第238話 歓迎の宴
二対の腕を生やした魔人族の執事に連れられて廊下を進む。鑑定してみるも第二王子よりはステータスが低かった。もうちょっと数を鑑定してみないと魔人族全体の強さはわからないな。
「こちらでございます」
扉を開けると右側二本の腕を折り曲げ、部屋の中へと促される。
そこは学校の体育館の半分ほどの広さのホールだった。宴の用意という言葉に嘘はなかったようで、各テーブルには料理がこれでもかと盛り付けられている。立食形式になっており、椅子とテーブルはホールの隅に寄せられているだけだ。
『第二王子や団長さんもいるな』
『……やっぱりあんまり強そうな人はいなさそうね?』
『はは、俺は誰にも勝てそうな気がしないけどな』
『みんなおっきいねぇ』
フォニアからすれば三倍近く身長がある。獣化しても身長は届かないだろうし、みんなおっきい人である。俺でも二倍くらいの身長差があるし、もう完全に子ども扱いされてもおかしくはない。
とりあえず一番強そうな団長を鑑定しておくか。
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名前 :アルダリオン・ガリムジャノフ
種族名:魔人族
職業 :大魔術士
状態 :通常
ステータス:HP 32654(32754)
MP 86431(121255)
筋力 24539
体力 19843
俊敏 9854
器用 64332(64432)
精神力 55765(78323)
魔力 63406(89020)
運 9
スキル:
杖術 指揮 統率 魔眼
大海魔法 火焔魔法 大地魔法 嵐魔法
聖光魔法 暗黒魔法 無魔法 治癒魔法
植物魔法
デュアルスペル トリプルスペル クアドロプルスペル
魔力遮断 魔力操作 並列思考 遠隔発動
気配察知 魔力感知
MP自動回復 詠唱短縮 消費魔力低減
HP強化 MP強化 器用強化 精神力強化
魔力強化 MP増幅 精神力増幅 魔力増幅
毒耐性 痛覚耐性 恐怖耐性 精神耐性
水耐性 火耐性 土耐性 風耐性
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結果はフォニア以外に送っておく。
さすが団長だけあってそこそこなステータスだ。にしても激しく運が低いな……。一桁なんて初めて見たけど。そもそも『運』というステータスが何にかかってくるものなのかよくわからん。
それと見たことのない魔法がいっぱいある……。いやいや、魔法以外にもいっぱいだ。スキル体系が異なってるとかなんとか神様が言ってたみたいだし、じっくり観察してみたい。植物魔法に精霊魔法とか、あっちのやつは四刀流かよ。そりゃ腕が四本あればそんなのもあるよな。魔眼とかもちょっと惹かれるなぁ。どんな効果だろ。
『うおっ、スキルコピーとかスキル強奪なんてものまであるのか』
『え?』
思わず念話で漏れた言葉に莉緒が反応する。
『スキルが盗られるの? ……使えなくなっちゃうのは困るわね』
『だなぁ……』
てっきり、練習の末身に付いたものが「スキル」として現れると思ってたんだが、そうじゃないんだろうか?
スキル着脱とか無効とかあるし、装備みたいに付け外しできるものなのか。いやそれこそが『スキル体系の違い』なのかもしれない。だからといって奪われないとも限らないだろうし、気を付けないとな。
「待たせて済まないね。堅苦しい挨拶は抜きにしてさっそく始めよう。楽にして好きなものから食べていってくれたまえ」
前に出てきた団長さんがそう声を掛けてきた。第二王子の他には数名いるだけだが、微動だにせず誰も料理に手を伸ばそうとはしない。
とりあえず料理が盛られたテーブルへと近づくが……、お前らは俺たちに食わせる気あんのかね? 俺の肩の高さくらいにあるテーブルに盛り付けられた料理だ。手前の料理にしか手が届かない。自由に食えるのはイヴァンだけではなかろうか。言うまでもなくフォニアの目線からだと、テーブルの料理は一切視界に入らない。
「ああ、これは済まない。踏み台を用意させよう」
気づいた団長が気を利かせて部下に用意をさせる。
「どうも」
礼を言いつつも台が不要なイヴァンが皿を手に取ると、料理の物色を始める。
焼き物からスープやサラダなど、ある程度の種類ごとにテーブルに分けられている。揚げ物はないようで、パンもあるが硬そうなやつしかなさそうだ。紫や青といった食欲の湧かない色の料理もある。
そして極めつけは。
『あっちの縁が紫になってる葉っぱは食うなよ』
『へっ?』
『あ、ホントだ。魔人族は平気だけど、私たち人間には毒だって』
莉緒も鑑定したらしい。俺と同じく見えるものが増えたのかな。
『他にもありそうだから注意だな』
思ったよりも食えないものがちらほらと混じっていた。この世界に俺たちみたいな人間がいなけりゃ知りえないだろうが。それを思えば、俺たちが初めて異世界に召喚された時は運がよかった……、いやいや、そういえば変な実食って死にかけたな……。
「美味いな」
さっそく厚切りステーキに手を付けたイヴァンが一言呟く。焼き物はそうはずれはないと思うんだよな。
しばらくすると踏み台が持ち込まれ、俺たちも色んな料理に手が届くようになる。フォニアにもいくつか料理を取ると、フォークを使って食べだした。ニルにもステーキを取って皿ごと床に置いてやると、勢いよく食べだした。
しかしこれは……。
『あんまり美味しくないね』
『そうだな』
『だな。美味かったのは肉だけだった』
お世辞にも食のレベルは低いとしか言いようがなかった。これはますますこの世界に長居する理由がない。




