第9話 もう一人のヒロイン! 格闘少女ナタリー登場!
エリアルに、このままではラスボス、ゲイルによって殺されてしまう事を説明したわたし。
意気投合して、生き残る事と、この星を救う事を決意した。
身だしなみを整えて部屋を出ると、壁にもたれかかって、腕を組んでいるウィンドが。
(ああ~。ウィンド様、やっぱかっこいい~!)
紺色のバリッと尖った髪、黒いボディスーツの細マッチョ。
背中には日本刀っぽい長い刀。
ゲーム、ファンタジックコスモスの主人公そのままのウィンドがそこにいた。
(ぴより、話をする時は様を付けないでね)
エリアルの指摘が入る。
ちなみに今エリアルの身体を動かしているのはあたし。
朝起きてからエリアルといろいろ試してみた。
結果としてはやっぱり、二人とも入れ代わりたいと思っていると、主導権が入れ代わるみたい。
メインで行動するのはあたしになった。
「この後の展開を知ってるあんたが動きなさい」と言うのがエリアルの考え。
演説とか、エリアルがやった方がよさそうな時は、入れ替わる予定。
「それじゃあ行くか」
今度こそ本当の仲間と連絡がついた。
この展開もゲームの物語と同じだ。
そして…………、
「よう、ウィンド! こっちだ」
ウィンドが依頼を受ける、行きつけの酒場の前で声をかけられた。
声のする方を見ると、褐色の巨漢のおじさんが。
髪は黒のツーブロックのオールバック。
瞳の色も黒。
プロテクターのついた迷彩柄のジャケットに、カーキ色のズボン。
そして、肩に担いだ筒はバズーカだ。
このおじさんがが誰なのか、あたしは知っている。
反ホープインダストリー運動のリーダー。名前はバーンズ。
バズーカが武器だが、それで殴ったりもする、見た目通りのパワーキャラだ。
日本刀で戦ったり、バズーカが出てきたりと、謎の世界観だが、ゲームの内容には忠実。
元は、ホープインダストリーの社員だったが、娘が喘息を患った事をきっかけに、行き過ぎた工業化に疑問を持った。
時を同じくした始まりの民の神子、エリアルの演説活動をの話を聞き、接触してきた。
エリアルがホープインダストリーのお膝元である、エルドーラで演説できるのも、土地勘のあるバーンズのおかげだ。
「ご無事でしたか、神子様」
エリアルとはぐれてしまった事にバーンズは責任を感じている。
無事に再会できてほっとしているようだ。
「ええ。ウィンドが守ってくれました」
「そうか、よくやってくれたな」
白い歯を見せ、ウィンド様の肩を叩くバーンズ。
「別に。料金は上乗せだからな」
憮然とした表情で答えるウィンド。
この時点ではウィンドは、金で雇われた用心棒。
彼はエリアルやバーンズの活動には関心を持っていない。
「おーおー、つれねえなあ」
ウィンドの肩をがっしりと抱くバーンズ。
気さくで頼れるおじさんキャラだ。
と、まあここまではいいんだけどね。
しかし、ここで合流するのはバーンズだけではない。
「もう、ウィンド! どこ行ってたの?
心配したんだよ」
現れたのは、ピンクのセミロングの髪に、ピンクの瞳の小柄な女の子。
ピンクの髪なんて奇抜だけど、ゲームの通りだ。
幼さの残るあどけない表情が愛らしいが、エリアルやウィンドと同じ17歳。
黄色いタンクトップの下に白いTシャツ。
ピンクのキュロットスカートは動きやすそうで、活動的。
そして、ボンキュッボンのナイスバディ。
あたしは彼女をよく知っている。
ウィンドの幼なじみ、格闘少女ナタリーだ。
ナタリーは、言わば正ヒロイン。
大人気キャラで、ファンタジックコスモスと同じメーカーの格闘アクションゲーム、「ナンバー1ファイト」にもウィンドと共に参戦している。
そう言えば胸元にひよこのキャラクターのバッジが。
確か「ナンバー1ファイト」のおまけの宝探しモードで手に入る「ひよこバッジ」だ。
ファンタジックコスモスのナタリーは付けていないアイテム。
ゲスト出演したゲームのアイテムまで出て来るなんて、この世界はよく分からないなあ。
ナタリーはゲーム全体を通して、ウィンドにぞっこんだ。
田舎を出て、この街にやって来たのも、修行の旅に出たウィンドを探しての事だ。
バーンズの娘、ヴィエラに懐かれていて、そのまま、バーンズの運動に協力している。
エリアルの死後、ナタリーとウィンドは急接近していく。
二人の恋愛要素も、ファンタジックコスモスの醍醐味の一つ。
しかし、エリアルとウィンドのラブストーリーだと思っていて、エリアルに自分の名前を付けたわたしにとって、このウィンド×ナタリー展開はトラウマだ。
ともあれ、戦力は充実して、無事暗殺の手から逃れられるはず。
「エリアル!
無事だったのね」
ナタリーがあたしに接近して来た。
吸い込まれそうな、ピンクの瞳に釘付けになってしまう。
リアル正ヒロインは、やはりオーラが凄い。
エリアルには近づきがたい上品さがあるが、愛らしいナタリーにはぐいぐい人を惹き付ける引力のようなものがある。
「よかったよー! 心配したー!」
わたしの手を握り、ぴょんぴょん飛び跳ねるナタリー。
陰キャオタクには正ヒロインはまぶし過ぎる。
ドキドキしてしまうあたし。
「ホープインダストリーの連中に騙されたって聞いてるけど大丈夫だった?」
「うん、ウィンドが助けてくれて、彼の家に泊めてもらったよ……う?!」
ナタリーの手を握る力が強くなった。
ビリビリするくらい手を強く握られている!
顔はさっきと変わらない満面の笑顔。
「ウィンドは渡さないからね」と言う確固たる意志が伝わって来る。
ウィンド視点のゲームの中では分からない戦いが始まっていた。
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