第200話 武器の形成方法
なんだかんだと全員で昼食を摂った午後、改めて全員で工房の作業場へと集まって、俺たちの武器作成方法を教えることとなった。
親方は忙しいんじゃないかと思ったけど、こういうときのためにスケジュールはかなり余裕を持たせているから大丈夫とのことだった。
「まずは俺たちの武器の作成方法をざっくりと説明します」
テーブルを囲む鍛冶職人の二人が神妙な顔で頷いている。
ってかイヴァンとフォニアもなんで同じ席に座ってんの。別に話を聞いててもいいけど、武器作成とか興味あるのか……。
「簡単に言うと、私たちはこの金属を、土魔法を使って形成しています」
親方に用意してもらった鉄鉱石をテーブルから手に取り、魔力を流してまずは鉄を抽出する莉緒。
「ええ……、そんな簡単に……」
「……!」
絶句する二人を差し置いて、今度は抽出した鉄を形成して細長い棒状に変化させる。さすがに鉄鉱石一つからだと、小さめのナイフも作れない。
「そこそこ魔力を使うので、お二人では小ぶりのナイフも作れないと思います」
「魔法の適性もありますしね」
改めて二人を鑑定してみるが、MPと魔力ともに三桁前半だ。パウラさんのMPに至っては二桁しかない。
だけど武器を作る上でまったく使えないことはないと思うんだよな。
「なので、この製法のみで武器を作るよりは、普段の鍛冶作業の中に取り入れる方法がいいのではと思ってます」
「…………?」
視線で問いかけてくる親方だが、さすがになんとなく言いたいことはわかる。
「鍛冶作業の様子は直接見たことはありませんが、金属を炉にくべて溶かして、叩いて鍛えるんですよね」
「はい……。溶かした金属を型に流し込む鋳造もありますが、刀は叩いて鍛える鍛造ですね」
なんとなくファンタジー物にあるにわか知識だったけど、間違ってはいなかったようだ。
「なるほど、そのときに魔力を込めて叩いてみるとか、そういうことね」
莉緒の言葉に頷きを返す。腕のいい鍛冶職人という話だし、もしかすると無意識にそういうことをすでにやっている可能性だってある。コツをつかめれば、なんかこう、一気に進化しないだろうか。
「そんな簡単にうまくいくのかな?」
懐疑的な表情のイヴァンだが、それはまぁやってみるしかないんじゃないかと思う。それはルイゲンツさんに期待だ。
「むむむぅ」
莉緒に鉄鉱石を渡されたフォニアが一生懸命集中している。とても可愛いです。
「…………!」
「えっ? なんとなくわかるんですか親方!?」
「…………」
「え、あ、わ、わかりました!」
何事かとやりとりをすると、ガタンと音を立てて立ち上がると親方が部屋を出て行く。まったくもって何が起こっているかわからない。とても不便だ。しかしあんなざっくり説明でわかるとは、やっぱり無意識に使ってたのかな。
「ごめんなさい、すぐ戻るので待っていてください」
パウラさんも慌てて親方の後を追って出て行く。……と、しばらくして帰ってきた。その手には二本の短刀が握られている。
「これ、親方から今できるとりあえずのお礼だそうで。古い作品なので差し上げるわけではないですが、存分に触って確認してもらってかまわないそうです」
「とりあえずって……?」
「えっと、本命としての対価は、教えてもらった技術を使って打った刀、だそうで」
おぉ、マジか。それはそれで楽しみではあるな。鍛冶職人が新技術を取り入れて本気で打った刀となればすごそうだ。
「ほ、ホントに?」
莉緒が目を輝かせている。しかし今はパウラさんの手の中にある武器も気になっているようだ。よく見れば反りが入っているから、これも刀だろうか。短いから脇差タイプのやつかな。しかも――
「アダマンタイト製だ」
テーブルに置かれた脇差をそれぞれ手に取ると、じっくりと観察する。
=====
種類 :武器(刀)
名前 :なし
説明 :アダマンタイトを鍛えて造られた刀。
その切れ味は他の武器の追随を許さず、
刃のついた武器の中で上位に位置する。
品質 :A
付与 :なし
製作者:ルイゲンツ
=====
うおぉ、品質Aだ。すげぇ。付与はついてないけど、アダマンタイト製というだけですごく攻撃力が高そうに感じる。
金属の特性からか、魔力はあんまり通らないけど物理には強そうだ。
でも土属性の魔力なら比較的通るようになる。じっくりと成分分析をおこなうべく、鞘から刀身を引き抜いた。
「あの、すみません、シュウさん」
しばらくアダマンタイト製の刀を分析していたところ、パウラさんの声が掛かった。
「親方が呼んでいまして、ちょっと奥まで来てもらってもいいですか?」
「あ、はい。かまいませんけど」
何かあったんだろうか? 親方と意思疎通できるとは思えないけど、とりあえずパウラさんがいれば大丈夫か?
「ありがとうございます。こちらです」
なんとなく不安に駆られながらも後をついていく。いくつか廊下を進んでいくとだんだんと室温が上がってきた。炉が近いみたいだけど、こんなところまで入っていって大丈夫なんだろうか。
目的の部屋へと連れられると、炉の手前に親方が座っていた。
「シュウさんを連れてきました」
パウラさんの声に片手を上げると、親方が顔だけを横に向けて何やらしゃべっている。
「ちょっと、親方! ちゃんとこっち向いてくれないとわからないですよ」
さすがに今のはパウラさんでもわからなかったらしい。もう一度聞きなおしてくれた。
「えーっと、普段どうやって魔力を通してるのかコツを聞きたいそうで……」
「ええ……」
いきなり本番でコツを聞いてきますかね。雰囲気からして、いつもやっていたことの内容が具体的にわかったって感じがしたんだけど。ってかやっぱり直接やりとりできないの不便だ。
しゃべれないんだったらあれはどうだ。
『親方、聞こえますか』
『え、あ、お? なんじゃこれ?』
念話をつないでみると、親方との会話があっさりとできるようになった。
なんかこれで問題のほとんどが片付いた気がするぞ。




