り付ける真ん中の男が一歩前へ踏み出してくる。
「ああ、そんなに急ぐこたぁねぇよな」
「それに、ちょっとここで見つけたものがあるんじゃねぇか?」
「そいつぁ置いていってもらわねぇとなぁ」
「そこのガキを置いてってもいいぜぇ。高く売れそうだしよぉ」
「ぎゃはははは!」
男たちの笑い声に大きなため息しか出てこない。盗賊ギルドに罪を擦り付けようとしている奴らにしてはちょっと頭が悪すぎる気がする。
「あなたたち、もしかして噂の新人狩りだったりするの?」
莉緒の言葉に顔を見合わせると、さらに下品な笑い声をあげる五人の男たち。
「だったらどうするんだぁ?」
もちろんまともな回答がくるはずもない。ニヤニヤした表情がだんだん鬱陶しくなってくる。
「もうお前ら黙ってろ」
なんかもう会話するだけで苛立ってきたので黙ってもらう。遮音結界を張ると、空間遮断結界を応用して五人を一気に拘束する。
「「「「「…………!!!」」」」」
いきなり動けなくなって口をパクパクさせる五人。何か喋ってるんだろうけど静かになったので問題ない。
「静かになったわね」
「うるさかった……」
耳をしょんぼりとさせて変な顔になっているフォニア。
ニルもようやく落ち着きを取り戻したようだ。
「じゃあ一人ずつ詳しく話を聞いていこうか」
「……素直にしゃべってくれるかしら?」
莉緒が疑わしそうに首を傾げるが、そこは心配無用だろう。
「もう面倒だから隷属の首輪つけてしゃべってもらおうぜ」
「ああ」
納得の表情を見せる莉緒に、さっそくとばかりに一人目の尋問に取り掛かった。
まずは一人ずつ部屋に引きずり込むと、さっそく首輪を嵌める。言葉が聞こえないと命令できないので、遮音結界を解除した瞬間に「喋るな」と命令する。
目を剥いて抵抗するが、空間遮断結界で全身を拘束されているため何もすることができない。
「こっちの質問にだけ答えろ。お前は最近話題になってる新人狩りの犯人か?」
「……ち、違う!」
どうやら違うらしい。さっそくの犯人捕獲とはならずにがっくりと肩を落とす。
「新人狩りに罪を擦り付けようとしただけか」
「そうだ」
思わず喋ってしまった口に手をやる男だが、そんなことをしても無駄だ。隷属の首輪はマジで優秀なのだ。
「他にもこんな手口で新人冒険者を殺したことがあるか?」
「……ある」
「へぇ……」
抵抗することもできずに口から出た答えに、メモを取っていた莉緒の目も鋭くなる。どうやら噂の新人狩りではなかったようだが、新人狩りをしたことはあるらしい。
こうして、新しく開通した通路を土魔法で塞ぎ誰も入れなくしたあと、一人ずつ順番に尋問が行われていった。




