1.よろづ先生との出会い
私が書いている『魔術師の杖』シリーズ、その表紙・挿絵・キャラクターデザインを手掛ける、イラストレーターのよろづ先生。
どうやって出会ったのかというと、ふつうに出版社に探してもらった。その際、アテもなく探すのは大変だろうと5つ条件を出した。
・瞳が綺麗に描ける。
・空間認識能力がある。
・ドラゴンが描ける。
・イケメンはもちろんのこと、オジサンもしっかり描ける。
・魔導列車やライガなどの魔道具類が描ける。
ヒロインであるネリアの瞳や、魔術師レオポルドの黄昏色をした瞳など、瞳が重要だと考えていた。それに画面の中に吹く風を感じさせるような、世界の広がりを描ける人がいい。
ヒーローのレオポルドは長髪で、綺麗な顔をしているから、少女漫画っぽい絵柄だと男か女かわからなくなってしまう。しっかりした大人の男性の体格を描ける人が良かった。口の横にほうれい線描いただけで、「オジサンだよ」というのも困る。
ドラゴンやライガ、魔導列車は物語の中でも重要だし……長編のファンタジーである『魔術師の杖』の書籍化には、どれも必要なことだった。
単純に、自分より絵がヘタな人は嫌だなぁ……ぐらいの感覚だったのだけど。
実はこの条件を満たすイラストレーターさんを探すのは、とても大変だったらしい。私も後から家族に言われた。
「条件が厳しすぎるよ」
しばらくして出版社から連絡が入る。
「イラストレーターさん探しが難航しております。このうちで、どうしても譲れない条件はどれでしょうか」
「じゃあ『瞳が綺麗に描ける』でお願いします」
書籍化するだけでもラッキーなのだ。瞳以外はあきらめた。けれどそのあとすぐに「イラストレーターさんが見つかった」と知らせがくる。
見せてもらったのは1次創作と2次創作の作品集。
「絵の上手い人だなぁ……」というのが最初の印象。
大きなトレーラーの絵や風景画、アメコミ風の絵からアニメキャラのような絵まで、タッチはさまざまでどれも上手だった。
(何でも描けるから『よろづ』なのかしら)
そんな風に思った。男性キャラがカッコよくて、その存在感が気に入り、OKを出した。
当のよろづ先生は最初ラノベの仕事に乗り気ではなく、「話が面白かったら引き受けます」と答えたらしい。
ゲーム業界でキャリアを積んだよろづ先生には、ラノベの表紙などやっすい仕事だったのでは……と思われる。
ところが断るつもりだったよろづ先生は、なろう版『魔術師の杖』を読み始めたところ、ページをめくる手が止まらず、結局2巻分の終わりまで徹夜して読み切ったという。
「ぜひやらせて下さい!」
私は知らないうちに賭けに勝っていた。
それから4年間で私は10冊、字数にして約170万字、原稿用紙だと5千枚以上書いたけれど、よろづ先生も何十枚とイラストを描いて下さった。









