第235話 召喚された理由
『ちょ、ちょっと柊!? 何があったの!?』
興奮を抑えられずにガッツポーズをしてると、莉緒から肩を掴まれて激しく揺さぶられた。
『あぁ、ごめんごめん。ちょっと鑑定でスキルが見えるようになったからつい……』
『ええっ!?』
さすがに莉緒も驚いたようで、リアクションを隠しきれていない。
「ところで、後ろの方々は大丈夫かね?」
「へっ?」
どうやら目立ってしまったようで、団長から注目されてしまった。そして第二王子とやらの機嫌が悪くなってる気がする。
真面目な話の最中にすんませんね。でも実際にスキルが見えるようになったことに比べれば、あんたらの事情なんて心底どうでもいいんで。
「ああ、こいつらのことは気にしないでくれ」
『何やってんだよ……』
イヴァンの心の声が念話として聞こえてくる。ホントすまん。ちょっと自分たちのスキルが気になるけど、今はこの状況をなんとかするのが先か。
「俺の名前はイヴァンだ。で、こいつらが――」
「柊です」
「莉緒です」
「ボクはフォニアだよ。この子はニル」
自己紹介をすると、それぞれが驚いた表情になってニルに注目が集まる。なんだろう、四本足の獣は珍しいのかな。
「これはご丁寧に。立ち話も何ですし、状況を説明いたしますので部屋へご案内いたしましょう」
「あ、じゃあお願いします」
言葉と共にイヴァンが振り返ってきたので頷いておいた。
「うむ。では移動するのでついてきてくだされ」
団長も鷹揚に頷くと、踵を返してホールを先に出て行く。魔法陣を囲んでいた人たちも動き出すと俺たちの周囲を固めだした。
「ではご案内いたします」
魔法陣を囲んでいたうちの一人が一歩前に出ると、俺たちを案内してくれる。どう考えても逃がさないための陣形にしか見えないけど気にしないでおこう。
前後を十人ずつくらいの魔人族に固められてホールから廊下へと出る。飾りっ気のない石造りの廊下の途中にはちらほらと扉が見える。さすが三メートル近くある種族の建物だけあって、扉や廊下などがいちいちデカい。
しばらくして通された部屋は、これまた巨大な椅子とテーブルが設置された部屋だった。第二王子たちはすでに席に着いているようで待ち構えていた。
「どうぞおかけください」
と言われても普通に座れるのはイヴァンくらいだろうか。それでもギリギリっぽいけど。魔人族の半分くらいの身長しかない俺と莉緒の場合は、椅子の前に立って座面に手をついて体を持ち上げないと座れない。
椅子へと座った俺に、フォニアがニルを預けてくる。そのまま莉緒の前まで行くとバンザイをしている。抱き上げられる気満々である。
「はいどうぞ」
苦笑と共にフォニアを抱き上げた莉緒が椅子に座らせる。大きい椅子だからか二人並んで座れるのだ。
テーブルの向かいには第二王子と団長が腰かけており、その後ろには少し豪華な衣装の人物と、他四名が直立不動で控えている。
ほどなくしてメイドらしき人たちが三人ほどやってきて、テキパキとお茶の用意を進めていく。赤を基調としたロングスカートで和風メイド調とでも言えばいいだろうか。しかし女性も厳つい顔をしていて四本腕である。三メートルの身長も相まって、迫力は満点だった。
「遠慮なくどうぞ」
鑑定したところ特に毒などは入っていない。多少の鎮静効果があるお茶っぽいが、召喚されたばかりの俺たちを落ち着けたいんだろう。
でも座ったままだとテーブルまで手が届かないんだよなぁ。
「さて、さっそくだが我々のことを話させてもらいましょう」
勧めておきながら団長自身もお茶には手を付けずに話を進めるようだ。
「ここは大陸の中央部に広がるシュタインフルス魔人国という国で――」
要約するとこうだ。
近くのダンジョンの浅い層が地底王国とやらと繋がってしまったらしく、その地底人から侵略を受けているとのこと。地底人そのものはそれほど強くないらしいが、装備が厄介らしい。なんでも見えないほどの速度の魔法を放つ道具で、気が付けば鎧と体に穴が空いてるとか。精鋭部隊でかかればなんとかなるが、一般兵では歯が立たないらしい。
「地底人ですか……」
「ああ。出てくるのがそのダンジョン一か所だけならまだよかったんだが、他のダンジョンからも湧いてくるようになってな……」
とうとう軍の精鋭部隊だけでは手に負えなくなったと。
そこで召喚した俺たちの出番というわけか?
直接言われたわけじゃないが、そう言われているようにしか聞こえない。
まぁ当たり前ではあるが、俺たちにはこれっぽっちも関係ない話だな。誘拐してきた相手を助ける義理なんぞあるわけがない。
「ははぁ、それは大変ですね。俺たちでよければ力になりますよ」
と思ってたらイヴァンがそんなことを言い出した。莉緒が勢いよくイヴァンを振り返るけど、隷属になってたからなぁ。こういう流れで持っていく感じなのか。
「おお、それは助かります。また詳細は後でお知らせするとして、ささやかではありますがただいま歓迎の宴を準備させているところです。部屋を用意させていますので、時間までおくつろぎください。我々の耳のないところでの相談事もあるでしょうし……」
「それはありがたいですね。まだ俺たち自身戸惑ってますから」
こうして俺たちは、客室となる別室へと案内されることとなった。




