閑話 エルヴィリノス
「むむぅ……!」
「そうそう、もうちょっと左を強く」
両手を突き出して唸るフォニアに、リオが手助けをしながら魔法の訓練をしていた。フォニアの右手からは炎が出ているが、左手の先には何も出ていない。両手で同じ火魔法を使おうと試行錯誤中なのだ。
シュウやリオは同じ魔法を複数周囲に浮かべて待機させることができる。あたしもできないことはないけど、あの二人はその数が半端ない。フォニアがそれを見て自分もやってみたいと言い出したらしい。
「よっ、ほっ、はっ!」
「あっ、ちょっ、ま、待った!」
反対側ではシュウがイヴァンと模擬戦を繰り広げている。篭手と刀を使うのは知ってたけど、槍もイヴァンより扱えている。どうなってるんだろうね、この二人は。
そういうあたしと言えば、火魔法と風魔法を同時に使えるように練習中だ。風呂上がりの髪を乾かすのに使っていたのを見て驚いていると、あたしも使えるようにと命令が下った。まぁ同時に発動させることは最初からできているんだけど……。
「……」
轟々と唸りを上げる炎の竜巻が眼前で荒れ狂っている。これでは髪が燃え尽きてしまう。今まで複合属性魔法なんて攻撃にしか使ったことがない。
「威力を極限まで落とすっていうのは、思ったよりも難しいわね……」
魔法を使うことに関してはそれなりに自負はあったが、ここでもまた敗北を喫することになった。唯一勝てるのが侍女としての能力ではあるが、料理では勝てなかった。あの二人は食に対するこだわりが強い。
いやはや、ここまで自分の存在意義を脅かす人間が存在するとは思わなかった。これから先、他に何を見せてくれるのか楽しみじゃないか。人間長生きはしてみるもんだね。




